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- 長谷川町子さん『サザエさん』から考える家族の絆
「ハルメク」でエッセイ講座などを担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、漫画家の長谷川町子さんです。長谷川さんの代表作『サザエさん』から感じる“変わらないけれど、うつろってゆく美しさ”とは……。
好きな先輩「長谷川町子(はせがわ・まちこ)」さん
1920-1992年 漫画家
父が亡くなった翌年の34年、福岡から母と3人姉妹で上京。田河水泡に弟子入りし、翌年15歳でデビュー。日本初のプロ女性漫画家としての半生は、NHK朝の連続ドラマ「マー姉ちゃん」のモデルとなった。
25年以上続いた新聞の4コマ漫画「サザエさん」
ことしの夏、わたしは元気でした。それはたぶん、なつかしい友だちとともに過ごしていたからです。友だちの名は、皆さんご存知のサザエさん。フグ田サザエさんです。
漫画家・長谷川町子のことを調べるため、評伝を読んだり、資料をもとめて図書館に通ったりしていたわたしは、それをよしました。
書架の『サザエさん』の文庫45巻(朝日新聞出版刊)を1巻ずつとり出して、読むことにしたのです。
1946年、九州の「夕刊フクニチ」にはじまり、49年、朝日新聞に引っ越して74年まで連載された4コマ漫画「サザエさん」。記憶に刷りこまれたものばかりですが、じつに新鮮な読書となりました。
たしかになつかしくもあり、かつてと同じしみじみとした思いも湧きましたが、ときに胸がちくりと痛み、そうしていつしか、なくした何かをとり戻したいという焦りを感じるようになっていたのです。
新聞連載のすごいところは、毎日午後1時に新聞社から原稿とりがやってくるという日常的な事態です。「(漫画の材料は)時間に迫られて苦しまぎれに出る、という感じでございます」というはなしを聞いたことがありますが、そのおかげでサザエさんは、いまでも親しまれています。
一家はつよい絆から生まれた不変の家族の物語
ところで「サザエさん」と聞いて、皆さんは4コマ漫画とアニメーションと、どちらを思い浮かべますか?
アニメの「サザエさん」と答えたあなたには、4コマ漫画のサザエさんにもぜひ会っていただきたいなあ、と思います。
もちろんアニメの「サザエさん」も原作を大切にしています。昔ながらの家庭生活を軸に描かれる、携帯電話もコンピュータも、ゲーム機も出てこず、それでいて魅力的なアニメーションの世界観の果たす役割もまた、偉大と云(い)うほかありません。
長谷川町子は、母、姉と妹という女系一家のなかで暮らし、仕事をつづけました。作品の誕生と運命を見守りつつ、一家はつよい絆で結ばれていました。そんななかにもいろんなことが起こり、だからこそ日常の機微が描かれたのだろうと想像しています。
作品のなかで年の変わらぬ「サザエさん」(24歳だそうです)ですが、うつろってゆく季節、時代、人生の一瞬一瞬の輝きをとらえ、場面ごとに満たされている。会うたび、そこに打たれます。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2016年11月号を再編集し、掲載しています。
>>「長谷川町子」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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