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- 火災保険の水災補償で住まいの水害リスクに備えよう!
台風や集中豪雨による浸水被害など、水害に備えるためにどの保険を選べば安全なのでしょうか? 水害被害に対する国の支援金はあるのでしょうか?住まいの水害リスクと火災保険の水災補償について、ファイナンシャル・プランナーの清水香さんに聞きました。
集中豪雨による洪水など、都市型水害のリスクが上昇中
水害というと、河川が氾濫して床上浸水に見舞われたり、洪水や土砂崩れで住まいが流失したりといったことを想像しますが、近年は集中豪雨や台風の大型化など、住まいが水害に遭うリスクが高まっています。
都市部に住んでいても、ゲリラ豪雨などで排水処理能力を超える雨が降ると、洪水などによる水害の恐れが生じます(都市型水害)。マンションの高層階に住んでいる場合を除き、浸水被害などの水害リスクは誰にでもあるものと想定しておくべきでしょう。
国や自治体の支援は限定的!家屋全壊でも100万円のみ
仮に床上浸水に見舞われると、家具や家電製品、寝具や衣類といった家財道具は水浸しになり、場合によってはすべて買い替えなければならなくなります。ドアなどの建具も水を含むと不具合が生じるため、原状回復にはリフォームが必要です。
家財道具の買い替えとリフォームで、数百万円以上の費用がかかることもあります。さらに洪水や土砂崩れで住まいが流失した場合、再建には数千万円の費用が必要になると考えられます。
しかし、水害に対する国や自治体からの支援は限定的です。自然災害の被害が一定基準を超えると国の「被災者生活再建支援制度」が適用されますが、住まいが全壊した場合でも支援金(基礎支援金)は100万円のみ(※1)。住まいや家財といった私有財産については自力で守るのが基本だからです。
※1基礎支援金に加えて、住宅の再建(建設・購入)をすると200万円、補修をすると100万円の加算支援金が支給される。
水害保険=火災保険の水災補償へ加入しよう!
とはいえ、年金生活のシニア世代にとって数百万円、数千万円という多額な金額を自分で賄うのは難しいこと。老後資金や退職金に手を付けると、最悪の場合、家計が破綻することも考えられます。
そんな、万が一の水害被害に備える有効な対策が、損害保険会社(損保)の火災保険です。
「水害なのになぜ火災保険?」と思うかもしれませんが、火災保険には水災被害(火災保険では「水害」のことを「水災」という)を補償する商品が多くあります。
最も望ましいのは実際の損害を100%補償するタイプ。建物が全壊した場合に再建費用が2000万円かかるとしたら、2000万円全額を補償してくれます。
支払い金額は保険によって異なり、水災の補償は損害の7割までという商品もあります。これだと再建に2000万円必要でも、保険金の支払いは1400万円までなので、保険金のみでの原状回復は難しくなります。
なお、家財への損害は「家財保険」を付けていないと補償対象にならないので、気を付けてください。また、津波の被害も補償範囲外となるため、火災保険にプラスして「地震保険」に加入する必要があります。
火災保険に加入済みの人も補償内容の確認・見直しを
すでに火災保険に加入済みの人も、補償の対象となる損害規模に条件があるなど、すべての損害が補償されるとは限りません。補償内容や支払われる保険金の金額など、詳細をチェックしておくと安心です。
Step1:加入している火災保険に水災補償があるか確認
火災保険によっては、水害(水災)の補償が付いていない場合もあります。水害による損害を補償するのは、オールリスクタイプの火災保険や住宅総合保険などです。住宅火災保険では、水害は補償されないので、注意しましょう。
Step2:水災補償でカバーされる範囲をチェック
水害(水災)の補償内容はどれも同じではなく、商品や契約時期によって異なります。特に、床下浸水は水災補償の対象外になることが多いもの。補償される被害範囲をしっかり確認しておきましょう。
Step3:補償内容や支払い金額の詳細を保険会社に確認
火災保険の契約内容は保険証券などで確認できますが、思い違いをする恐れもあるので、加入した保険代理店または保険会社や共済の相談窓口に問い合わせて、補償内容を正確に把握しておきましょう。特に注意したいのが、損害別の支払い金額です。
Step4:水災補償がある火災保険への掛け直しを検討
加入中の火災保険や共済が水害(水災)について損害を100%補償する商品でなかった場合には、保険の掛け直しを検討します。ただし、保険加入時の審査に通らないケースもあるため、新しい契約をしてから古い契約を解約するのが大切です。
割安な火災共済は要注意!保険の掛け直しも検討
損保の火災保険ではなく、割安な火災共済に加入している場合は、水災の補償が150万円など見舞金程度の場合もあるので要注意です。補償内容を確認した結果、水災の補償がなかった、あるいは十分でなかった場合には、保険の掛け直しを検討しましょう。
水災補償が十分なタイプに掛け直すと、これまでより保険料が上がる場合もありますが、これは住まいという大事な生活基盤を守るために必要なコストです。
一例として、補償額が2500万円(建物2000万円、家財500万)の火災保険の場合、保険料は年3万1890円(※2)。月額にならすと3000円弱の負担で、水害に遭っても家計が破綻する心配はなくなります。
自治体によってはウェブサイト上に、洪水や土砂災害など水害のリスクを表示したハザードマップを掲載している場合があります。水災リスクが高い地域に住んでいる人は特に早急に、そうでない地域の人も“想定外”の水害が起こることがあるので、必要に応じて火災保険の加入・掛け直しを検討しましょう。
※2 損保ジャパン「THE火災保険(スリムⅠ型)」保険期間1年の例。条件:東京都の新築木造住宅、H構造(非耐火構造)、建物保険金額2000万円、家財保険金額500万円。補償内容/火災、落雷、破裂・爆発、風災、ひょう災、雪災、水災。自己負担額10万円(2020年7月現在)
■教えてくれた人
清水香さん
しみず・かおり ファイナンシャル・プランナー。学生時代より生損保代理店業務に携わり、ファイナンシャル・プランナー業務を開始。2001年に独立。相談業務、執筆、講演などで活躍。財務省の地震保険制度に関する委員を歴任、現在「地震保険制度等研究会」委員。著書に『どんな災害でもお金とくらしを守る』(小学館クリエイティブ刊)他。社会福祉士でもある。
※この記事は、雑誌「ハルメク」2017年8月号に掲載した記事を再編集しています。
取材・文=萬真知子
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