親孝行は、できるときに、できることをするべき

35年ぶりの家族旅行で見られた、父の元気な姿

公開日:2020.03.27

旅行が大好きな蒲池さん。普段は、夫婦でキャンピングカーに乗って旅行に出かけていますが、今回は35年ぶりに実家の家族旅行に出掛けました。お母さんを見送り一人暮らしとなった父に、蒲池さんがした親孝行とは?

母を介護し見送った父

2019年1月に母を亡くして以来、父は一人で生活をしています。それも、子どもたちが住む関東から遠く離れた地で。加齢と共になくなってくる体力や健康の諸問題があったものの、母の喜ぶ顔に生きがいを見出していた父にとって、母を介護する時間は薬に匹敵するものでした。ですから、自分の体が少しずつ悪くなっていたことに気付けなかったのです。気力だけでの介護を乗り切っていたことに、改めて驚いている次第です。

父の病状が悪化?

父の存在、とにかく優しい人で
父は、とにかく優しい人です。小さい頃から一人の人間として接してくれていました。

母とはよく会話が弾んでいましたが、父とはほとんど話さなかったため、母が亡くなってからは何を話せばいいかわからないほどでした。でも今は電話で、1時間ぐらい​​話をしています

親元を独立してからは長女の私、長男、次男の年子3人は帰省日が重ならないようにしていましたが、父が元気なうちに皆一緒の時間をつくることに……。「もう一度津久見の街を見たい」と言う父の希望で、35年ぶりに家族旅行に行くことにしました。

静止した状態から体を動かすと、息が苦しくなるという父の症状が段々酷くなっていたことを心配していたものの、病院に行っても、改善されることはありませんでした。動くたびに30分ほどの息苦しさを強いられるのです。しかし旅行当日、1時間近くも苦しみ続ける姿を目の当たりにして、病院を受診することにしました。

心臓の方は現在飲んでいる薬で現状維持を保っているという診断にホッとし、息苦しさの方は以前服用していた喘息の薬で様子を見ることにしました。外出先で、また苦しくなるかもしれないという心配はありましたが、みんなと一緒に出掛けたいという父の気持ちを優先して、予定よりかなり遅れましたが出発することになったのです。
 

プチ家族旅行へ

幼い頃のお祭り場所だった神社
幼い頃のお祭り場所だった神社

行き先は父が長年働き、母との出会いがあった、実家から1時間ほどで行ける思い出一杯の地です。35年という歳月で、街並みはすっかり変わり果て、それぞれ自分の記憶と照らし合わせても、一致する場所はほとんどなくて、市役所や学校などの公共の施設くらいしかありませんでした。

明るいうちに思い出の場所を回りたかったのですが、父の大好きだった祖父のお墓参りをするのが精一杯でした。雨もかなり降ってきたので、ホテルにチェックインしました。

港の見えるホテルで

港の見えるホテルで
ホテルのそばの港で

埋立地にあるホテルの7階、窓一面に港の景色が広がります。陽が落ちて、波止場にとめられた船の明かりがチラチラと灯った素敵な夜景に目を奪われてしまいます。
「きれいやなー」
口が重い父ですが、やはり懐かしさと家族が揃っての旅行は心底嬉しかったのか、饒舌に母との思い出話をしていました。

久々のホテルでの食事も父には新鮮で、心配するほど箸が進んでいました。
 

翌日は思い出巡り

心配していた父の体調は、喘息の薬の効果があったのか、あまりの調子よさに驚きました。今後は、息苦しさから解放されると思うと、家族みんなで肩をなでおろしました。

保育園
保育園

安心したところで、3人が通った保育園、小中学校、高校、両親の念願のマイホーム跡地、よく遊んだ広場など思い出の場所に立ち寄りました。建物はきれいに整備されていたものの、自分たちも使った小中高のプールがそのまま存在していたことがうれしくて、懐かしさがこみ上げました。

すっかり綺麗に変わった小学校
すっかりきれいに変わった小学校
すっかり綺麗に変わった中学校
こちらもすっかりきれいに変わった中学校
高校
高校

私たちきょうだい3人の同時期の帰省は、とても大きな意味があったように思えます。父の息苦しさは軽減しましたし、本棚の奥から出てきた幾冊もの母の日記は心の安らぎに、そして家族旅行で父を楽しませることができました。

母から父への最高の恩返しと思えるような時間でした。やはり「できるときに、できることをするべき」を痛感しています。

「お母さん、旅行楽しかったね」

形見のネックレスを握りしめました。

蒲池 香寿代

大分県生まれ。小学校の時に恩師の先生との日記を機に何かしら記録することが習慣になっていました。結婚後は家計簿日記と運動不足解消の体操が日課になっています。元気なうちに念願のキャンピングカーで日本全国を横断するのが夢です。

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