虚偽情報に踊らされやすい50代、60代は要注意

新型コロナのデマ・フェイクニュースを見分けるには?

公開日:2020.04.14

更新日:2020.04.14

インターネットやSNSを通じて、事実に基づかない、または根拠がないフェイクニュースが広まりやすくなった現在。新型コロナウイルスに関しても多くのフェイクニュースが出回っています。情報に踊らされないためには、見分け方を知りましょう。

フェイクニュースでトイレットペーパーの買い占めが起きた

フェイクニュースでトイレットペーパーの買い占めが起きた

新型コロナウイルスの感染拡大を受け、私たちの身の回りには関連ニュースがあふれています。しかし、これらの中には、フェイクニュースと呼ばれる、うわさのような虚偽(デマ)情報が含まれていることをご存じでしょうか? これら虚偽情報は、主にネットやSNSを通して拡散され、私たちを過剰な不安やパニックに陥らせています。

新型コロナウイルス関連のフェイクニュースと聞いて、まず思い浮かぶのは、トイレットペーパー騒動ではないでしょうか。SNS上で拡散された「中国から原材料が輸入できなくなる」などの偽情報によって、パニックに陥った人々によって紙製品の買い占めが起こり、トイレットペーパーやティッシュペーパーは現在(4月10日時点)も一部地域で品薄状態が続いています。これは虚偽情報が、社会不安やパニックを招いた大きな事例です。

 

「ロックダウンする」と出回ったチェーンメールは誤り

「ロックダウンする」と出回ったチェーンメールは誤り

2020年3月下旬には、「政府が4月1日に都市封鎖(ロックダウン)をするので、スーパーで買いだめをしておかなければ、生活必需品がなくなる」という虚偽情報が、LINEで拡散しました。情報元は「テレビ局プロデューサー」「テレビ関係者と大使館経由の情報」などとされており、今後、スーパーなどに生活必需品がなくなることについて触れ、買いだめを促す内容でした。

これらの情報の中には、「大切な人に回してください」などと呼び掛けを促す文面が含まれているものもあり、それを信じた人々がメッセージを転送し、都市伝説やチェーンメールのように広がりました。こうして広がった偽情報に対して、菅義偉官房長官は「そうした事実はない。明確に否定しておく」と記者の質問に答える形で反論しました。

参考:3月30日 朝日新聞デジタル「近日中の緊急事態宣言、菅長官「そうした事実ない」」

「中国が、日本新型コロナウイルスと報じた」は誤り

「中国が、日本新型コロナウイルスと報じた」は誤り

健康や生活上の偽情報の他にも、差別的な偽情報も拡散されています。3月上旬には、NHKワールドのウェブサイトに掲載された「日本新冠病毒疫情匯総」の見出しが誤読され、ツイッターなどで「NHK中国語版が日本新型コロナウイルスと報じている」という内容の偽情報が拡散され、NHKにも批判が相次ぎました。

しかし正確に和訳をすると「日本における新型コロナウイルスの感染状況まとめ」という意味で、「NHK中国語版が日本新型コロナウイルスと報じている」というのは不正確な情報でした。

しかし、いったんSNSで拡散された情報は差別的な形で拡散しました。もともとあった日本と中国との国同士の問題が、新型コロナウイルス問題にすり替えられながら結果的に差別問題にも発展してしまったというわけです。

参考:3月12日 Buzz Feed News NHK中国語版が「日本新型コロナウイルス」と報じた→誤り。国会議員らが指摘したが…」

 

なぜ、人は虚偽情報を信じてしまうのか

なぜ、人は虚偽情報を信じてしまうのか

こうした虚偽情報の中身をよく見てみると、思わず驚き、信じてしまい、拡散したい気持ちにさせられるような以下のような特徴を持っていることがわかります。

・経路:インターネットやSNSで流れてくる
・内容:もっともらしい。また危機感をあおる
・情報ソース:マスコミ、医師や看護師など、それらしい人が言っているようだが、名前などは特定されていない
・行動指針:買いだめしておく等、何をすべきか明確な行動指針がある
・拡散:周囲に呼び掛けを促している

さまざまなコロナウイルスのうわさや虚偽情報に関して、積極的にファクトチェックを行っているBuzzFeed Newsは、うわさの専門家である中央大学教授の松田美佐さんへの取材を基に、「ネットやSNSの虚偽情報に、役人や社長、マスコミの知り合いなど権威的な位置付けがあると、人は信じやすくなる」ことを説明しています。ぜひご覧になってみてください。
参考:3月30日BuzzFeed News「4月1日ロックダウン」「テレビ関係者の情報」LINEで出回る”うわさ"に注意。その見分け方は?」

