2021年人生相談スペシャル・3
人生相談:老いの受け入れ方は?時代についていけない
人生相談:老いの受け入れ方は?時代についていけない
更新日:2022年08月12日
公開日:2021年01月24日
70代女性のお悩み「キャッシュレスについていけない」
「年齢を重ねて、できない事柄が増え、ちょっぴり切ないこの頃です。記憶力や視力が低下していきますが、世の中はキャッシュレス。スーパーのレジでも戸惑ってしまうことが多く、ついていけません」(72歳・東京都)
曽野綾子さん「十教わって、半分できたらそれでいい」

年とともにできないことが増える、キャッシュレスについていけない、当然じゃないですか。私もついていけないと思っているし、そう言っています。
自分でできるだけやって、毎回申し訳ないと思いながらレジの担当の方に教わればいい。十教わって半分しか覚えられなくても、それでいいんじゃないですか。
前の通りだったら私は普通にできるわけですから、システムを変えた向こうが半分悪いんです(半分は覚えられない私が悪いので反省しますが)。
でも、できないことがあるのが人間なんです。踊れる人、踊れない人。そろばんができる人、できない人。できないからこそ人の才能がわかったり、見える世の中があったりする。
私は50歳のとき一時的に目がほぼ見えなくなり、そのとき自分にマッサージの才能があると気付きました。うれしかったですよ。できない事柄が増えて新たに気付くこともあるのです。
ひろさちやさん「世の中に無理についていく必要はない」

人は、誰でも老いていくのが当たり前で、私ももう認知症かもしれません(笑)。
若い者に負けないぞと無理をして、世の中についていく必要はないんです。何でついていこうとするんですか。遅れれば遅れるほど面白いじゃないですか。
世の中が先に進み過ぎたら大変ですよ、安心して遅れればいい。
私は老いてできないことがあるのは当然で、のんびり、ゆったり、ほどほどに、いい加減に生きるのがいいと思うんです。
熱い湯が好きな人は熱いのがいい加減だし、ぬるい湯が好きな人はぬるいのがいい加減。十人十色、100人いれば100色のいい加減があるんです。
年を取ることだって、100人いれば100通りの老い方があっていい。
今は何でも効率よく、速くしていこうという流れがありますが、「そんなにあくせくしなさんな」と言いたいですね。
樋口恵子さん「多勢に無勢の流れには最低限慣れること」

老いとともに体力、知力が低下することは、残念ですがお諦めください。それが現実です。
でもありがたいことに老いは自分にだけ襲うものではないので、覚悟してみんなで老いれば怖くない。よたよたへろへろしながらお互いの“よたへろ”を笑い合い、支え合いましょう。
キャッシュレスへの変化は、確かに戸惑いますよね。
約20年前、ニューヨークのホテルのフロントで現金で払おうとしたら「クレジットカードにして」と言われ、「現ナマこそ確かなもの」という価値観の私はけんかをしたこともあります。
ただ、これは多勢に無勢です。
以前6~7人で電車移動したとき、みんなICカードを持っていて、切符を買う私を待ってくださったことがありました。これはいけないと私もICカードを持つことにしました。
それぞれご事情も主義主張もあるでしょうが、この方は私より10歳以上お若いので、最低限、慣れていかれたらどうでしょうか。
★特集「人生相談スペシャル」は全8回(2021年1月22日~29日・毎日更新)の連載企画です。第4回は「大切な人の死を乗り越える方法」について回答します。
■回答者のプロフィール
曽野綾子さん

その・あやこ 作家。1931(昭和6)年、東京都生まれ。54年、聖心女子大学英文科卒業。93年、恩賜賞、日本芸術院賞を受賞、日本芸術院会員に。95年、日本放送協会放送文化賞受賞。2003年、文化功労者。12年、菊池寛賞受賞。95年から05年まで日本財団会長を務める。『孤独の特権』(ポプラ社刊)など著書多数。
ひろさちやさん

宗教評論家。1936(昭和11)年、大阪府生まれ。東京大学文学部印度哲学科卒業。同大学院人文科学研究科印度哲学専攻博士課程修了。気象大学校教授、大正大学客員教授を経て、執筆活動、講演活動を続ける。難解な宗教思想をやさしく平易な言葉で解く。『生き方、ちょっと変えてみよう』(佼成出版社刊)など著書多数。
樋口恵子さん

ひぐち・けいこ 評論家。1932(昭和7)年、東京都生まれ。56年、東京大学文学部美術史学科卒業。評論家。東京家政大学名誉教授。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」理事長。現在も講演、執筆活動を精力的に行っている。『老~い、どん! あなたにも「ヨタヘロ期」がやってくる』(婦人之友社刊)など著書多数。
取材・文=野田有香(ハルメク編集部) 撮影=中西裕人、門間新弥
※この記事は雑誌「ハルメク」2020年5月号に掲載した記事を再編集しています。
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