【体験談】50代移住がくれた人生の“意外なギフト”

失うと思っていたものが、形を変えて戻ってきた。50代の高知移住

失うと思っていたものが、形を変えて戻ってきた。50代の高知移住

更新日:2026年01月04日

公開日:2025年12月23日

失うと思っていたものが、形を変えて戻ってきた。50代の高知移住

50代ライターが突然の地方移住!孤独だった高知生活を大きく変えたのは、市民ミュージカルとの出合いでした。人見知りからの一歩、年齢を超えた仲間との時間、そして仕事や暮らしとの新しい距離感。50代の今だからこそ実感できた“人生のつながり”とは?

どんぶらこどんぶらこと、流れるがままに——人生10回目の引っ越しで、高知へ来て早4年。

そもそも、高知移住は“想定外”のスタートでした。知人も仕事もない場所での暮らしは、不安だらけ。

仕事がなくなるかもしれない——そんな気持ちから始まった話は【前編】でお伝えしました。

市民ミュージカルで得た年齢を超えた友情の絆

高知へ移住後、すっかり家にこもりがちだった私を見かねてか、相方が持ってきたのが「市民ミュージカルのオーディションワークショップ」の情報でした。

詳細は、よくわからなかったけど、重い腰を上げ「試しに行ってみるか」という軽いノリで参加。でも、このイベントが、私の“ぼっち高知ライフ”を一気に変えることに! 

人見知りの私が、知らない輪に足を踏み入れた日

会場へ行ってみると、どうやらみなさん、顔見知り同士の方も多かったようで、ニコニコしながら笑顔で交流されています。

私は、借りてきた猫のように隅にじっと座っていたら、同じくらいの年齢の方が「初めてですか?私も初めてです」と声をかけてくれたんです。ほっとしたのもつかの間、ワークショップがスタート。

ずっと“見る側”だった私が、舞台に立つことになるなんて

ずっと“見る側”だった私が、舞台に立つことになるなんて
ミュージカルにてバオバブの妹役を熱演(撮影/門田幹也)

課題は、ダンスパフォーマンスと、課題曲「オリビアを聴きながら」の歌唱で、ガチガチに緊張しながら臨みました。

演技&ダンス経験ゼロ、というか、そもそもそういう身体能力とセンスがダブルゼロ(苦笑)。オーディションも初だった私は、自己アピールも空回り。これは落ちたと思い込んでいたのですが、その日、この市民ミュージカルはもともと“全員参加”で、オーディションは、配役を決めるためのものだったと知り、のけぞりました(笑)。

これまで20年以上、俳優のインタビューをしてきた私が、まさか“演者”の側に立つなんて恐れ多い!こうして人生初の市民ミュージカル出演が決まり、週2~3回の練習がスタート。

役者、スタッフ全員が同じ方向を向き、練習を重ねていきました。そして半年後には、役者デビューです!

タイトルは、「らんまん」で知られる牧野富太郎博士由来の「Gift of Life 〜にぎやかな植物園〜」。私は、植物園に生息するバオバフ3姉妹の妹役で、意外とセリフもありました。

年齢は小学生から80代の方まで。バリアフリーの舞台で、目の見えないおじいちゃんや、聴覚障がいのある参加者もいる、役者だけで総勢約90名という大所帯のチームでした。

舞台が終わった後、涙が止まらなかった理由

舞台が終わった後、涙が止まらなかった理由
(撮影/門田幹也)

