100年後まで…レイチェル・カーソンの勇気ある警告
イラスト=サイトウマサミツ

公開日:2023年03月17日

随筆家・山本ふみこの「だから、好きな先輩」06

100年後まで…レイチェル・カーソンの勇気ある警告

100年後まで…レイチェル・カーソンの勇気ある警告

「ハルメク」でエッセイ講座などを担当する随筆家・山本ふみこさんが、心に残った先輩女性を紹介する連載企画。今回は、生物学者で作家のレイチェル・カーソンさん。地球環境についての問題意識の扉を開けたカーソンさんから、引き継ぎたい想いとは……。

好きな先輩「レイチェル・カーソン」さん

1907-1964年 生物学者・作家
米国ペンシルベニア州に生まれる。米内務省魚類野生生物局の公務員として海洋生物学を研究。農薬などに使用される化学物質の危険性を指摘した『沈黙の春』は、世界的な環境保護運動の始まりとなった。

大切にしている「センス・オブ・ワンダー」という言葉

大切にしている「センス・オブ・ワンダー」という言葉

ときどき声に出して呟く、大事なことばがあります。「センス・オブ・ワンダー」(sense of wonder/不思議な事ごとに目を見張る感性)。このことばをわたしにおしえたのがレイチェル・カーソンでした。

世界じゅうの子どもたちが、生涯消えることのない「センス・オブ・ワンダー」を持ちつづけることができますように。カーソンはそう希(ねが)ったのでした。それは、自然界、この世、ひとの存在を思うとき、礎(いしずえ)となる精神(こころ)です。

さて、近年、環境問題への真剣なとり組みがひろがってきています。そこに置かれているのは、人間と、人間以外の生物との関係(つまり全体としての自然)であり、未来の地球環境であります。こうした環境保護運動の先駆けとなったのが、アメリカの生物学者、作家でもあるレイチェル・カーソン。

全世界に警鐘を鳴らすこととなった著書『沈黙の春』(Silent Spring)を読んだことのあるひとなら、いえ、読もうとしたことがあるひとなら誰でも、その行動力とつよい信念に驚かずにはいられない、レイチェル・カーソンとはそんな女性です。

100年先のこの地球に残したいものとは?

100年先のこの地球に残したいものとは?

わたしたちの前に、環境問題の扉を開いてくれたカーソンでしたが、研究や調査に没頭し、活動に集中する人生を送ったかというと、そうではありませんでした。

まず、早くから家族の大黒柱として働き、生活苦と闘うことになります。ついで科学界における女性差別に直面し、戦争が人生に暗い影を投げかけました。そうしてカーソンの警告は、当時、経済を優先的に考え、効率を追いもとめる人びとからすさまじい攻撃を受けるのです。

そんなさなかガンを得て、闘病しながら活動をつづけますが、『沈黙の春』出版からわずか2年後、56歳でこの世を去りました。

運命とは手きびしいものですね。カーソンはもう少し運命に甘やかされてもよかったのに……。せめて生活苦だけでも免除してあげてほしかった(ときどきカーソンは、友人に貧乏おばけのことをこぼしました)。

そんなことを考える一方で、こうも思うのです。勇気ある警告も、尊い活動も、ひと一人の人生では足りないのだ、と。受け継ぎ、つづけてゆかなければ意味をなさないのではないでしょうか。

100年先のこの地球にどうしても残したいものは、空気と水と土と、それから……。

随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)

随筆家:山本ふみこ(やまもと・ふみこ)
撮影=安部まゆみ

1958(昭和33)年、北海道生まれ。出版社勤務を経て独立。ハルメク365では、ラジオエッセイのほか、動画「おしゃべりな本棚」、エッセイ講座の講師として活躍。

※この記事は雑誌「ハルメク」2016年10月号を再編集し、掲載しています。


>>「レイチェル・カーソン」さんのエッセイ作成時の裏話を音声で聞くにはコチラから

「だから、好きな先輩」は、雑誌「ハルメク」で毎月好評連載中! 最新情報もあわせてチェックしてくださいね。 
※ハルメク365では、雑誌「ハルメク」の電子版アーカイブを12か月分見ることができます。詳しくは電子版ハルメクのサイトをご確認ください。

山本ふみこ
山本ふみこ

出版社勤務を経て独立。特技は何気ない日々の中に面白みを見つけること。雑誌「ハルメク」の連載やエッセー講座でも活躍。

みんなの コメント
ハルメクが厳選した選りすぐりの商品

驚きの軽さ&使いやすさ!

