
今、レンズを薄いカラーにするのがおしゃれ
50代女性の紫外線対策は、メガネのレンズを「カラーレンズ」にするのがおすすめ!おしゃれ&機能的に、カラーレンズを選ぶコツを紹介します。
公開日:2025年05月19日
先輩の生き方に学ぶ
2024年5月の誕生日で満93歳になった樋口恵子さん。超高齢期のリアルな日常を実況中継するエッセーを続々と刊行して話題になっています。「70代はまだまだ血気盛ん、80代半ばからヨタヨタヘロヘロとよろめいてきて、90代は満身創痍」と明るく笑う樋口さんに胸のうちを伺いました。
ひぐち・けいこ。1932(昭和7)年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業後、時事通信社、学習研究社、キヤノン株式会社を経て評論活動に入る。NPO法人「高齢社会をよくする女性の会」名誉理事長、東京家政大学名誉教授。『91歳、ヨタヘロ怪走中!』(婦人之友社刊)他、著書多数。
2024年の誕生日で92歳になりました。まさかこんなに長生きするなんて、自分でもびっくりすると同時に、じわじわと喜びが込み上げてきます。この年まで生きられたのは、感謝すべきこと、ありがたいことだと思います。
一方で、長生きするのは大変だ、というのが正直な感想です。体のあちこちに不調が起きて、できないことが増え、何かと不自由が多くなっています。
何より一番つらいのは、大切な人との別れですね。ここ数年で、親しい友達がどかっと亡くなりました。それは、やっぱり悲しいですよ。だけど、この悲しみは「長生きする側が払う税金」だと、私は考えるようにしているんです。長く生きていれば、いいことも悪いこともあって、別れが増えるのは仕方のないことでしょう。
私もくよくよしますが、嘆いてばかりはいられない。これは長生きの税金だとあきらめて、毎日を過ごしていれば、また楽しいことや幸せを感じる瞬間が出てきます。老いることは大変だけど、でも生きていることはやっぱり面白い! それが92歳の実感です。
もう一つ、この年になってあらためて実感しているのは、「長生きはお金がかかる」ということです。
私は今、両耳に補聴器を入れておりまして、おかげさまでみなさんの声を問題なく聞き取れますが、片耳のお値段は20万円。最新の充電式の補聴器で、結構な金額なので、購入するときには、やはり抵抗がありましたね。
ただ、あんまり安いものだと不便な場合もあるようで、5万円の補聴器を使っている友人は「雑音がうるさくて、とても着けていられない」と嘆いていました。また、別の友人は「片耳で40万円した」と言っていて、たかが補聴器、されど補聴器と、びっくりしました。
長く生きていると、他にも入れ歯だ、眼鏡だと、何かと物入りになると聞きます。さらに言えば、私たちはこれから先の高齢期に、心身の状態に応じて、大人用パッドや介護用ベッド、車いすなど、さまざまな商品を使う消費者になる場面が増えるわけです。
私はこれまで「人生100年、生涯現役、一有権者」と訴えてきましたが、近頃、声を大にして言いたいのは「生涯現役、一消費者」。私たちはいくつになろうと、どのような状態になろうと、最後までものを消費して生きていくのです。
だから、遠慮して小さくなる必要はありません。生涯一消費者として、長く生きてきた人間として気付いたことを、「ここが不便だ」「もっと工夫してほしい」と、ぜひ遠慮なく発言していってほしいと思います。それは立派な社会参加です。
商品を開発する側も、そうした声にちゃんと耳を傾けて、高齢者にとって使いやすいものができれば、それは障害のある人にとっても、これから年を取る多くの人たちにとっても使いやすいものとなり、世の中を本当に豊かにしていくと思うのです。
長生きするにはお金がかかる一方で、私が常々言ってきたように、日本では「貧乏ばあさん」が増えているという現実があります。
女性の場合、働いていたとしても非正規雇用だったり、出産や育児、夫の転勤、介護で離職したりするケースが多く、年金を十分もらえない人が少なくありません。夫が勤め人だった人は、一人になっても遺族厚生年金が支給されますが、おひとりさまやシングルマザーにはそうした恩恵もなく、一気に「貧乏ばあさん」への現実味が増します。
ここにきて日本の勤労社会における女性差別のつけが回ってきているといえるでしょう。長生きはめでたいことですが、この問題が最後に残ったことは大変残念に思っています。
問題の解決に向けて、まさに今再評価されるべきなのが憲法27条です。振り返れば、私が15歳になった1947年、日本国憲法が施行されたとき、同級生の間では、平和憲法9条や、法の下の平等を謳う14条が人気でしたが、私が一番ときめいたのは27条「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」でした。
「すべて国民」には、男も女も年寄りもみんな含まれます。どんな人も働くことによって経済的自立、社会参加、自己実現を叶えることができる、というメッセージに私は感動したのです。今こそここに「高齢女性」を入れて、「貧乏ばあさん」を防ぐ道筋をつくることが大事だと思います。
現実的な話が続いたので、ここで最近の楽しみについてお話ししましょう。この暑さでお出掛けもままならず(編集部注・取材でご自宅を訪ねたのは2024年7月末)、家の中の楽しみといえば、寝ること、食べること、そして読書です。
私はもともと食いしん坊ですが、一時期は胃腸を悪くして食欲が出ず、がっくりきました。今は回復して塩辛いものも甘いものも気にせず食べています。やっぱり食い意地は、最後まで手放してはいけない欲望だと思いますね。
少々お行儀が悪いですが、ベッドで寝っ転がって本を読むのも至福の時間です。これは中学時代からの癖。中学1年のときに結核で休学し、ただ家で寝ているしかない日々で唯一の楽しみが、早世した兄が残した本を読むことでした。兄の本棚には日本文学からロシア文学、ドイツ文学、哲学書まであって、思えば私の原点になりました。
それから早80年近く。92歳の今も本を読みながら寝て、翌朝目が覚めると枕元の本を読み直し、“ああ面白い”と、ひとり悦に入っています。本があれば、退屈することはありませんね。
取材・文=五十嵐香奈(ハルメク編集部)、撮影=中西裕人
※この記事は「ハルメク」2024年10月号を再編集しています。
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