練習を始めてみると、仲間たちと共に1本の舞台を作り上げていくことが、こんなに楽しいのか!と、目からウロコでした。

そしていよいよ本番!す、すごい高揚感。た、楽しすぎる~。舞台の上でアドレナリン噴出! 終了後、私は泣いていました……。

ライブならではの生のリアクションを受ける面白さ、何よりも年齢や環境を超え、いろいろなハードルを共に乗り越えてきた仲間たちとの共演に、心を揺さぶられたんです。

それは、これまで味わったことのない至福の体験で、舞台のタイトル通り、私にとっては人生における“ギフト”となりました。

気付けば、暮らしの楽しみが少しずつ増えていた

気付けば、暮らしの楽しみが少しずつ増えていた
高知県佐川町の司牡丹酒造を見学

人生を豊かに彩ってくれるのは、人と人とのつながりです。あのまま家にこもっていたら、何も生まれなかったし、今の私はありません。

市民ミュージカルがきっかけで、かけがえのない友人ができ、さらに歌唱指導をしてもらった先生のゴスペルグループにも入り、今では週1ペースで歌を楽しんでいます。

また、ミュージカル仲間の“まぶだち”とは畑で野菜作りにもトライ。無農薬で作った野菜のなんとワイルドで滋味深いこと。ここでも「Gift of Life」を体感しています。

さらに「土佐酒アドバイザー」の資格も取得し、呑み友達の輪も広がりました。今では、土佐酒の知識をもっと深めようと、前のめりで日本酒を勉強(堪能)しております(笑)。

以前は、仕事ざんまいで、趣味にそこまで時間を費やす余裕はありませんでしたが、高知へ来て生活が一変。もちろん映画は、仕事兼趣味でもありますが、夢中になれるものが増えたことで、仕事と遊びのメリハリがつくようになりました。

そして私は、いろんな“チーム”に入って気付きました。高知の人たちの魅力は、「チームプレイ」がとても得意なこと。老若男女が参加する「よさこい」が、今や日本だけでなく海外からも踊り子が集まる一大イベントに発展したのは、そんな高知県民の気質があるからだと感じました。

「もう無理かも」と思っていた仕事は、形を変えて続いていた

「もう無理かも」と思っていた仕事は、形を変えて続いていた
上京して「スター・ウォーズ」のイベントへ

半世紀以上生きてくると、いろんな縁がつながり、あとから意味を持ってくる出来事があると実感します。

コロナが落ち着き、オンライン取材は少なくなりましたが、個人的にはリアルな対面取材に戻って良かったとも思っています。私にとってインタビュー取材はライフワークなので、今は東京国際映画祭や東京ガールズコレクションなど、まとめて仕事をいただける際に上京することに。飛行機代や宿代はかなりかかるので、バーゲンで早めに購入するクセがつきました。

2025年は、高知出身の漫画家・やなせたかしさん夫妻をフィーチャーしたNHK連続テレビ小説「あんぱん」も放送され、高知開催のイベントを取材することもできました。今の私は高知県民なので、再び高知に熱い視線が向けられた点もうれしい限り。

また、「あんぱん」といえば、浅田美代子さんがヒロインの祖母役で出演されていましたが、ちょうど移住後、ハルメクにてウェブ映画「ミライヘキミト。」のオンラインインタビューでお世話になりました。

そのとき、浅田さんが口にされたのが、「年を取ることを楽しみなさい」という樹木希林さんからの教え。この言葉は、今50代後半を生きる私の心にも刻まれました。

50代からの移住・環境チェンジを楽しむヒント

何が起きても、面白がる。それが、今の私の一番のライフハックです。

  • 人間関係は「自分から飛び込む場」を持つことが大切
  • 年齢やキャリアが関係ないコミュニティが、人生を広げる
  • 趣味は“遊び”ではなく、生活の軸になる
  • 50代は、これまでの人生が思いがけない形でつながり直す年代

今後も決して自分自身を閉じることなく、いろいろなものをオープンに受け入れていきたい。

きっとこれからも、思いがけない伏線回収が待っている。そう思いながら、何事も面白がって生きていきたいです。

 

山崎 伸子
山崎 伸子

やまざき・のぶこ 映画とお酒をこよなく愛するライター&編集者、時々カメラマン。趣味は食べ歩き。名古屋でエリア情報誌の編集長を務めた後、上京してフリーに。映画&ドラマのインタビューやコラム、記者会見の記事などを執筆。好きな映画と座右の銘は『ライフ・イズ・ビューティフル』