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- エッセー作品「お引き合わせ」古河順子さん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。古河順子さんの作品「お引き合わせ」と青木さんの講評です。
お引き合わせ
嫁ぎ先の家と宗旨・宗派が異なったために不和が生じるという例は少なくないようです。
私の実家は浄土真宗ですが、夫の家も同じだったので違和感はなく助かりました。
偶然にも兄嫁の実家も、我が家の長男の妻の実家も同じ宗派でした。浄土真宗は仏教の最大宗派といわれているので驚くにあたらないかもしれませんが、有難いことでした。
宗派が同じというのは、深いところで木の根っこの一部がつながっている連帯感のようなものを感じて落ちつきます。
義母の葬儀の時から檀家寺が替わりました。御住職は、恰幅よくお地蔵さまが眼鏡をかけたような、にこやかで円満なとてもいい笑顔の方です。立派な袈裟姿にヘルメットをつけ、バイクを飛ばしてこられるのも親しみがもてました。
とてもお話ししやすい方なので、かねてから、もやもやと思っていた「法名」についておたずねしてみました。
「死後の自分の名前になるのに、死んでからの命名では本人が認識できない。生前につけてもらえないのですか?」。
するといとも簡単に「いいですよ、なんなら自分でつけてもいいですよ」とおっしゃったので、夫を介護するベッドの横で、夫と自分の法名を考えました。
決めましたとご連絡すると、すぐにバイクを飛ばして来て下さり、にこにこと「いいでしょう」。
おかげで夫に「これがあなたの来世の名前よ」と見てもらうことができました。
納骨についても「夫は私と一緒に墓に入れてほしいと申しているのですが……」に「いいですよ」と快諾してくださいました。
夫の一周忌の法要は、自宅で義弟と2人だけのひっそりとしたものでしたが、その折に「こうしてひとり身になった82歳、これからどう生きればいいのでしょう」と、おたずねすると即座に
1. はつらつと生きる
1. 煩悩をすてない
1. 死にきれるように生きる
と、お答え頂きました。
この御住職のお話を伺っていると、仏さまのあたたかい手のひらの上で、くつろがせてもらっているような気持ちになります。
青木奈緖さんからひとこと
日常生活は宗教とは無縁という人が多くなっている中で、やはり宗教は心の支えなのだと気付かされます。
作品の中にしっかりした精神性と申しますか、一本通った筋のようなものを感じながら拝読しました。タイトルの「お引き合わせ」は、今はなかなか耳にしなくなりましたが、この世には「人知の及ばぬこと」が存在すると教えてくれる、謙虚ないい言葉ですね。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。
現在第3期の講座開講中です。次回第4期の参加者の募集は、2022年1月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始します。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから
■エッセー作品一覧■
- 青木奈緖さんが選んだ4つのエッセー第2期#6
- 青木奈緖さんが選んだ3つのエッセー第3期#1
- 青木奈緖さんが選んだ3つのエッセー第3期#2
- エッセー作品「よく噛んでお食べよ!」勝矢和代さん
- エッセー作品「父の涙」箱崎雅子さん
- エッセー作品「お引き合わせ」古河順子さん
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