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- 認知症高齢者の事故、どう賠償する?対策は
認知症の高齢者の徘徊による事故で電車が遅れた場合、その損害賠償はどこに請求されるのでしょうか? 2007年の事例では、損害の責任=賠償金の支払いは、家族が果たさなければいけないとなりました。「個人賠償責任保険」でリスク対策をしましょう。
教えてくれた人
清水香(しみず・かおり)
ファイナンシャル・プランナー。学生時代より生損保代理店業務に携わり、FP業務を開始。2001年に独立。相談業務、執筆・講演など幅広く活躍。財務省「地震保険制度に関するプロジェクトチーム」委員。著書に『あなたにとって「本当に必要な保険」』(講談社刊)など。社会福祉士でもある。
認知症高齢者の賠償責任はどこに?家族にある!
前述の損害賠償の事例は、2007年に愛知県内で起こった事故です。認知症の91歳男性が徘徊中に電車に接触し、死亡しました。JR東海は、この事故による電車の遅延損害等の損害賠償約720万円を、別居の長男を含む男性の家族に求めて訴訟を起こしました。しかし、最高裁は16年3月に「家族は監督義務を負わず賠償責任はない」と結論付けました。
この事例では家族の監督義務は問われなかったわけですが、認知症の高齢者に同じような事故が起こり、別居の子どもを含めた家族が賠償責任を負うような事態は十分考えられます。
それは次のような理由から。他人を傷つけたり他人の財物に損害を加えたりすると、被害者に対して法律上の賠償責任を負うことになります。損害の程度によっては多額の賠償金を支払う義務が生じる場合もあります。
ですが他人に損害を加えた本人に責任能力がないと、賠償責任は本人の監督義務を負う家族、つまり配偶者や子どもなどに及ぶことがあるのです。損害の責任=賠償金の支払いは、家族が果たさなければいけない場合もありうるということです。
「個人賠償責任保険」でリスク対策
こうしたリスクへの備えになるのが「個人賠償責任保険」。日常生活上の偶然の事故により他人にケガを負わせたり、他人の物を壊したりして法律上の損害賠償責任を負った場合に、損害賠償金や訴訟費用などが支払われる保険です。
自転車で歩行者をはねた、買い物中に誤って商品を壊した、飼い犬が他人にかみついてケガをさせたなど、多様な賠償リスクに備えられます。
さらに冒頭の事例を受けて、最近では認知症の高齢者が誤って線路内に立ち入り、電車を止めてしまった場合の損害賠償金や訴訟費用等にも対応するタイプの個人賠償責任保険も出てきています。
例えば三井住友海上は、火災保険に付帯する特約として「日常生活賠償(電車等運行不能賠償追加型)特約」を取り扱っています。電車の運行不能の補償については、電車に接触した場合を要件にするものもありますが、三井住友海上の場合、線路内に立ち入っただけで電車に接触しなくても補償対象になるのが特徴です。
同様に、電車に接触しなくても補償が受けられるのが東京海上日動の「認知症あんしんプラン」です。こちらはケガを補償する傷害保険と個人賠償責任保険などのセット商品です。
個人賠償責任保険は単体で加入するのではなく、損害保険会社の火災保険や自動車保険、共済の商品に特約として付加して加入するのが一般的です。クレジットカードのサービスとして付帯している場合もあります。
ですから意識していなかったけれど、実は加入していたという方は大勢いらっしゃるかと思います。必要な補償を確保できているかどうか、次のチェックポイントにしたがって確認してみましょう。
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