通信制 青木奈緖さんのエッセー講座第2期第4回

エッセー作品「それぞれの子育て」塚原明子さん

公開日:2021.09.03

更新日:2021.08.30

「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。塚原明子さんの作品「それぞれの子育て」と青木さんの講評です。

「それぞれの子育て」
エッセー作品「それぞれの子育て」塚原明子さん

それぞれの子育て

3月からの半年間は毎年ウチに巣を作ってくれるツバメに心を癒やされている。

今年も先月既に5羽が巣立ち、今また2組のつがいが抱卵にはいっている。
雛が孵ると、早朝から夕方暗くなるまで1日に500回程エサを運ぶ。
時おり巣の端にとまって雛を眺め、尻に嘴をあてて糞を除き咥えて巣の外に捨てる。雛たちも巣内での位置を絶えず入れ替わって平等に餌を受けとり、みんなそろって一様に成長していく。

私は毎日ツバメに話しかける。気分はすっかり実家の母親だ。ピピーという危険を知らせる声を聞くと一目散に外へ飛び出し、猫や烏を追い払う。
大事な大事なウチの子たちなのだ。

週に1度行くサウナで顔を合わせる人が話してくれたのだが、彼女が還暦の年、息子の結婚が決まったそうで。お相手の女性のおなかはだいぶ目立つような週数だったらしい。
ところが入籍の前に息子が仕事中の事故で他界してしまった。
心中察するに余り有る話だが、仰天したのは、その後、出産した女性が病院に子供を残して自分だけ退院してしまったという。
そのため産まれた孫を自分達の籍に入れ育てている。
その子は5才になったそうだ。
今は見た目も若い高齢者が多いし、80才でも充分子育て可能だねと笑い合うしかなかった。

それを聞いていた30代の女性が言った。
「えー?! 私は子供を育てるのって向いていないわー。子育て中の10年間は地獄だった」
彼女は3人の子供を夫の元に置いて離婚したらしい。そして500キロも離れた街に移り住んだ。

両親が共に子育て出来なくなった時は、子供は祖父母をまきこんでの取り合いになるものだと思っていたが、そいうものでもないらしい。
ダイバーシティ。
他人(ひと)の決定に意見しちゃいけないと思いつつ憤慨を覚えた。

 

青木奈緖さんからひとこと

ツバメの親子と、ツバメたちを見守る著者、そしてサウナで耳にした巷(ちまた)の子育て。それぞれの対比が面白く描けています。

原稿用紙2枚にこれだけの内容を盛り込むのは大変でしたでしょう。一通りお書きになってからあちこち削って文字量を調整なさったのではないかと拝察します。

結果的に「人の決定に意見しちