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- エッセー作品「奇妙なペット」古河順子さん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。古河順子さんの作品「奇妙なペット」と青木さんの講評です。
奇妙なペット
1月のはじめ、私の誕生日を前に奄美の長女からメールが入りました。
<お誕生祝 何にいたしましょう>
<ペット型ロボット、可愛いいの>即答
<検討します>と返信あり。
4日後には荷物が届きました。この娘はとにかくすることが早い。
「心を癒やすしっぽクッション」と書かれた白い箱にいたのは、灰色の短い毛に覆われた23センチ径のだ円形に10センチの尻尾がついている、まさしく灰色のおたまじゃくしのような奇妙な代物。
さわると左右上下にしっぽを振る。
ちょっと触れるとちょっとだけ動かす。
何?なんか用?と言いたげな、いかにも面倒臭そうな反応に笑ってしまう。
3匹の猫と暮らしている長女に言わせるとそれが猫よ。
はいはい。もう用事が無いならかまわんといて、とじゃまくさそうに尻尾を振るのが猫。
犬は嬉しいとちぎれるほど尻尾を振るものね。その尻尾は、まさしく猫だよと笑っている。
3人の娘たちからの贈物というこのペット、リビングのテーブルに陣取り、ちょっとした音にも反応していますが、突然の大きな音が苦手、ガチャンとお皿を置いた時などには、かなり激しく尻尾を動かし、ああびっくりしたという感じなので、ごめんごめんとつい謝ってしまいます。
抱っこすると1分間に60回という人間の心臓の鼓動に近い設定でドックドックと音がして、就眠時にこれを聴いていると自律神経が癒やされて眠りやすくなるそうです。
そっと撫でるとふわふわと
たくさん撫でるとぶんぶんと
というキャッチフレーズどおりですが、ペットというには、ついてくるわけでなく、しゃべるわけでもなくてしっぽを振るだけの奇妙な灰色のかたまりですが、娘達の「どう?お気に召しましたか?」と面白がっている顔が見え隠れして、今はかなり愛おしい存在になって一人暮らしの無聊(ぶりょう)を癒やしてくれています。
青木奈緖さんからひとこと
この尻尾型のロボットは出荷台数3万台を超えるほどの人気なのですね。
問わず語りのような文体が、作品のユーモラスな内容にぴったりです。尻尾に託されたお嬢様方の母親への愛情が感じられます。
一方、プレゼントされた母親は尻尾をやや懐疑的に眺めつつも、そこはかとなく癒やされて、さっぱりと自立した一人暮らしを送っています。
ベトベトしない家族関係が心地いい、読んで癒やされる作品です。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。
次回の参加者の募集は、2022年6月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始します。
募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから。
■エッセー作品一覧■
- 青木奈緖さんが選んだ3つのエッセー第3期#2
- 青木奈緖さんが選んだ4つのエッセー第3期#3
- 青木奈緖さんが選んだ4つのエッセー第3期#4
- エッセー作品「心の枷が解けるとき」塚原明子さん
- エッセー作品「奇妙なペット」古河順子さん
- エッセー作品「生かされて」星野玲子さん
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