私の生き方に繋がる言葉との出合い

泥水を吸いながらも美しく花開く蓮のように

公開日:2021.04.01

緊急事態宣言が解除されるとすぐに三重県に出かけました。義兄の四十九日(仏様の元への旅立ち)に何とか間に合いました。夜、テレビもパソコンもないログハウスで、プロジェクターでスクリーンに大写しにした映画を見ました。「死ぬまでにしたい10のこと」

泥水を吸いながらも美しく花開く蓮のように
泥水を吸いながらも美しく咲いた蓮の花(イメージ)

四十九日に見たカナダ・スペイン合作映画

この年になると身近な人の死はこたえます。そして自分の生と死についてしみじみと考えてしまうのです。四十九日の夜、邦題「死ぬまでにしたい10のこと」という映画を見ました。

主人公は23歳の女性アン。夜間の学校での清掃作業という仕事、仕事に就いていない若い夫ドン、母親の敷地内に置かれたトレーラーハウスでの一家4人の暮らし。恵まれない生い立ちであっただろうことが想像できます。

17歳の時、初めてキスをした男性の子どもを産み、23歳にして2人の女の子のお母さん。同じ敷地内に住む母親からの援助は得られず、父親は10年以上も刑務所暮らし。すさんだ生活に繋がりそうな環境にも関わらず、時間に追われる忙しい毎日の中でもきちんと食事を作り、子どもたちとじゃれ合い、夫と愛し合う。ポップな演出とも相まって、そこには愛がキラキラと輝いていました。

そんなアンが、ある日激しい腹痛に襲われて病院に運ばれます。病名は転移性卵巣癌。若いが故に進行が速く、もはや手遅れで余命2か月の宣告を受けます。アンはそのことを誰にも打ち明けないと決意し、「死ぬまでにしたい10のこと」のリストを、ひとりぼっちの深夜のカフェでノートに書き留め、それを一つ一つ実行していきます。

中には、若い女性らしく、夫以外の男の人と付き合ってみる、誰かが私と恋に落ちるよう誘惑する、爪とヘアスタイルを変えるというのもありましたが、圧巻は次の3つ。

  1. 娘たちに毎日愛していると言う
  2. 娘たちの気に入る新しいママを見つける
  3. 娘たちが18歳になるまで毎年贈る誕生日のメッセージを録音する

アンの心にあるのは娘たちが幸せになるためのストーリー。仕事帰りの深夜、路上に止めた車の中で、1年ずつ成長していく娘たちをイメージしながら言葉を選び、誕生日に贈るメッセージを録音する姿は、幸せにさえ見えます。

誰にも愛情を示さなかった母親は、いつしかおばあちゃんらしく孫たちに接するようになり、無職だった夫は仕事を見つけて働き始めます。そして、刑務所に会いに行った父親は、頬の感触と好きな歌しか覚えていなかったけれど、親子の情で深く繋がり続けていたのだと知り、満ち足りた気持ちになります。

その日が刻々と迫る中、隣に越してきた同じ名前の看護師アン――親にも医師にも生きることを見限られたシャム双生児を看取ったことで、結婚・出産に懐疑的になっている――が、自称「貧血」で寝込んだ彼女に代わって食事の支度をするために来てくれます。食卓を整える姿や、「手を洗ってきて♫ ドンもよ」と言う声に、彼女亡き後の家族の幸せが予感され、My Life Without Meの原題が生きています。

泥水を吸いながらも美しく花開く蓮のように

映画を見ながら思いました。「アンこそが蓮の花だ!」と。

20代の頃、何かの雑誌の巻頭言で、この言葉に出合いました。実家の庭の池にも蓮とよく似た睡蓮が植えられていて、小さい頃からその清らかさにいつも見惚れていました。けれども20代になってこの巻頭言に出合うまでは、この花は泥水を吸ってこそ美しく咲くのだと言うことに思い至りませんでした。

それは、清流の中でしか咲かない水芭蕉や梅花藻の白く清らかな美しさとは違う値打ちを持っているのです。「汚れた泥の中に咲いているのに決して泥の色に染まらない」それだけではなく、泥がなければ立ち上がってこない、花を咲かせるためには、泥がどうしても必要なのです。

そのことを知ったとき、私はハッとしました。泥とは、人生になぞらえれば、つらいこと・悲しいこと・不条理なこと。それらから目をそむけることなく、むしろそれをも栄養にしながら生きていきたい――泥水を吸いながらも美しく花開く蓮のように――。

今、私がどうしても納得できないこと

今、私がどうしても納得できないこと

2021年1月22日「核兵器禁止条約」が、世界52の国と地域の批准を以て発効しました。この条約が、国連加盟国の6割を超える122か国の賛成によって採択されたのは2017年7月7日のこと。多くの国が核兵器廃絶に向けて明確な決意を表明しているにも関わらず、実に3年半の時を経てようやく発効したのです。

唯一の戦争被爆国である我が国、日本は、核兵器保有国と歩調を合わせて批准しませんでした。管首相の言い分はこうです。「唯一の戦争被爆国として条約が目指す核廃絶というゴールは共有しているが、核兵器のない世界を実現するためには核兵器の保有国を巻き込んだうえで核軍縮を進めていくことが不可欠だ」。

今、核兵器保有国を縛る条約は「核不拡散条約」(NPT)しかありません。NPTは世界191か国が締約、そのうち5か国が「核兵器保有国」186か国が「非保有国」です。この条約が発効してから51年、世界は核兵器廃絶に向かって進んだといえるでしょうか。唯一の戦争被爆国である日本がすべきことは、「核保有国と非保有国との橋渡し」などではなく、先頭に立って核の非人道性を世界に発信することだと私は思います。

「核兵器禁止条約」への批准を以て、「核兵器は違法」という規範を広げ、核兵器保有国が非人道的な核を持ち続けていることへの説明責任を求めるとともに、核軍縮に取り組まざるを得なくなる世界の世論作りに力を尽くすべきだと考えるのは、浅はかでしょうか。

サプリメントの空き容器
納得できないことに向き合うのはしんどいこと。
私はお気に入りのものを身の回りに置くことでそのエネルギーを得ています。
サプリメントの空き容器をマスキングテープで飾って、洗顔料入れに。

 

■もっと知りたい■

harumati

45歳~66歳までC型肝炎と共生。2016年奇蹟とも思える完治から、今度は脳出血に襲われ右半身麻痺の大きな後遺症が残り身体障害者に。同居する息子と夫に家事を任せての暮らしにピリオドを打ち、2021年11月「介護付き有料老人ホーム」に夫と入居。「小さな暮らし」で「豊かな生活」を創り出そうと模索中です。

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