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- 佐々木常夫|女手一つで4人の子を育てた母の教え
佐々木常夫さんが、家人のうつ病や自殺未遂など崩壊寸前だった家族を再生させる体験の根本には、実の母親の生き方があったといいます。若くして未亡人となり4人の子を育てた母が、佐々木さんに言い続けた言葉とは?
佐々木常夫さんのプロフィール
ささき・つねお マネージメント・リサーチ代表取締役。1944(昭和19)年、秋田市生まれ。東京大学経済学部卒業後、東レ入社。自閉症の長男の育児と、肝臓病・うつ病を患い入院と自殺未遂を繰り返す妻の介護に追われながらも、同期トップで取締役に就任。2003年より10年まで東レ経営研究所社長。主な著書に『ビッグツリー 私は仕事も家族も決してあきらめない』(WAVE出版刊)。
父が病死。26歳の母は4人の子どものシングルマザーに
「佐々木さんは強い人ですね」。自閉症の息子、入退院や自殺未遂を繰り返す妻と、家庭の問題を抱えながら働き続けた私のことを、こんなふうにおっしゃってくださる人がいます。
「強い」という言葉が合っているのかわかりませんが、おそらく母がいなかったら私はまったく別の人間になっていたことでしょう。私の人格に大きな影響を与えた、母の話をさせてください。
私は、2歳上の兄、2歳下の双子の弟と、男ばかり4人兄弟の次男として秋田市に生まれました。父は、秋田で指折りの豪商の次男坊。そんな父が一目ぼれして結婚を決意したのが、母でした。結婚したときには、父は実家一帯の家約10軒を親から譲り受け、私が生まれた頃は、その家賃収入と父の本職である銀行員としての収入もあり、生活にはまったく困らない、いわゆる「裕福な家」でした。
しかし、平和だった佐々木家もここまで。この後、父が結核になったのをきっかけに、状況は一転しました。
当時はまだ、結核は治る見込みが少なく、お金もかかる病気でした。治療のため、父は温泉に療養に行き、高価なペニシリンを何本か打つたびに、家1軒を失いました。何度も何度もペニシリンを打ちましたが、結局残り1軒の家を売り払ったとき、父は亡くなりました。わずか31歳でした。
父が亡くなった当時、私は6歳。父のことで私が覚えているのは、家の2階にあるベッドに伏している姿だけ。周りも「そろそろだな」という空気でしたから、幼いながらに「父さん、いつかは死んじゃうんだろうな」と心のどこかでわかっていました。
だから、父の死は私にとってそれほど悲しくはなく、葬儀のときは人がたくさん集まってきて、おいしいものがたくさん並んだのがうれしかった。今になって思えば、そんな幼子の姿は、26歳で子ども4人を抱えて未亡人となった母にとっては、いたたまれなかったことでしょう。...
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