019:中村なな子さん(57歳)
55歳で臨床美術士に!人生は「楽しい」が強さになる、と子どもたちに伝えたい
55歳で臨床美術士に!人生は「楽しい」が強さになる、と子どもたちに伝えたい
更新日:2025年10月26日
公開日:2025年09月17日
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あなたの“リスタートのヒント”が、きっと見つかるはず。
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中村なな子さんのリスタート・ストーリー
大学卒業後はマスコミ関係の仕事に就くが、体調を崩して退職し、専業主婦になった中村さん。3人のお子さんを育てるなかで、子どもにかかわる仕事がしたいと、一念発起して保育士の資格を取得。
保育園でのパート勤務や学校のボランティア、幼児教室勤務など、たくさんの子どもたちにかかわる中で、発達障害の子どもや、個性のある子どもの存在が気になるように。50代で「臨床美術」に出合い、臨床美術士の資格を取得。
現在は週2日、発達障害児の放課後デイサービスの仕事をしながら、臨床美術士として、地域の子どもたちにアートを通して自分を自由に表現する楽しさを伝えている。
逗子の教室「アトリエ12」(@room12zushi)
鎌倉の教室「ラファエロ会」(@nanako_nakamura7)
生きづらい今を生きる子どもたちに、アートで手助けを!

――臨床美術との出合いは?
かなり話がさかのぼりますけど、いいですか?(笑) 実は私、今では考えられないんですけど、子どもが嫌いだったんです。自分とは縁のないものだと思ってて。
ところが、マスコミの仕事を辞めた後、子育てをしているうちに、子どもの面白さに気が付いて。何か仕事をするなら子どもにかかわる仕事がいいと思い、35歳のときに、保育士の資格を取りました。3年かかりましたけど(笑)。
いざ働こうと思ったら3人目を妊娠。その子が幼稚園に入った頃、ようやく保育園でお手伝いできるように。保育園での仕事は体力勝負なので大変でしたが、5年働いた後、その経験を生かして幼児教室で働いていました。
子どもと触れ合ううちに発達障害の子が気になって、市民講座で勉強。近所の小学校で、さまざまなことで困っている子たちのお手伝いも始めました。そこで小学校の先生たちが受けている研修に何気なく申し込んだんです。その中の一つが「臨床美術」でした。今から2年ほど前のことです。
――臨床美術とはどんなものなのですか?
臨床美術は、絵を通したコミュニケーションを重視したアートプログラムです。
もともとは認知症の症状を改善するために体系化されたもので、絵やオブジェなどの作品を楽しみながら作ることで脳を活性化させるというものでした。
自由に絵を描くだけでなく、独自のプログラムに沿って、五感をフルに使って楽しみます。上手・下手は関係ありませんし、絵から分析することもありません。ただ、楽しむんです。
今では、誰がやってもプラスになることがわかってきて、認知症の方だけでなく、子どもたちにも向いているということで、幅広く活用されています。
教室では「臨床美術士」とのコミュニケーションの中で、自己肯定感が高まったり、感性が開かれたりして心が解放され、前向きになっていきます。
初めて研修で体験したとき、とにかく楽しくて! それまでの人生で絵なんてまともに描いたこともないのに、すぐに資格取得講座に申し込み、臨床美術士の資格を取りました。
――美術の経験や才能がなくても臨床美術士になれますか?
私自身、美大出身でもなく、絵を習ったこともありません。
うまくなるためのアートではないのと、プログラムが本当に良くできているので、誰でもがんばらなくても、その人らしい作品ができるんです。
そもそも、「教える」というより「一緒にやる」という感じなので、「こうしたほうがいい」などと言うこともありません。
例えば赤いリンゴを青く描いたとしても、「青を感じたんだね」と全肯定します。人に認められることって、誰でもうれしいことですよね。評価されることなく、丸ごと受け入れられるから、子どもは安心して笑顔になれるんです。
作品を作ったら最後に、みんなで鑑賞会をします。その作品から何を感じたかを話したりするのも、楽しいですね。
55歳で資格取得!稼げるまでの道のりは…

――資格取得には、実際にどんなことを学ぶのですか?
臨床美術士の資格には5級から1級まであるのですが、5級ではさまざまな美術プログラムを自分自身で実践し、基礎を学びます。絵や立体でさまざまな作品を作り、臨床美術士とのやりとりを体験できます。
さらに4級になると、美術プログラムを通して、いろいろな画材の使い方や表現方法などをより深く学んでいきます。後半に実習があり、実際の教室でのセッションの進め方や参加者への対応などを学べます。
受講生は50代、60代も多くて、私のように臨床美術を教えたいと思っている人もいますし、認知症の親御さんのために勉強されている方もいましたね。
4級の最終試験の一つに、家族と一緒に作品を作るというのがあって、夫に協力してもらったんです。体育会系で普段、絵なんて全然関わりのない夫が「これ、面白いな」と言ったのには驚きました(笑)
――臨床美術士の資格取得にかかった費用は?
私はコロナ禍にオンライン受講で5級を取得、その後、指定校で養成講座を受講して4級を取得しました。
受講期間は2~3か月程度で、費用は...




