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- 100年後まで…レイチェル・カーソンの勇気ある警告
「ハルメク」でエッセイ講座などを担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、生物学者で作家のレイチェル・カーソンさん。地球環境についての問題意識の扉を開けたカーソンさんから、引き継ぎたい想いとは……。
好きな先輩「レイチェル・カーソン」さん
1907-1964年 生物学者・作家
米国ペンシルベニア州に生まれる。米内務省魚類野生生物局の公務員として海洋生物学を研究。農薬などに使用される化学物質の危険性を指摘した『沈黙の春』は、世界的な環境保護運動の始まりとなった。
大切にしている「センス・オブ・ワンダー」という言葉
ときどき声に出して呟く、大事なことばがあります。「センス・オブ・ワンダー」(sense of wonder/不思議な事ごとに目を見張る感性)。このことばをわたしにおしえたのがレイチェル・カーソンでした。
世界じゅうの子どもたちが、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー」を持ちつづけることができますように。カーソンはそう希(ねが)ったのでした。それは、自然界、この世、ひとの存在を思うとき、礎(いしずえ)となる精神(こころ)です。
さて、近年、環境問題への真剣なとり組みがひろがってきています。そこに置かれているのは、人間と、人間以外の生物との関係(つまり全体としての自然)であり、未来の地球環境であります。こうした環境保護運動の先駆けとなったのが、アメリカの生物学者、作家でもあるレイチェル・カーソン。
全世界に警鐘を鳴らすこととなった著書『沈黙の春』(Silent Spring)を読んだことのあるひとなら、いえ、読もうとしたことがあるひとなら誰でも、その行動力とつよい信念に驚かずにはいられない、レイチェル・カーソンとはそんな女性です。
100年先のこの地球に残したいものとは?
わたしたちの前に、環境問題の扉を開いてくれたカーソンでしたが、研究や調査に没頭し、活動に集中する人生を送ったかというと、そうではありませんでした。
まず、早くから家族の大黒柱として働き、生活苦と闘うことになります。ついで科学界における女性差別に直面し、戦争が人生に暗い影を投げかけました。そうしてカーソンの警告は、当時、経済を優先的に考え、効率を追いもとめる人びとからすさまじい攻撃を受けるのです。
そんなさなかガンを得て、闘病しながら活動をつづけますが、『沈黙の春』出版からわずか2年後、56歳でこの世を去りました。
運命とは手きびしいものですね。カーソンはもう少し運命に甘やかされてもよかったのに……。せめて生活苦だけでも免除してあげてほしかった(ときどきカーソンは、友人に貧乏おばけのことをこぼしました)。
そんなことを考える一方で、こうも思うのです。勇気ある警告も、尊い活動も、ひと一人の人生では足りないのだ、と。受け継ぎ、つづけてゆかなければ意味をなさないのではないでしょうか。
100年先のこの地球にどうしても残したいものは、空気と水と土と、それから……。
随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。
※この記事は雑誌「ハルメク」2016年10月号を再編集し、掲載しています。
>>「レイチェル・カーソン」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから
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