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- 競泳の面白さは「水」の抵抗との戦い
三度の飯より水泳が好き(とまではいかないけれど…)な私。オリンピック、パラリンピックの競泳観戦が面白くなる水泳の魅力をちょっとマニアックにお伝えします。
奇跡の復活!池江璃花子選手
2021年6月の競泳オリンピック選考会で白血病から奇跡の復活を果たし、東京五輪代表の座を勝ち取った池江璃花子選手の活躍は、多くの人の感動を生みました。
競泳をよく知らない人も白血病の闘病から復帰して1年ほどで、日本選手権で優勝することがどれだけ驚くべきことかは想像に難くなかったことでしょう。
テレビ観戦していた私も池江選手が決勝に進出し「ただいま」と口ずさむ場面を見て思わず涙が出ました。闘病生活で今まで培った筋力、体力がすっかり落ちたところから、また這い上がってきた池江選手の並々ならない努力にただただ感服するばかりですが、この復活ができたのも水泳という競技ならでは特殊な事情があったと思われます。
陸上でのスポーツと水泳の大きな違いは「水の抵抗」があることです。
フィジカルが強くてパワーのある人が、ガシガシ水をかいてバシャバシャキックを打てば速いかというと、そうはいかないところが水泳のおもしろさです。
背が高くて筋肉隆々の海外選手に小柄な日本人選手が勝てるのも、水の抵抗に打ち勝つテクニックがあるからこそ。池江選手の復活劇も、このテクニックが失われていなかったことが大きな勝因だと思います。
水泳は「けのび」で始まり「けのび」で終わる
水泳の練習で最初に行うのは「けのび」と呼ばれる動作です。壁を蹴って、真っ直ぐな姿勢で浮いて進む練習です。体を水面に対して平行にして、できるだけ抵抗の少ない姿勢を作ります。「ストリームライン」と呼ばれ、いわゆる「流線形」の姿勢です。
とっても単純な動作ですが、実は初心者水泳教室でマスターする「けのび」とトップ選手が作る究極の「けのび」では雲泥の差があるのです。トップ選手の中には壁を蹴っただけで(手も足も動かさないで)プールの端まで到達できるテクニックを持つ人もいます。
大人から水泳を始めてほぼ30年経とうとしている私も、この「けのび」を身につけるのにとても苦労しました。いえ、過去形ではなくて今も試行錯誤の日々です。
水族館で魚やアシカ、ペンギンが泳いでいるのを見るとストリームラインの美しさに惚れ惚れします。足や手をバタバタ、グルグル動かすわけでもないのに水の中をス~~ッと進む姿は、まさに理想の「けのび」だなといつも憧れの目で見ています。
体を浮かせるテクニック
陸上で立って生活する人間が、水中で流線形を作るにはさまざまなコツが必要です。ヒトの背骨はゆるやかなS字カーブを描いていますが、泳ぐときの姿勢はそのカーブをできるだけなくして真っ直ぐにする必要があります。
頭や骨盤や肩甲骨を泳ぐのに最適な向きにして、肩やひじ、足首の関節もしっかりと伸ばす……とは言え、無駄に力が入るとうまく浮きません。脱力するところと力を入れるところがあるからです。水中で体を真っ直ぐにして浮くという単純なはずの動作ですが、その究極を求めるとさまざまなテクニックが必要になるのです。
抵抗の少なく浮いた姿勢に、手や足を動かして進んでいく……というのが水泳です。この手と足の動き(水をかく、水を蹴る)を入れると、さらに「抵抗問題」は増えていきます。「推進力」と「抵抗」のせめぎ合いという追求しなければいけないテクニックが次から次と生じてくるのです。
水泳がおもしろいのは、この「水の抵抗」を感じたり「抵抗を少なくする動き」を考えたり、身につけたりすることなのかなと思います。
オリンピック・パラリンピックの競泳観戦、鍛え抜かれた選手の体やダイナミックな泳ぎも楽しみですが、抵抗の少ない泳ぎを追及した各国のトップスイマーのテクニックを見るのも楽しみです。
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