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逆境からの人生復活物語『ひなた弁当』

逆境からの人生復活物語『ひなた弁当』

公開日:2025年02月19日

逆境からの人生復活物語『ひなた弁当』

山本甲士(やまもとこうし)さんの、ひなたシリーズ第一弾『ひなた弁当』をご紹介致します。勤めていた住宅販売会社の業績悪化で、出向命令という名のリストラにあった芦溝良郎の物語です。

理不尽なリストラ

真面目に働いてきた課長補佐の良郎は50歳を目前にして、上司に騙されて突然の退社。会社が紹介したのは人材派遣会社で、再就職先とは名ばかり、きつい仕事で持病の腰痛が悪化。それでも家族には会社に行っているふりをしながら、毎日スーツ姿で夕刻まで彷徨っていました。

途方にくれている主人公の姿に、息が詰まりそうになる序盤、もしもこんな目に合ったら、私は果たして耐えられるだろうかと思いました。

小さな出会い

そんな悲惨な状況に苦しんでいる主人公に、感情移入し胸が苦しくなりましたが、公園で目にしたどんぐりがヒントとなり、人生の逆転劇が始まります。

野草を摘んだり、川釣りをしたり、パッとしなかったサラリーマンが、実に楽しそうにイキイキとし始めるのです。サラリーマン生活が終わっても、人生が終わったわけではない。好きな事、得意な事をしているうちに、潜在能力が開花、物語が動き出します。

自分が拾い集めた野草や、釣った魚を料理し、家族に食べさせるシーンは、胸が熱くなりました。

ひなた弁当誕生

やがて自分で調達した野草や魚で、弁当屋を始めたいと思うようになります。

自然な食材を集めて作ったお弁当、食べてみたくなりました。近くならきっと、私はここの常連になったと思います。

「人生捨てたもんじゃない」と思わせてくれる本でした。

作者の山本甲士さん

1963年滋賀県大津市生まれ
1996年『ノーペイン、ノーゲイン』が第16回横溝正史ミステリ大賞優秀作受賞で作家デビュー
2004年山本ひろしの名で書いた『君だけの物語』で第13回小川未明文学賞優秀賞受賞
2005年『心理捜査』で第1回チュンソフト小説大賞金賞受賞

ひかりの魔女シリーズ

2014年『ひかりの魔女』
2019年『ひかりの魔女にゅうめんの巻』
2020年『光の魔女さっちゃんの巻』

作者の山本甲士さん
『がんこスーパー』→『ひなたストア』に改題 角川春樹事務所 
私が樹脂粘土で拵えた苺

ひなたシリーズ

2009年『ひなた弁当』
2018年『がんこスーパー』→2020年『ひなたストア』に改題
2022年『民宿ひなた屋』
2024年『ひなた商店街』

その他著書多数。

■もっと知りたい■

さいとうひろこ
さいとうひろこ

趣味は落語鑑賞・読書・刺しゅう・気功・ロングブレス・テレビ体操。健康は食事からがモットーで、AGEフードコーディネーターと薬膳コーディネーターの資格を取得。人生健康サロンとヘルスアカデミーのメンバーとなり現在も学んでいます。人生100年時代を健康に過ごす方法と読書や落語の楽しみ方をご案内します。