劣等感と優越感……。その根底には差別意識が

2021年05月06日

私の生き方に繋がる言葉との出合い

劣等感と優越感……。その根底には差別意識が

裸の木々が次々に小さい葉をつけ、生まれ変わったかのように輝き始めました。ビオトープに沈めた植木鉢に身を潜めていたメダカたちも水面に姿を現わし、新しい命を育む準備を始めました。そんな自然の営みに心寄せながら、自分の来し方を振り返ります。

生き物すべてが生まれ変わったかのような姿に

生き物すべてが生まれ変わったかのような姿に
   若葉をつけ始めた胡桃の木      枝いっぱいに葉を付けた山椒の木

毎年グングン伸びる胡桃の木は、思い切った剪定をします。幹にはたくさんのこぶができてしまい、今年は葉が出そうにもないなと思っていると、4月初めに小さな若葉をつけ始めました。冬の間枯れ葉に埋もれて見えなくなり、消えてしまったのかと心配していた山椒の木も、竹の子の季節に合わせるかのように柔らかく香り高い葉を小さい枝いっぱいに付けました。

生き物すべてが生まれ変わったかのような姿に
カサブランカ                 ドイツスズラン

土の中で眠りについていた球根も一斉に目覚め、日毎に茎や葉を伸ばしていきます。庭に作った簡易ビオトープの中に潜んで氷の下で冬を越したメダカたちも、元気に泳ぎ始めたので、急いで水草を入れて、卵を産む場所を作りました。

生き物すべてが生まれ変わったかのような姿に

生きとし生けるものすべてが目覚め、生まれ変わったかのような姿を見せてくれる春です。

私が生まれ変わったような気持ちになったとき

私も生まれ変わったような気持ちになったことがあります。59歳で白内障の手術をしたときです。

私は、小学校6年生からずっと強い近視でした。学校での年に一度の視力検査で、5年生の時は「0.9」だったのに、6年生の検査ではいきなり「0.02」になっていました。母の強い近視の体質が遺伝したのでしょうか、私たち5人兄弟は強弱の違いはあるものの全員近視。母は、80歳頃に「白内障」となり手術をしましたが、よく見えるようにはなりませんでした。

小・中学校時代は眼鏡で、高校時代からはずっとコンタクトレンズで視力を補ってきた私でしたが、50歳を過ぎた頃からコンタクトレンズを新しくしても、もどかしいほどに見えなくなっていきました。眼科でさまざまなレンズを使って調べてもらった結果、矯正視力でも「0.5」までしか見えなくなっていることがわかりました。これでは通勤に不可欠な運転免許の更新もできないし、何より仕事にも支障を来(きた)すようになっていました。病名は「白内障」。母と同じです。

私が生まれ変わったような気持ちになったとき

そこで、59歳の時に手術をする決心をしました。母の手術から約15年。術後母は盲目に近い状態になっていたので、(私もそうなるのではないか)という不安を取り除くのに時間がかかりました。しかし、15年の間に「白内障」の手術は日進月歩の勢いで進歩し、私が「白内障」の手術を受ける頃には、保険適用の範囲で合わせたい焦点を自分で選べるまでになっていました。小学生の頃から、遠くがはっきりと見えたことがなかった私は、眼鏡やコンタクトレンズを使わずに、遠くをはっきりと見ることが憧れでした。私は迷わず焦点を遠くに合わせる(-5m)処置を選びました。

私が生まれ変わったような気持ちになったとき
*イメージ

手術を受けた翌日、覆っていた眼帯を先生に外してもらって恐る恐る目を開いてみると……。思わず叫びだしそうなほどに、ハッキリと見えたのです。自分の手指も、服のひだも、先生の顔も。病室に帰って、窓から遠くを見はるかすと山々はちょうど紅葉の真っ盛り。何という美しさ! 今まで見えていなかったのは「形」だけではなく、「色」もだったのだとつくづく思いました。

私が生まれ変わったような気持ちになったとき
*イメージ

夫が迎えに来て、黄昏時の帰り道。街には街灯やネオンサインが点り始めました。長い間眩しいとだけしか感じていなかった夜の明かりの、透明感ある鮮やかな美しさ! 街を過ぎると、今まで何もないと思っていた山の中腹にびっしりと住宅が建っているのが見えて、驚きました。

何もかもがくっきりと美しく見えて、生まれ変わったような気持ちに包まれました。

劣等感と優越感は表裏一体……。先輩の一言

「劣等感を持つということは、自分より劣っていると感じた人に出会えば、優越感を持つということだよね」。「そしてそれは、差別意識に繋がる考え方だと思うよ」。……学生時代の先輩の一言です。

子どもの頃の私の憧れの対象は、兄たちや姉でした。勉強もスポーツも特別と言うほどではないにしろ、何もかもが私よりはよくできました。5歳違いの姉は親戚の家に行く度に、「また綺麗になったねえ」と褒められていました。私も大きくなったら、そのように褒められるようになるのかなあと思っていたけれど、なりませんでした。

極めつけは大学進学。5人兄弟全員が同じ公立高校に通った後、兄たちと姉は、国立の4年制の大学に進学しました。「○○を目指してがんばる」ということがなぜか苦手で、受験間近になっても(勉強しなければ!)という気持ちはどこかにあるものの、ついつい本に手が伸びてしまったり物思いにふけったりしてしまう私は、国立の志望校には当然のごとく不合格。それからでも受験に間に合う私立大学を探して、少しでも親に負担をかけまいと、短期大学部を受験し進学しました。

短大に入った当時の私は劣等感の塊でした。そんなときに出会った1つ年上の先輩からの一言。

「劣等感は差別意識に繋がる」

兄弟に対する劣等感が強い一方で、学校では妙に正義感が強く、弱い者いじめを見かけると、男の子にでも食い下がっていくような「差別」を許せない子どもでした。だからこそ、先輩のひと言に強い衝撃を受け、長い間悩まされ続けていた劣等感から、生まれ変わったかのように抜け出せたのです。それ以来、私は、人と比べることをせず、劣等感とも優越感とも縁のない、ありのままの自分の人生を歩むようになったのでした。
 

■もっと知りたい■

harumati
harumati

45歳~66歳までC型肝炎と共生。2016年奇蹟とも思える完治から、今度は脳出血に襲われ右半身麻痺の大きな後遺症が残り身体障害者に。同居する息子と夫に家事を任せての暮らしにピリオドを打ち、2021年11月「介護付き有料老人ホーム」に夫と入居。「小さな暮らし」で「豊かな生活」を創り出そうと模索中です。

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