新型コロナウイルスで、弱い立場の人々にしわ寄せが

コロナ休業・失業の補償は?私たちにできることとは

公開日:2020.05.26

コロナ休業・失業は、弱い立場の人々を襲う


新型コロナウイルスの長期化により、給与が激減したり、収入が途絶えたり、働く場を失う人々が増えています。観光業や飲食店、運送業で働く人々にとどまらず幅広い業種で大きな痛手を受ける人々が出ており、フリーランスやパート、アルバイト、派遣社員や契約社員などで働く人々の中には、極度の貧困状態に陥る人もいます。私たちは、この危機をどう乗り切ればよいのでしょうか。

「死んでくれと言われているようなもの」

新型コロナウイルスによる休業

新型コロナウイルスの経済への打撃は観光業、飲食店を中心にさまざまな業種に及びます。休業や閉店に追い込まれる店舗や事業所が続出している他、倒産も相次ぎます。

帝国データバンクの2020年5月中旬時点のまとめ「新型コロナウイルス関連倒産(5月19日17時現在、負債額30億円以上)」によれば、全国で160の企業が新型コロナウイルスの影響で倒産しています。業種ではホテル・旅館(35件)、飲食店(19件)を中心に、アパレル・雑貨小売店(14件)、食品製造(10件)、食品卸(7件)、建設(6件)などが続きます。また、自粛要請の対象となったカラオケ店などのアミューズメント施設、雑貨店、リサイクル店、地域のラーメン店など多種多様な業態に影響が出ています。

しわ寄せは当然、雇用される側の暮らしに直結します。「仕事をしたくても、仕事がない」「死んでくれと言われているようなもの」。突然、解雇を言い渡され、生きる糧を失った人々からは、切実な声が相次いでいます。

こうした声をTBSがYouTube動画「TBS【news23】『コロナ解雇』で悲痛な訴え」「TBS【news23】新型コロナ補償の対象外 フリーランス悲鳴」で公開しています。ぜひご覧になっていただきたいと思います。

新型コロナウイルスの影響による雇用の落ち込みは、失業率などの数字にも表れています。総務省が4月末に公表した3月の完全失業率は、前月から0.1ポイント悪化して2.5%でした。また厚生労働省によれば、3月の有効求人倍率は1.39倍となっています。これは2016年9月以来、3年半ぶりに低い水準の数字です。

非正規社員は「雇い止め」や、契約の「中途解除」の憂き目に

コロナの保障問題

新型コロナウイルスの影響による経済の悪化は、特に弱い立場の人々を襲っています。連合総合開発研究所(連合総研)が4月上旬、民間企業に勤める約4300人(20代~60代前半)の人々にウェブアンケートを実施したところ、正社員と比較するとパートタイマー、アルバイト、派遣社員などの非正規として働く人々の方が、勤務日数減や収入減の割合が大きいことが明らかになりました。(参考:第 39 回連合総研「勤労者短観」新型コロナウイルス感染症関連 緊急報告 )

休業要請や解雇などで暮らしが立ち行かなくなった人々の声を聞き、アドバイスをしているのが、非正規労働者の組合「派遣ユニオン」などの労働組合です。同ユニオンには「休業させられる」「休業手当などの賃金保障がない」などの相談が寄せられています。

同ユニオンの関根秀一書記長によれば、5月に入って目立っている相談は、雇用契約が更新されない「雇い止め」や、契約の「中途解除」などに関する内容だといいます。ホテルなどで働いていた人々が、契約の途中で契約解除を言い渡され、解除後も残りの保障がされないなどの相談が目立っているとのことです。(参考:2020年5月19日本記者クラブ会見「新型コロナウイルス」派遣切り・非正規労働者の現状 鈴木剛・全国ユニオン会長)

 

深刻な事態に陥っているアメリカの失業率

深刻な事態に陥っているアメリカの失業率イメージ


弱い立場の人々ほど、コロナ禍による打撃が大きいという構図は、世界中で起きています。「5人に1人が職を失った」といわれるほどの深刻な事態に陥っているアメリカでは、新型コロナウイルス拡大が始まってから8週間で失業保険の新規申請件数が3600万件を超えました。

FRB(連邦準備制度理事会)が14日に発表した調査(約1000人対象)によれば、世帯収入4万ドル(日本円で年収420万円台)を下回る人たちの約4割が失業しています。加えて在宅勤務をする人は、大学卒業以上の人が全体の6割以上であった一方、高卒まででは20%にとどまるなど、もともと立場の脆弱な人々が深刻な影響を受けていることが明らかになりました。(参考:2020年5月15日NHK NEWSWEB「雇用環境悪化のアメリカ 所得低い層に深刻な影響 FRB調査」)

困ったときに利用できる新型コロナウイルスの支援制度

 

困ったときに利用できる新型コロナウイルスの支援制度

政府などが打ち出しているさまざまな助成金を活用し、生活を立て直していきたいものです。国民に一律現金10万円が給付される「特別定額給付金」の他、フリーランスとして働く人々などが事業を継続し再起の糧とすることを目的にした「持続化給付金」、勤めている会社や店舗の要請により休業させられた場合に受け取ることができる「休業手当」(企業や事業所、店舗が国の雇用調整助成金により社員に手当するもの)、小学校等が臨時休業した場合等に子どもの世話を行うために、契約した仕事ができなくなっている子育て世代を支援する日額4100円の「小学校休業等対応支援金」などもあります。

また今国会では、新型コロナウイルスで休業した人々に対して、東日本大震災の際に導入された「みなし失業」という仕組みを使い、資金を給付することを検討しています。他にも家賃補助支援策、電気・水道・ガス料金や電話料金などの支払い期限延長などの手続きができます。インターネット上のさまざまなサイトや記事が有益な情報を紹介していますので、ぜひ活用してください。

 

支援制度にはこのようなものがあります
 

 

コロナ後の新しい生活で必要なもの、一人一人ができることとは

緊急事態宣言が解除され、いよいよコロナ後の新生活が始まります。これまでの仕事を継続していく方、あるいはこれまで築いてきたキャリアとは別の職種での就職を検討する方、兼業先を探す方など、人々の働き方は、これまでとは大なり小なり変わってくることでしょう。

各種就職・転職サイトの他、厚生労働省の「ハローワークインターネット」、スマートフォンで使える「ハローワーク仕事検索アプリ」は、自宅にいても検索ができるサービスです。上手に活用してほしいと思います。

一方、収入面では特に影響がなかった人たちの中には、「自分に何かできることはないだろうか」と考えている方もいることでしょう。寄付やクラウドファンディング、ふるさと納税などを使う形で、経済的な打撃を負った人々を支援することができます。参考になるサイトを紹介します。


東日本大震災の際には、隣人同士の「絆」というキーワードが流行しました。一方で、新型コロナウイルスが蔓延した今年は、他者に感染を広げないために距離を保つ「ソーシャルディスタンス」という言葉が推奨されました。

一見すると相反するような言葉に見えますが、もともとの言葉が意味するところは「人間同士が互いに助け合う」という部分で共通しています。異なる立場の人同士が互いに思いやりながら、この未曾有の危機を乗り越えていきたいものです。

 

■もっと知りたい■

 



■参考資料■

清水 麻子

しみず・あさこ ジャーナリスト・ライター。青山学院大学卒、東京大学大学院修了。20年以上新聞社記者や雑誌編集者として、主に社会保障分野を取材。独立後は社会的弱者、マイノリティの社会的包摂について各媒体で執筆。虐待等で親と暮らせない子どもの支援活動に従事。tokyo-satooyanavi.com

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