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- 入りすぎ?50代は生命保険の見直しタイミング!
50代家庭の保険加入状況を見てみると、とても残念な保険の入り方をしていることが少なくありません。人生の第二ステージに入る局面で、保険の見直しと組み換えは重要です。人生後半に備えて知っておきたい保険の見直しのポイントについて取り上げます。
“体・健康に対する保険”は中身の組み換えを
保険は、入ったときがゴールではなく、本来、ライフスタイルの変化に合わせて見直すべきものです。老後・退職後が見え始めたタイミングは、実は、保険見直しのラストチャンスなのです。
思い返してみると、現役時代に入っていた生命保険は、世帯主がもしも死亡してしまった際に備えた保険でしたね。けれども、子どもが巣立って学費負担も不要になり、世帯主が退職した後では、世帯主が亡くなった際のことは現役のときほど心配しなくても良さそうです。というのは、現役時代に世帯主が死亡すると就労収入がゼロになることを意味していましたが、退職後であれば何はともあれ老後の年金が継続的に入ってくるからです。
そのため、生命保険は、その必要性が大きく下がることになります。相続対策として生命保険を活用するという場合を除き、一般的には、お葬式代や整理費用などで300万円もあれば十分と考えられています。
一方、にわかにニーズが高まるのが「医療保険」です。同窓会などで友人の死亡や大病の話を耳にしたり、自身でも身体能力の衰えを感じることが増えたり、体調が思わしくないことが続くと、「医療保険がとても気になる」という人が多いです。
保険は、健康なタイミングでなければ割安な保険料では入ることができず、また、年齢がアップするにつれてどんどん割高になる仕組みなので、入りたいと思ったときに健康状態が良好であれば“入り時”ということに。ただし、医療保険を検討する際は、費用対効果の吟味が特に重要です。
例えば、入院給付金日額5000円というプランに、月払保険料5000円も払うケースでは、1年間に支払った保険料は合計で6万円にもなります。ということは、単純計算で毎年12日入院しないと保険料の元が取れない計算に。
5年間では60日、つまり、2か月入院しないと払った保険料を回収することはできません。貯蓄で積み立てておいた方が合理的かもしれません。そもそも、今の医療機関は、早期退院の推奨で2か月もの入院はレアケースです。本当に保険で備えるべきなのか、預貯金で備えておくのか、よく考えて判断したいところです。
さて次に、「がん保険」に加入している方も多いのではないでしょうか。「がん保険」は、前世紀(1900年代)に契約したプランの多くで、65歳以降の保障額が半額になるものをよく見掛けます。同じ保険料を払い続けるのにもかかわらず、それまで100万円だった診断一時金が65歳以降は50万円に、1万5000円だった入院給付金日額は7500円になってしまうことを認識しないまま、今に至る人が少なくありません。ぜひチェックしてみてください。その点に不満があり、今後もがん保険に入っておきたいという人は、なるべく早めに保険見直しをすることがおすすめです。
"住まいの保険"は万全かどうか再確認を
さて、大型台風や線状降水帯などによるゲリラ豪雨、土砂災害などの自然災害が、近年、多い気がしませんか。雨が降るメカニズムは大気中の水蒸気が冷えて地上に降り注ぐというものですが、地球温暖化で水蒸気が増えている分だけ、以前よりも大量で長時間に及ぶ雨は降りやすくなっています。今後も、温暖化が止まらない限り、増加傾向にあるのは明らかです。加えて、日本は南海トラフ地震や首都直下地震など、大きな地震が起こることも予想されています。
そのため、住まいや車が被災することは想定した上で、備える姿勢が重要です。預貯金で対応できるなら気にしなくてもいいかもしれませんが、住まいが罹災すると、数百万円~数千万円規模の修繕費などがかかる可能性が高いです。手元にあるお金は、老後資金に備えた大切な資金という場合、その取り崩しを避けるために、保険をうまく活用したいところです。
火災保険に「水災補償」が付いているか?