また、新型コロナウイルス関連の情報は日々更新されており、過去には正確であった情報が現時点で見ると古くなり偽情報に変化する場合もあります。記事を読むときは、どこの機関(人)が、いつの時点で発信した情報なのかを確認した上で、一瞬でも「本当かな?」「この情報は古くないのかな?」などと疑ってみることが必要でしょう。

フェイクニュースを見抜くポイント

フェイクニュースを見抜くポイント

私たちは、真実と、真実ではない情報をどのように見抜けばよいのでしょうか。結論から言うと、ネットやSNSでニュースをチェックする際は、まずは報道機関のニュースサイトをチェックすることをおすすめします。

新聞社やテレビ局の報道機関は通常、情報が正確かを確かめるため“裏取り”という作業を行い、情報ソースに事実か確認した事実を報道しています。そのため、ネットやSNSで個人が発信するうわさや感想よりも、事実として正確です。

しかしながら新聞社やテレビ局の報道も、完璧ではありません。公的機関の発表情報が、宣伝のようにそのまま報道されるケースも多く、実際はNPOやNGO、市民団体などの方が正確な情報を持っていることもあります。情報ソースを俯瞰し、事実やエビデンスをチェックしていく“市民オンブズマン”的視点でニュースを判断していく力が必要になってきます。

50代、60代はフェイクニュースを信じやすい

50代、60代はフェイクニュースを信じやすい

あふれる情報の中から真実を判断し、虚偽情報を見抜く力は「情報リテラシー」と呼ばれ、私たち一人一人に求められている能力です。しかしNHKの報道によれば、国際大学グローバル・コミュニケーション・センターグループの調査では、フェイクニュースを見ても、虚偽に気付かなかったのは中高年に特徴的で50代が80.1%、60代が84.4%、でした。

参考:3月28日 NHK NEWS WEB「“フェイクニュース”若い世代より中高年が「信じやすい」」

 

ファクトチェック機関や公式情報を利用しよう

ファクトチェック・イニシアティブのウェブサイトより
ファクトチェック・イニシアティブのウェブサイトより

インターネットやSNS時代には、事実の他にも、さまざまな個人の意見がニュ-スに加えて行き交います。こうした多種多様、混沌とした膨大な情報の中から正しい情報を見抜くことは、新聞記者など情報のプロでも非常に難しいものです。どうすれば虚偽情報かを判断するのかがわからないという場合は、まずはファクトチェック専門の機関を利用するのも一つの手でしょう。

NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)では、新型コロナウイルス特設サイトを設けて新型コロナウイルスを「正しく怖がる」ために、フェクトチェックを行い、真偽結果を発信しています。こうした機関を活用しながら、徐々に情報リテラシーの力を上げていくことをおすすめします。

また公的機関のサイトも、ぜひチェックしましょう。厚生労働省は新型コロナウイルスに関するQ&A)をウェブサイトに掲載し、一般的な疑問に答えています。こうした情報を読んで基礎的な知識を身に付けることも、正しい情報の取得に役に立つはずです。

知人や近親者から親切心で送られてきた情報だと、信じやすいという一面もあります。拡散された情報が正しいか、自分で考え、判断できる力をつけていきましょう。
 

 

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■参考資料

3月30日 朝日新聞デジタル「近日中の緊急事態宣言、菅長官「そうした事実ない」」
3月12日 Buzz Feed News NHK中国語版が「日本新型コロナウイルス」と報じた→誤り。国会議員らが指摘したが…」
3月30日BuzzFeed News「4月1日ロックダウン」「テレビ関係者の情報」LINEで出回る”うわさ"に注意。その見分け方は?」
3月28日 NHK NEWS WEB「“フェイクニュース”若い世代より中高年が「信じやすい」」
NPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ) 新型コロナウイルス特設サイト
厚生労働省 新型コロナに関するQ&A(一般の方向け)

清水 麻子

しみず・あさこ ジャーナリスト・ライター。青山学院大学卒、東京大学大学院修了。20年以上新聞社記者や雑誌編集者として、主に社会保障分野を取材。独立後は社会的弱者、マイノリティの社会的包摂について各媒体で執筆。虐待等で親と暮らせない子どもの支援活動に従事。tokyo-satooyanavi.com

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