遺言・お金・家…もめない!「相続」の基本#3

「遺言」は遺された人の“幸せ”のために作るもの

「遺言」は遺された人の“幸せ”のために作るもの

公開日:2023年08月03日

「遺言」は遺された人の“幸せ”のために作るもの

相続にまつわる困り事について、知っておきたい知識と今からできる準備をお金と相続問題の専門家に聞く3回目です。今回は、相続の重要な鍵となる「遺言」について教えてもらいました。

教えてくれたのは、お金と相続問題の2人のプロ!

平田久美子(ひらた・くみこ)さん

平田久美子税理士事務所代表、税理士、行政書士、CFP、1級FP技能士。相続税の申告や、相談に多数の実績がある。著書に『老老相続 弁護士と税理士が伝えたい法務と税務』(清文社刊)、『相続税相談所』(中央経済社刊)など。

野谷邦宏(のや・くにひろ)さん

相続士・遺品整理士。一般社団法人しあわせほうむネットワーク代表・司法書士法人リーガルサービス代表。司法書士、行政書士、1級FP技能士。著書に『まるわかり! もしもの時の手続き・相続 完全ガイド』(クロスメディア・パブリッシング〈インプレス〉刊)など。

まずは、法定相続人と順位を知っておきましょう

相続人とは、実際に財産を相続する人のことを指し、民法の規定により相続する人のことを「法定相続人」といいます。法定相続人には次のような順序があります。

法定相続人と順位を知っておきましょう

法定相続人とその順位

 

配偶者は常に相続人
第一順位 子ども
第二順位 故人の父・母
第三順位 兄弟・姉妹

配偶者は常に相続人で、子がいる場合の法定相続分は、配偶者が1/2、子全員で1/2となります。子がいない場合は、親・祖父母全員で1/3、配偶者が2/3になります。子・親・祖父母がいない場合は、兄弟・姉妹が1/4、配偶者が3/4となります。

遺言は大きく2種類!その違いとは?

遺言には大きく「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類があり、2020年の7月から法務局において「自筆証書遺言書保管制度」が始まりました。

「自筆の場合、この世に一つしかありませんから、紛失したり、自分に不都合な遺言を発見した人に処分されたりしたら終わりです。それを防ぐための制度です」と話すのは、相続士・遺品整理士の野谷邦宏さん。

一方、公正証書遺言は、公証人が本人から聞き取って作成し、原本は公証役場にデータとして保管され、写しを持っておくことができます。

野谷さんも税理士の平田久美子さんも信頼性と安全性から、公正証書遺言をすすめます。

公正証書遺言と自筆証書遺言の違い

<公正証書遺言と自筆証書遺言の違い>

作成するなら公正証書遺言がおすすめ!

●書く人、書く場所
公証役場で公証人が本人から聞き取って作成
(遺言と無関係な証人が2人以上必要)

●保管
本人が写しを保管
公証役場は原本をデータ管理

●費用
手数料
(相続・遺贈を受ける1人につき、財産1000万円超~3000万円以下で2万3000円など、財産価額に合わせて規定)

●法的チェック
あり

●家裁の検認
不要

作成するなら公正証書遺言がおすすめ!

作成時に注意が必要!自筆証書遺言

●書く人、書く場所
自宅などで本人が自著
(財産目録に限り、パソコンなどで作成、通帳のコピーなどでもOK)

●保管
自宅の場合:実印などの保管場所、金庫など
法務局の場合:「自筆証書遺言書保管制度」に従い、本人が封をせずに法務局に持参

●費用
自宅の場合:無料
法務局の場合:3900円

●法的チェック
自宅の場合:なし
法務局の場合:なし(方式の適合性はチェック)

●家裁の検認
自宅の場合:必要
法務局の場合:不要

自筆証書遺言の場合、正しく記載されていないと遺言書として認められないことも。費用はかかりますが、公正証書遺言は法的に安心です。違いを把握して遺言書を残すようにしましょう。

不動産ばかりのときに役立つ配偶者居住権

不動産ばかりのときに役立つ配偶者居住権

年金生活で夫が亡くなり、相続財産の大部分が不動産で預金が少ないと、その後の生活に不安を感じる人も多いでしょう。そうした場合、遺言で「配偶者居住権」(令和2年以降に発生した相続から新たに認められた権利)を設定するといいと野谷さん。

「自宅の土地建物の所有権は子に与え、配偶者は居住権を持つことで、住むところが保証されます。また不動産の所有権を子に与えている分、現金を配偶者に多く分配することが可能になります」(野谷さん)

「配偶者居住権は、うまく使えば一次と二次を合わせた相続税が軽減される可能性も。ただし老人ホームに入居するなどして権利を放棄すると課税リスクがあるので慎重に」(平田さん)

認知症の場合、遺言が認められないので注意

認知症の場合、遺言が認められないので注意

注意したいのは、認知症で遺言の有効性が争いになるケースです。やはり元気なうちに、家族で相談して遺言を残し、以下に挙げるような制度を検討して備えることが本人も遺された人にも大切といえます。

家族が認知症になってしまったときに備える制度と法律

認知症などで、判断能力が不十分になってしまった場合などに備える制度と法律があります。

【成年後見制度】
裁判所が選ぶのが法定後見、自ら選んだ人と契約するのが任意後見。家族もなれますが、専門家でないと手続きが大変になることも。

【家族信託】
生前に財産の管理を特定の家族に委託。自宅の所有権は子に引き渡し、自身の死後も配偶者の存命中は自宅を管理してもらうなどを取り決めます。

【死後事務委任契約】
生前に死後に行うべきことを、誰かに委託する契約のこと。葬儀・埋葬・供養の方法や遺産以外の思い出の品の整理などを頼むことにも有効です。


次回は、相続でもめる原因になりやすい、遺された財産=お金について詳しく見ていきます。

※この記事は雑誌「ハルメク」2021年8月号を再編集、掲載しています。

取材・文=原田浩二(編集部)


■遺言・お金・家…もめない!「相続」の基本■
【第1回】相続=他人事じゃない!財産が少ない人こそ準備が大切
【第2回】知っておきたい「相続の流れ」と必要な手続き
【第3回】「遺言」は遺された人の“幸せ”のために作るもの
【第4回】相続=争族にしない!遺る「お金」の把握が大事!
【第5回】売れる?売れない?どうする「家」問題

雑誌「ハルメク」
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