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夫の陶芸人生
夫は私と知り合う前から陶芸を習っていました。若い頃、多分20歳くらいから会社を定年退職するまで、何年も陶芸家の教室に通い、作陶を続けていました。窯を持つことはそれなりに大変なことのようで、夫はかねてから「定年したら窯を持つ」と言っていました。
夫は60歳で会社を定年し、隣接する離れに作陶場を改築し、窯を持ちました。がっしりした机(作業台)を特注で作り、道具類を充実させました。
窯にはその窯の持つ癖と言うものがあり、それをつかむまでは何度も何度も温度調節、窯詰の場所を把握し、釉薬の具合を確かめます。
同じようなぐい飲みを粘土を替えながら何百と作り、温度、釉、時間の実験を繰り返しデータで残します。一年ほど焼き続けて、初めて窯の癖をつかむようです。精緻な作業、正確な記録、何十も同じぐい飲みで試し焼きをし、色見本を作り、データからその窯の持つ癖を把握するのだそうです。
根気のない私には、とても真似ができることではありません。
陶芸場を持ってから12年。体の不調なども乗り越えながら、今では生徒さんたち10数人に囲まれて、楽しい陶芸ライフを満喫している様子です。
時々、入門させて~
時折、私は年に数回ですが、粘土を触ってみたくなります。
「陶芸やらせて~」と言うと「なるべく助け舟を出さずにいるから、自分で最後まで作れよ」と粘土を渡してくれます。
中心を決めて台座を削るなどなかなか素人にはできずに、夫に「だめだぁ~、何とかして」と手を添えてもらいながら仕上げていきます。
今回は、夫の作陶したカップに兎の絵付けをさせてもらいました。なんだか、見様見真似ですが合作みたいな気分になり、一人でニヤニヤしています。窯出しが楽しみです。
1240度で48時間焼き続け、窯の温度が下がった朝に窯出しをします。
1つずつ並べていくとまだ余熱で温かい器から「き~ん、きぃ~ん」と焼きしまっていく音がします。いくつもの器から、歌うように音がします。その一瞬がたまらなく心が晴れ晴れするようで、傍で見ている何もわからない私にもその高揚感は伝わってきます。
合作のカップたち
夫の作ったカップの釉薬のかからない素焼きの部分に、兎の絵を描きました。筆を持ちなれない私は手が震えます。でも夫は「いいぞ、それでいいんだ」と声をかけてくれるのでついつい調子に乗って、描きなれない上絵付をすることができました。
こちらも、1240度で48時間、窯で焼き続けます。その後、自然に窯の温度が下がるのを待って、いよいよ窯出しです。この瞬間がたまらなくワクワクします。
何となく、「まあこんなもんか」と思えるカップが出来上がりました。
普段の生活の中で、手作りの器が食卓にある毎日はなかなか楽しいものです。この先も、夫と時々陶芸作りを続けたいと思います。
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