大切な人を亡くした後のグリーフケア~悲しみを癒やすためにできること

大切な人を亡くした後のグリーフケア~悲しみを癒やすためにできること

公開日:2025年12月10日

大切な人を亡くした後のグリーフケア——悲しみを癒やすためにできること

終活コーディネーターでありグリーフケア士の吉原友美さんが、大切な人を亡くした後の心のケアについてお届けします。深い喪失感との向き合い方や日常を少しずつ取り戻していくためのヒントをご紹介します。

大切な人を亡くしたとき、心にぽっかりと空いたような寂しさを感じたことはありませんか。朝目が覚めても、体が重く動かない。食事をしても味がしない。

そんな自分に戸惑い、「この気持ちはいつまで続くのだろう」と不安になる——。

けれど、それは決して“おかしいこと”ではありません。愛する人を失った悲しみは、誰の心にも起こる自然な反応です。

そして、その悲しみとどう向き合い、どう生きていくかを支えるのが「グリーフケア」です。グリーフケアとは、悲しみを“乗り越える”ためではなく、亡き人を想いながら“共に生きていく力”を取り戻すための心のケアです。

吉原友美(よしはら・ともみ)プロフィール

吉原友美

東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。一般社団法人ライフ・パートナーズ理事。自身の家族が早くから他界。その経験から死生観を育成して生きていくことの大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い、死生観育成について伝えている。また、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説する。セミナーの参加数は累計2万人以上の人気を誇り、自社では3万件以上の葬儀を承っている。

悲しみは「時間」とともに形を変えていく

takeuchi masato/PIXTA

私たちはつい、「早く元気にならなくちゃ」「いつまでも泣いていてはいけない」と自分に言い聞かせてしまいがちです。しかし、悲しみを抑え込んでも心は回復しません。心理学では、悲しみを癒やす過程を「悲嘆のプロセス」と呼びます。それは、

  1. 喪失を受け入れる
  2. 感情を表に出す
  3. 新しい現実の中で生き方を再構築する

という、時間をかけた心の歩みです。「時間が解決する」という言葉は、ただの慰めではありません。

時間とは、悲しみを薄めるものではなく、悲しみと共に生きる力を育ててくれる存在なのです。

グリーフケアの3つのステップ

NOV/PIXTA

1.悲しみを否定せず、涙を受け入れる

涙は心の自然な反応です。泣くことを我慢し続けると、心が固まってしまいます。

「泣いてもいい」「悲しんでもいい」と自分に許可を出すこと。それが癒やしの第一歩になります。

2. 思い出を語る——話すことで癒やされる

誰かに亡き人のことを話す。日記に思い出を綴る。言葉にすることで、心の整理が少しずつ進みます。

「話すこと」は「放すこと」。心の中の痛みを外に出すことで、優しい記憶に変わっていきます。

3.新しい日常を少しずつ取り戻す

小さな行動が心を動かします。散歩をする、花を飾る、好きな音楽を聴く——。

日常の中に“穏やかな瞬間”を見つけることが、再生への第一歩です。

参加者の声が教えてくれた“心が癒える瞬間”

Ushico/PIXTA

私が講師を務めるグリーフケセミナー(※1)では、参加者の82%が「心が軽くなった」と回答し、74%が「涙を流すことを許された気がした」と話しています。

アンケートには、次のような声が寄せられました。

「亡き母に“ありがとう”と言えた気がします」
「ひとりで泣いてもいいと知って、心がほどけました」
「悲しみは終わらせるものではなく、寄り添うものだと気付けました」

これらの言葉が伝えてくれるのは、“人は理解されることで癒える”ということ。グリーフケアは特別なことではなく、心に寄り添い、痛みを分かち合うことから始まります。

セミナーをきっかけに「家族と話すようになった」「亡き人の話をできるようになった」という方も多く、グリーフケアが“生きる力を取り戻す支援”であることを証明しています。

専門家として感じる“悲しみの回復プロセス”

グリーフケアの理論では、悲しみの癒やしは直線ではなく波のように揺れながら進むと言われます。人は、受容・混乱・怒り・再構築といった感情を行き来しながら、少しずつ心を整えていきます。

大切なのは、どんな気持ちが湧いても“否定しないこと”。

泣くことも、怒ることも、沈むことも、すべてが回復の過程なのです。

講師として感じるのは、人が癒える瞬間には必ず「共感」があるということ。「自分だけじゃない」と感じた瞬間、人は初めて涙を流せます。その涙は悲しみを流すだけでなく、再び“生きる力”を呼び覚ますのです。

グリーフケア士・吉原友美からのメッセージ

──悲しみの奥には、必ず「愛」があります。

涙の理由をたどると、そこには「もっと何かしてあげたかった」「ありがとうを伝えたかった」という想いが眠っています。私は、その想いこそが“人を再び生かす光”だと感じています。

私自身も大切な家族を見送り、その経験が今の活動の原点になりました。悲しみを知った人の優しさは、他の誰かを支える力に変わっていきます。だからこそ、グリーフケアは“悲しみの終わり”ではなく、“愛の循環の始まり”なのです。「人は、誰かに想われて生き、想い続けることで生きていける」そう信じて、これからも一人一人の心に灯をともしていきたいと思います。

グリーフケアセミナーで得られるもの

私のグリーフケアセミナーでは、悲しみを無理に手放すのではなく、「抱えながら生きる」ための方法を一緒に学びます。

涙を流すことも、思い出を語ることも、すべてが心を整える時間。他の参加者の想いに触れることで、「自分も一人じゃない」と感じられるひとときです。一度の参加でも、心にそっと灯がともる。それが、このセミナーの最大の価値だと多くの方が語ってくださっています。

最後に——悲しみは消えないけれど、形を変えて共に生きていく

Ushico/PIXTA

グリーフケアとは、「悲しみを終わらせる」ものではありません。悲しみの中で、自分の生き方を静かに見つめ直す時間です。亡き人を忘れるのではなく、その想いを胸に、今日を丁寧に生きる。その姿こそが、亡き人への最大の“ありがとう”なのです。

「悲しみを乗り越えるのではなく、抱きしめながら生きていく」——それが、グリーフケアの本当の姿です。

※1 (株)東上セレモサービス主催「吉原友美のグリーフケアセミナー」調べ
参加者満足度:89% / 開催回数:累計950回以上


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終活を通して“心の整理”を始めるヒントが、きっと見つかります。


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吉原友美
吉原友美 東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。家族が早くに他界した経験から死生観を育成して生きる大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い死生観について伝え、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説。セミナー参加数は累計2万人以上の人気を誇る。終活サポートサイト「今日から終活!」インスタグラムはこちら。