50代家庭の火災保険の加入状況を見てみると、残念な入り方が目立ちます。例えば、「昔に入った火災保険をずっと続けている」という家庭で特に多いのですが、「水災」に対応していない補償内容になっているケースです。
名古屋で見られた都市型水害や広島の土砂災害なども、火災保険に「水災」の補償がついていなければ、保険からは1円も受け取れません。今一度、「水災」の補償が含まれているかどうか、保険証券で確認しておくと安心です。
地震保険に入っているか?
地震についても、「我が家は耐震設計だから大丈夫」ということで地震保険に入っていないケースが少なくありません。けれども、地震時には火事が多発するため、隣家からの延焼は避けられないものですが、地震時による火災被害は火災保険では保険金の支払い対象外となっていて「地震保険」でなければ補償されないことは、意外に知られていません。気になる方は検討されてはいかがでしょうか。
住宅の建て直しは「再調達価額ベース」か?
せっかく火災保険に入っていても、建て直しができる額を受け取れるプランで契約していないというケースもよくあります。火災保険は、もともと、被災時点の時価を基に保険金が支払われる仕組みです。数十年前に2000万円で建てた家も今は1000万円の価値となれば、全壊・全焼しても1000万円しか受け取れないのが基本です。
けれども、それでは困るということで、おおむね1998年以降に新発売された火災保険あたりから、建て直しできるだけの金額(再調達価額ベース)で契約できるように仕組みが変わりました。
そのため、お手持ちの火災保険が、1998年以前に契約したものである場合は特に注意が必要です。保険証券に「再調達価額ベース」「再取得価額ベース」「新価基準」といった言葉が全く見当たらなければ、その保険は時価ベースのままの契約になっています。
保険金額2000万円と書いてあったとしても、これらの文言の記載がなければ、今の時価が保険金の上限額になるため、満足のいく額を受け取れない可能性があります。1998年以降のものでも、保険会社等によって数年のタイムラグがあるため、再確認がおすすめです。
なお、「被災したら銀行から借りればよい」と考えている人も多く見られます。けれども、銀行などの金融機関は、現役会社員など就労収入がある人には融資に前向きですが、年金生活者には冷たいものです。退職後は思うようには修繕費を借りられない現状がありますので、「火災保険」「地震保険」でしっかり備えておきたいところです。
自動車保険、個人賠償責任保険
この他、確認しておきたい損害保険としては、ハンドルを握るなら「自動車保険」、自転車に乗るなら「個人賠償責任保険(特約)」などにちゃんと入っているかのチェックが大切です。自分がどれだけ安全運転でも、事故に巻き込まれることは避けられません。思いがけず加害者になったとき、数千万円~数億円の賠償責任を負う可能性もあります。預貯金ではとてもカバーしきれないため、保険でしっかり備えておきましょう。
“認知症保険”や“民間介護保険”は必要?
さて、シニアに特に関心が高いのは「認知症保険」や「介護保険」です。保険会社によって保障内容はさまざまですが、保険会社所定の要介護状態にならなければ1円も受け取れない“掛け捨て”タイプが主流です。前述の「医療保険」などと同様に、費用対効果を調べてから判断してみてください。
なお、認知症保険は、認知症高齢者による老々介護もありがちな世の中であることを受けて、子どもを受取人に指定できなければ原則として契約できません。つまり、“おひとりさま”は入れない点に注意が必要です。
以上、ミドル~シニア世代に気になる保険について見てきました。保険に入る際には、年金生活に入っても無理なく払えるか、あるいは、年金生活に入る前に払い終えられないか、の視点からもよく検討してみてください。どのように保険の見直しをしたらよいか迷ったら、保険に強いファイナンシャルプランナーなどに相談してみると良いでしょう。
竹下さくら
特定の金融機関に属さない独立系のなごみFP事務所を運営。個人のコンサルティングを柱に、セミナー講師や執筆活動も行う。千葉商科大学大学院客員教授、東京都中高年勤労者福祉推進員。近著に「1時間でわかる やれば得する! 保険の見直し 100の鉄則」(技術評論社刊)。
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