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香りの世界
いつの頃からか、日常の中にお香を取り入れて生活しています。決して正式に香道を学んだわけではないので、自分なりに楽しんでいるのですが。
仕事から戻り諸々の家事を終え、お風呂に入りホッと一息つき自室に入るとまずお香を焚きます。
香りの世界に包まれながら、無音の中で心の一点を見つめる思いで今日一日の出来事を反すうし、反省をしたり苦笑いをしたり、自分の一日を振り返ります。きちんと味覚、聴覚、視覚、嗅覚、触覚を持っていられることに感謝しつつ、心の中を見つめます。
蘭奢待との出会い
奈良国立博物館に収蔵される御物(天皇の持ち物)の一つである香木、蘭奢待(らんじゃたい)。
いつだったか、正倉院展で目にしたことがあります。枯れた古い木片のように見えるものですが、私には強い圧迫感を持って迫ってきました。ぞくぞくとした心持で、ずっと見つめていたことを覚えています。
長さ156cm、重さ11.6kg、最大径43cm、黄塾香(おうじゅくこう)とも呼ばれる伽羅です。
公にされているだけで、切り取ったものは足利義政、織田信長、明治天皇と伝わっています。足利義政は右側を、織田信長は中央部分を、明治天皇は左側を削り取ったと、虫ピンで刺された小さなカードでわかりました。
織田信長は、千利休にも分け与えているということで、千利休も蘭奢待を聞く機会があったということでしょう。ああ、その場に居合わせたかったとつくづく思います。果たして蘭奢待はどのような香りなのでしょうね。
しかし、上記お三方以外にも切り取った跡が多数あるようで、おそらく50回ほど切り取られていると言われています。
香りを楽しむ
お香売り場や香木店に立ち寄ってみてはいかがでしょうか。沈香や伽羅などを基本にした香りは、心が落ち着きます。数年前にマレーシアのマラッカの街ですすめられるままに買い求めた沈香は、素敵な香りがしました。
お香のお値段はピンからキリまでありますので、お財布加減で決めてもよいかと思いますが、やはり高価なものは混ざり物がなく純粋な香りがします。私は箱に入った数千円ほどのものをよく愛用しています。香木店で親切に教えていただくのもよいかと思います。
木製ケースが携帯用の容器
また、少し違った用い方としておすすめなのが塗香(ずこう)です。
お寺などで、内陣に入る際など手足に塗って清める役目をするお香です。携帯用の容器も販売されていて持ち歩けるのも便利です。また私は塗り物の小皿などに入れて玄関先に置き、出入りするたびに清めの意味で手に塗り込んだりしています。
香木店で入手できるものに、自分で調合できるものもあります。10種類ほどの中から好みの香木や樹脂を調合して、匂い袋を作るのもおすすめです。スプーンで少しづつ取り分けて、自分流の香りを作ることができます。
あまり堅苦しく考えずに、気楽に香りの世界を楽しみたいと思っています。
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