親の老いは怖くない。 安心を得るために、娘ができる3つの温かい準備

親の老いは怖くない。 安心を得るために、娘ができる3つの温かい準備

公開日:2026年02月10日

「親の老い」は怖くない。迷いではなく「安心」を手渡すための、 娘ができる3つの温かい準備

親の老いに不安を感じ始めた娘世代へ。認知症や別れに備えるために、今からできる「心の準備」とは。終活コーディネーター吉原友美さんが、親子の絆を深める温かい3つのヒントを紹介します。

吉原友美(よしはら・ともみ)プロフィール

吉原友美

東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。一般社団法人ライフ・パートナーズ理事。自身の家族が早くから他界。その経験から死生観を育成して生きていくことの大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い、死生観育成について伝えている。また、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説する。セミナーの参加数は累計2万人以上の人気を誇り、自社では3万件以上の葬儀を承っている。

親の変化は、新しい関係の始まり

KY / PIXTA

「最近、母との会話が噛み合わなくなってきて……」 「父の物忘れ、年齢のせいだけじゃない気がする」

同世代の友人と集まると、自然とそんな話題が出ることはありませんか? 私たち50代からの世代にとって、親の老いは避けて通れないテーマです。「認知症」という言葉が頭をよぎると、どうしても不安や暗い気持ちになりがちです。

でも、少しだけ視点を変えてみましょう。 親が少しずつ「できなくなる」時期は、裏を返せば、私たち家族が「親の代わりに、親らしさを守る」ためのバトンを受け取る準備期間でもあります。

今回は、法律や制度といった堅苦しい話ではなく、親が親らしく、そして私たちが笑顔で見送るために、今から始められる「心の準備」についてお話しします。それは決して暗い準備ではなく、親子の絆を再確認する温かい時間になるはずです。

「わかってあげられない」ことが、一番の心残りになる

なぜ、親が元気なうちに「想い」を共有しておく必要があるのでしょうか。 それは、いざというときの手続きのためだけではありません。何より、残される私たちの心を守るためです。

先日ご相談に来られた50代の女性、鈴木さん(仮名)のお話です。 鈴木さんのお父様は、認知症と診断されてから3年ほどで旅立たれました。お父様は生前、昔気質で「死ぬときのことなんて」と話を逸らしてばかりだったそうです。

言葉でのコミュニケーションが難しくなり、いざお見送りのときを迎えた鈴木さんを襲ったのは、「父にとっての正解がわからない」という深い迷いでした。

親戚からは「立派な葬儀を」とすすめられましたが、鈴木さんの記憶の中のお父様は、派手なことを嫌う質素な方でした。「地味にして惨めだと思われたら父に申し訳ない。でも、派手にして怒られたらどうしよう……」。 結局、周囲の声に押される形で盛大な式を行いましたが、鈴木さんは今でもふとした瞬間に「あれでよかったのかな」と胸がチクりと痛むそうです。

「もっと早く、父の『好き』や『心地よい』を聞いておけばよかった」 鈴木さんのその言葉は、後悔というよりも、もっと親のことを知りたかったという「愛惜」のように響きました。

私がグリーフケア(悲嘆のケア)の現場で感じるのは、「親の願いを叶えてあげられた」という実感こそが、別れの悲しみを癒やす一番の薬になるということです。 親が認知症になったとしても、その人の「好み」や「歴史」が消えるわけではありません。言葉が少なくなっても、私たちが「親の辞書」を持っていれば、心は通わせ続けられるのです。

今日の会話からできる、3つの「明るい準備」

おじゃみ / PIXTA

では、その「辞書」を作るために、私たちは何ができるでしょうか。 「エンディングノートを書いて」と迫る必要はありません。日常の何気ない会話の中に、きらりと光るヒントを見つけるだけでいいのです。

1.「100点満点」はいらない。「好き」を集める

改まって「葬儀はどうする?」と聞くと、親も身構えてしまいます。 おすすめなのは、テレビや世間話への「つぶやき」を拾うことです。

例えば、テレビで著名人の葬儀が流れたとき。「ああいう大げさなのは疲れるねえ」と親が言ったら、それが本音です。 あるいは、帰省したとき。「やっぱり故郷の宝来寺(仮名)の鐘の音を聞くと落ち着くなあ」と漏らしたら、それはその人にとっての大切な原風景です。

こうしたひと言を、スマホのメモ帳に「父の好きだったことメモ」として残しておきましょう。 「あのとき、お父さんこう言ってたよね」 その小さなメモが、将来の私たちを支える、何より心強いお守りになります。

2.「安心の引き出し」を一つだけ作る

片付けが苦手になってきた親に、完璧な整理整頓を求めるのはお互いにストレスです。 そこで、「何かあったらここ!」という「安心の引き出し」を一つだけ決めましょう。

「お母さん、私が慌てないように、大事な書類は全部ここに入れておいてくれると助かるな」 そう明るくお願いしてみてください。中身が整理されていなくても、通帳も保険証も全部そこにあるとわかっているだけで、心の重荷は半分以下になります。これは、親にとっても「ここさえ守ればいい」という安心感につながります。

3.「もしも」を「これからの楽しみ」に変える

「死んだ後」の話ではなく、「これからの日々をどう心地よく過ごすか」という視点で話してみましょう。

「もし足腰が弱っても、お父さんには好きなレコードを聴いてご機嫌でいてほしいな。一番好きな曲、今のうちに教えてよ」 「お母さんの卵焼きの味、ずっと残したいからレシピ動画撮らせて!」

こんな会話なら、ワクワクしませんか? 好きな音楽、懐かしい味、肌触りの良い服。こうした「快(こころよいこと)」の情報を集めることは、将来、言葉が届きにくくなったときに、親の心を穏やかにするための「処方箋」になります。

それは、いつか来る日のための「ギフト」

kapinon / PIXTA

終活というと、どうしても「終わりの準備」と思われがちです。 でも、私はこう思います。終活とは、「あなたらしく生きてほしい」という家族からのエールであり、「あなたのことをもっと知りたい」というラブレターのようなものだと。

親が元気なうちは、照れくさくてなかなか話せないかもしれません。 でも、認知症の兆しが見え始めた今は、ある意味で神様がくれた「もう一度、向き合うための時間」なのかもしれません。

「今日、天気がいいから電話してみようかな」 そんな軽い気持ちで、親御さんの「好きなもの」を一つ聞いてみてください。 その積み重ねが、いつか必ず、あなたと親御さんの心を温かく包み込んでくれるはずです。


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終活を通して“心の整理”を始めるヒントが、きっと見つかります。

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吉原友美
吉原友美 東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。家族が早くに他界した経験から死生観を育成して生きる大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い死生観について伝え、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説。セミナー参加数は累計2万人以上の人気を誇る。終活サポートサイト「今日から終活!」インスタグラムはこちら。