1億円近い賠償額支払いの判決も⁉

「自転車保険」義務化の動きも。入り方をFPが解説

公開日:2021/02/27

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コロナ禍、混み合う公共交通機関を避けて自転車に乗る人が増加中。最近では増えつつある事故に備えて「自転車保険」への加入を義務づける自治体が増えています。義務づけられていない地域の人も、自転車保険は検討すべきなのでしょうか?

自転車保険、新たに掛ける?掛けない?

自転車事故でも1億円近い賠償額に……

自転車は気軽な乗り物ですが、事故を起こして他人を死傷させると損害賠償責任が生じ、非常に高額な賠償金を支払わなければならなくなる場合があります。2013年には、神戸地方裁判所で、9521万円という1億円近い賠償額を命じる判決が出ました。他にも、数千万円の賠償金の支払いを命じる判決が出ています。

自転車事故でも1億円近い賠償額に……

若い人ならともかく、シニア世代がそんな高額賠償の事故の加害者になることはないのでは、と思うかもしれません。しかし、「平成29年における交通死亡事故の特徴等について」(平成30年、警察庁交通局)によると、自転車運転中に歩行者に対して死亡重症事故を起こした人の10%は、65歳以上です。

 

自転車保険の加入を義務づける自治体が増えています

シニア世代でも、重大な事故を起こして高額な賠償責任を負うリスクはあり、備えが必要です。では、どうすればよいのでしょうか。

自転車には、自動車のように賠償に備える自賠責保険はありません。国で自転車にも自賠責保険を付けることが議論されましたが、全国の自転車の台数等を考慮すると多大なコストがかかるため、見送られています。

自転車保険の加入を義務づける自治体が増えています

そうした経緯もあり、国レベルではなく自治体レベルで備えを講じる方向で、条例により自転車保険への加入を義務づける自治体が増えているのです。

最初に加入を義務づけたのは、前述の高額賠償の事故が起きた兵庫県で、2015年のこと。その後、大阪府、京都府、埼玉県、神奈川県などが続き、2020年4月からは東京都でも加入が義務づけられます。

こうなると、自転車保険に加入しなければと気持ちがはやりそうですが、実はわざわざ自転車保険に加入しなくても、既に備えを確保しているケースもあるのです。

 

要は、他人を傷つける場合の「個人賠償責任保険」のこと

要は、他人を傷つける場合の「個人賠償責任保険」のこと

そもそも自転車保険とは「個人賠償責任保険」と「傷害保険」という2つの補償を組み合わせた商品で、民間の損害保険会社などで取り扱っています。自転車事故などにより他人を死傷させた場合の賠償金については「個人賠償責任保険」で備え、自転車や日常生活上の事故による自分自身のケガなどには「傷害保険」で備えるものです。

2つの補償のうち、自治体が加入を義務づけているのは「個人賠償責任保険」の部分です。自治体の案内をよく見ると「自転車損害賠償保険等」などと記載されていて、これは「個人賠償責任保険」のことを指しています。

「個人賠償責任保険」とは、前述の通り他人を死傷させた場合に加え、他人の物を壊した場合なども補償する保険です。一般に単独で加入できないため、自動車保険や火災保険、各種の共済などに特約として付加するのが通例です。一つ加入していれば通常、契約者とその家族が補償されます。

 

既に加入している火災保険、共済、自動車保険をチェック

既に加入している火災保険、共済、自動車保険をチェック

ですので、加入している保険や共済に「個人賠償責任保険」が付加されていないか、次の手順でチェックしてみましょう。

チェック1:加入している下記の保険や共済に「個人賠償責任保険」を付加しているか?

  • 自動車保険
  • 火災保険
  • 傷害保険
  • 医療共済
  • 火災共済
  • クレジットカードの付帯保険

チェック2:個人賠償責任保険の補償額(保険金額、共済金額)が1億円以上か?(できれば3億円、無制限が望ましい)

加入していたら、補償額(保険金額)が十分か確認します。冒頭でお話しした通り、賠償額が1億円近くになる例もあったので、最低でも1億円は必要でしょう。共済だと最高3億円、大手損害保険会社だと無制限にも設定できます。

チェック3:個人賠償責任保険に、示談交渉サービスが付帯しているか?

さらに、示談交渉サービスが付帯しているかも確認を。事故が起きた場合、示談交渉サービスがあれば心強いからです。

以上のチェック1~3をすべて満たしていれば、自転車事故を含めて賠償責任への備えは当面十分だといえます。チェック2や3がクリアできていない場合には、見直しを検討しましょう。

 

自動車保険に付加の場合は、火災保険に掛け直すことも検討

自動車保険に付加している場合は要注意です。将来、運転免許証の返納をする場合、自動車保険を解約すると「個人賠償責任保険」の補償も切れてしまいます。一方、火災保険は持ち家でも賃貸でも住んでいる限り必要なものなので、「個人賠償責任保険」は火災保険に付加した方が続けやすくなります。

自動車保険に付加している人はいずれ火災保険に掛け直すことをおすすめします。これまで「個人賠償責任保険」に加入していなかったなら、火災保険に付加してください。年2,000円程度の負担で付けられます。

なお、自転車安全整備士による点検を受けた自転車には「TSマーク」が貼付され、賠償責任補償などが付帯されますが、通常の「個人賠償責任保険」とは異なり、補償対象が限定的です。TSマークの賠償責任補償の対象は、死亡もしくは重度後遺障害(1〜7級)の場合だからです。おまけ程度の補償と捉えるのが無難です。

自動車保険に付加の場合は、火災保険に掛け直すことも検討

自転車事故による自分のケガの補償も気になるから、やはり傷害保険も付いた自転車保険を検討したい、という人もいるでしょう。ですが、傷害保険は基本的に不要=自転車保険は不要です。

ケガをさせられた場合には、相手方から賠償を受けられます。自分で医療費を支払う必要があるなら、加入先の健康保険で「第三者行為による傷病届」という手続きをとれば交通事故でも健康保険が利用できます。1か月の自己負担が一定額を超えると、超過分は高額療養費として払い戻されるので大きな負担にはならないでしょう。

 

清水 香(しみず・かおり)

清水 香(しみず・かおり)
ファイナンシャルプランナー(FP)、社会福祉士。学生時代より生損保代理店業務に携わり、FP業務を開始。2001年に独立し、相談業務、執筆、講演、テレビ出演など幅広く活躍。財務省の地震保険制度に関する委員を歴任。自由が丘産業能率短期大学兼任教員。日本災害復興学会会員。著書に『どんな災害でもお金とくらしを守る』(小学館刊)がある。

 

※この記事は、雑誌「ハルメク」2020年3月号に掲載した記事を再編集しています。 
取材・文=萬真知子

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