1本で7つの効果
薬用美肌ヴェール
1本で7つの効果
薬用美肌ヴェール

【PR】50代の尿トラブル大調査! なんと8割の方が……

50代で8割以上!?尿モレの悩み

ヒトに話しにくい尿トラブルの話…「私だけ?」とお悩みの方も多いのでは?50代ハルトモさん達にアンケートを実施し、実態を調査しました!

2025.04.10
認知症のご本人の財産や権利をどう守るか?

お金に困りたくない!

認知症になると、不動産の手続きや預貯金の引き出しが自由にできなくなります!事前に知らないと苦労する「法律」とは…

2025.04.08
【PR】飽き症でも、ゼロから英語が話せるようになったワケ

ゼロから英語が話せる!

飽き症さんでもOK!たった60日で英語が苦手な人でも英会話ができるようになると話題の「インド式英会話」をご存知ですか?無料体験セミナー実施中です!

2025.02.05
ご家族の認知症介護の進め方、向き合い方

もし親が認知症になったら…

家族が認知症になった時、介護や通院など一体何を準備すればいいのでしょうか?「もしも」の場合のスムーズな対応を解説!

2025.04.04
【PR】タイプで分かる!ライフスタイル別レンズ診断

タイプ別!ぴったりの眼鏡

「近くのものが見えづらくなった」と感じる人は眼鏡の変え時かも!ライフスタイル別におすすめの眼鏡レンズを無料で診断♪

2025.03.10
「ひょっとして認知症かも」と心配になったらどうすればいい?(後編)

認知症の分かれ道!41%が…

認知症1歩手前「MCI(軽度認知障害)」と診断された場合、最大41%の方が健常な状態に戻ることが分かっています!認知症を「発症させない」ためにすべき事とは…?

2025.04.14
おひとりさま女性のソロライフに備えよう!「おひとりさま老後」の資産運用

老後資金、こんなに要るの?

未婚に限らず、離婚・死別などで誰しも「おひとり様」になる可能性が。一人で生きていくための「お金の準備」は出来ていますか?

2025.03.18
これだけ覚えておけばOK!海外旅行先で使う英会話10選&英会話学習法

海外旅行で「英会話」を楽しむ♥

海外旅行先で使う英会話10選&手軽に英会話力を伸ばす方法をご紹介!50代からの新しい趣味・学び直しにいかが?

2025.04.10
【PR】部分入れ歯のウソホント!?正しいケアって?

部分入れ歯のウソ・ホント!?

部分入れ歯が不安定・外れそうで怖い…そんなお悩みは「ケアの仕方」に原因が!?間違えている人が意外に多い、部分入れ歯の「正しい使い方」を専門家が紹介します!

2025.03.12
【PR】始めるなら相談できる「対面証券」がおすすめ

お金のこと、なんでも無料相談

資産運用、相続、ローンまで!お金の「よくわからない」をプロに気軽に相談できる♪

2024.12.17
【PR】鼻への重量感・違和感のストレスから解放!

「ふわっ」と軽いメガネ♥

メガネがずり落ちる・鼻の頭が重いなど、メガネのプチストレスにサヨナラ!あっと驚く程つけ心地抜群のメガネをぜひお試しください

2024.12.17

ハルメクが厳選した選りすぐりの商品

【限定コラボ】職人技が光る!ハルメク×マエノリのセーター誕生秘話