美しい大和言葉の使い方

2023年08月03日

言葉の力、再発見「大和言葉」・2

美しい大和言葉の使い方!4つのコツと言い換え例文

日本の風土で生まれ、育まれてきた「大和言葉(やまとことば)」。『日本の大和言葉を美しく話す』(東邦出版刊)の著者で、文筆家の高橋こうじさんに大和言葉の使い方のコツと、具体的な言い換え方を教えてもらいました。

言葉美人になれる「大和言葉の使い方」4つのコツ

大和言葉の使い方4つのコツ

日本の風土で生まれ、育まれてきた「大和言葉」。大和言葉の上手な使い手になるには、言葉の知識だけではなく使い方のコツを得ることが大事。ここで紹介する4つのポイントを押さえれば、あなたもみんなが一目置く言葉美人になれますよ。

使い方のコツ1:使い過ぎは禁物!連続使用は避けること

「このうえなく」「こよなく」といった大和言葉は、使い手に上品な香りをまとわせる一方で、一度の会話に何度も続けて出てくると鼻についてしまうもの。「とても」など普段の言葉も織り込んで、節度ある使い方を。

使い方のコツ2:相手との関係を考えて使う言葉を選ぶ

大和言葉なら何でもいい、というわけでもありません。例えば親友に対してなら「今日は楽しゅうございました」と言うより「今日は楽しいひとときをありがとう」とした方がより相手との距離にふさわしい言葉となります。 

使い方のコツ3:気恥ずかしいならまずは「書き言葉」から

手紙やメールなど「書き言葉」でも大和言葉の魅力は十分に生かせます。「日ましに春めくこの頃」「お心にかけていただき」「どうぞお酌み取りください」「お身体をお厭(いと)いください」など。心のこもった文面として相手に伝わります。

使い方のコツ4:繰り返す表現には「重ね重ね」をつけて

「ありがとうございます」や「感謝いたします」のような言葉は、文中で繰り返し使うことがあります。単調な繰り返しが気になるようなら2回目以降「重ね重ね」「幾重にも」「あらためて」といった大和言葉をつけると落ち着きがよくなります。

続いては、場面ごとに高橋さんがおすすめする大和言葉を紹介します。
 

日常生活で実践!大和言葉の使い方(来客のおもてなし)

大和言葉の使い方(来客のおもてなし)

よくある表現:ようこそいらっしゃいました。

大和言葉:ようこそお運びくださいました。
「お運び」は足を運ぶことを意味します。つまり、「お運び」が入ることで来ていただいたことだけではなく、そこに費やした時間や労力にも感謝した歓迎の挨拶となります。

よくある表現:ほんの少しですが。

大和言葉:ほんのお口汚しですが。
「お口汚し」を「まずいもの」と解釈する人も増えているようですが、それは間違い。口を汚すだけで終わってしまうだけのわずかな量、という量についての謙遜です。

よくある表現:ご遠慮なく。

大和言葉:お心置きなく。
「ご遠慮なく」は使いようではお客さんに対し「遠慮は美徳ですが、あなたはどうぞ」というようにも聞こえます。「心置き」は美徳の印象を帯びないので、嫌味に響きません。

日常生活で実践!大和言葉の使い方(お礼のお返し・謙遜)

大和言葉の使い方(お礼のお返し・謙遜)

よくある表現:どういたしまして。

大和言葉:行き届きませんで。
よくある表現だと「はい、やってあげました」というニュアンスも含んだ表現になってしまいますが、この言い方ならば、奥ゆかしさがプラスされます。

よくある表現:いえいえ、下手ですよ。

大和言葉:いえ、ほんの手慰みで。
謙遜は大事ですが、せっかく褒めてもらった評価を「下手です」と落とすのは、賢明な対応とは言えません。洗練された大和言葉で返せば、技量の高さを想像させる返答に。

よくある表現:いえ、とんでもない。

大和言葉:お買い被りを。
過度に褒められたときにはお礼を言うとうぬぼれに聞こえ、かといって否定し続けるのも相手の気分を害する可能性が。そんな場面で重宝する言葉です。

日常生活で実践!大和言葉の使い方(断りたいとき)

大和言葉の使い方(断りたいとき)

よくある表現:外せない用事があるので。

大和言葉:よんどころない事情で。
いつもの表現だと、相手より用事を優先している感じがありますが、「よんどころない」とすると「あなたと約束したいが、どうしてもやむを得ない事情がある」という印象に。

よくある表現:私には無理です。

大和言葉:私には荷が勝ちます。
頼まれた役割が自分には重すぎるときに使う表現。いつもの表現だと謙遜と捉えられる可能性もありますが、「荷が勝つ」となると、負担が重すぎることを強く伝えられます。

よくある表現:何かと忙しく、伺えないままでいてごめんなさい。

大和言葉:敷居が高く、伺えないままでいてごめんなさい。
「敷居が高い」は「高級すぎて入りづらい」というときに使われがちですが、本来はお詫びや御礼をすべきなのにしておらず、それが心苦しくて訪れられないことを意味します。

いかがでしょうか? 使い慣れるまでは少しコツが必要ですが、日本人によって代々受け継がれてきた豊かな表現力と奥ゆかしさを身に着ければ、人間関係も円滑になるはず。大和言葉の使い方を学んで、言葉美人を目指しましょう!

次回は、学んで使って品格アップ!大和言葉クイズを紹介します。

■教えてくれた人

高橋こうじさん 

たかはし・こうじ 文筆家。1961(昭和36)年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒。大学在学中からテレビ番組の企画に携わる。「言葉とは何か」をテーマにしたシナリオ「姉妹」では、第10回読売テレビゴールデンシナリオ賞で優秀賞受賞。言葉と会話をめぐる人間心理についての研究に力を注いでおり、『日本の大和言葉を美しく話す』(東邦出版刊)は累計30万部のヒットとなっている。

取材・文=小林美香(ハルメク編集部)

※この記事は雑誌「いきいき(現・ハルメク)」2015年7月号に掲載したものを再編集しています。
 

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みんなの コメント
  1. 大和言葉の響きは優しく、心にすーっと入り込むような気がします。そして相手の気持ちに寄り添って、自分を謙遜しながら誉め言葉を受け入れる便利な言葉があります。自分より年上の方とのお付き合いがある中で、少しずつ言葉数を増やしていきたいと思いました。

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