北海道・帯広を拓く~六花亭の銘菓~
2022.09.15今年も釧路で
この数年、夏の暑さに辟易として夫婦二人で釧路で20日ほど過ごすことにしています(釧路は気温が一番低い街です)。
ホテルの廊下を挟んで向かい合わせに、シングルを別々に予約して滞在します。これは夫婦と言えども快適に過ごすために、個人の時間を尊重する大切な要素です。
今年(2023年)で5年になるでしょうか、仕事の夏休みを待って釧路に出立します。
釧路に到着するとホテルの領収書を持ち、まずは市役所の2階に。そこで、滞在型市民ステイの手続きをします。博物館の無料入館や、図書館利用ができるカードを発行してもらえます。
特別に観光名所を見て歩くわけではなく、釧路の街に「住むように暮らす」のが目的です。
毎年、「カフェ巡りをする」「おいしい寿司を食べる」「おいしいイタリアンを探す」などの課題を設定。
晴れた日には、レンタサイクルで街をめぐります。雨の日には、図書館でDVDをみたり読書タイムで過ごします。お昼には、会社員や市役所職員が通うお蕎麦屋や食堂レストランなどでランチにします。
当然行動も夫婦別々ですから、時折同じ店やカフェで顔を合わすこともあり「おやまあ、お久しぶりです」なんて相席になります。
出会いは大切
何度も釧路に通っていると、何度か顔を合わせる方もいます。同じ温泉で会話をする人、マッサージで知り合った方、その都度いろいろな人生ドラマを垣間見せていただくことになります。
今年は、ショッピングモールでお会いした方です。買い物で広いショッピングモール内を歩くのに疲れた私は、入り口近くのベンチに座り込んでいました。挙句に買い物をしたおせんべいなどを取り出して、ぱりぱり食べていました。
食べ終えた頃、隣の席に座っていた女性が声をかけてくれました。「広い店内だと疲れますよね」と。年齢は80歳だと言います。
あれこれ天候の話から、息子夫婦との生活、仕事の話をし始めてくれて……。私には興味深い内容で、思わず聞き入ってしまいました。
小さな漁村で生活している、今も息子の昆布漁を手伝っていること。以前はご主人と一緒に船に乗り、昆布漁を手伝っていたことなどを話してくださいます。
昆布漁はまだ朝が明けないうちに船を出し、午前中に浜に戻ってきます。その昆布を浜辺に全員総出で並べて干し上げること。天気の良い日にしかできない仕事だと言います。
干し上げた昆布は作業小屋で同じ寸法に裁断し、そのあと5段階の等級別に目視検査をしながら分類していくこと。しかし80歳になり視力が弱ってきているので、息子さんに等級分類には関わらなくてよいと言われてしまったと、少し残念そうに話しています。
天気次第で少し乾燥が足りない時には、小屋に設置してある乾燥機でしっかり乾燥させるんだとか。
天気次第の仕事で毎日はできないそうですが、平均週に3回ほどは昆布干しや裁断、梱包の仕事をしているそうです。
なんと逞しくかっこいい人でしょう。話を聞いていて自然と共にある毎日の時間の流れ方、その人生に感動してしまいます。
路線バスも通らない、小売店もない小さい漁師の住む場所だと言います。
整形外科に時折通院するために、コミュニティバスを予約しておくと100円で利用できるとのことです。この日も、帰りに来るコミュニティバスが到着する2時過ぎまでベンチで待っているところでした。
若い人に通院のたびに車で送ってもらうなど頼みたいのだが、それぞれに仕事も都合もあるので車で送ってもらうことができないということです。
別れ際に、多めに買ったおせんべいを手渡して、「どうぞお元気で活躍し続けてください」と、さらなる幸せな未来を祈りました。
1時間ほどの時間だったでしょうか。ほんの少しの袖すり合う関係でさえ、素敵な人生が見え隠れする北の海に住むかっこいい生き方を聞くことができました。また一人、名前は知らないのですが尊敬できる人生の先輩に出会えました。
これだから、じっくり住むように暮らす釧路の夏はやめられないのです。
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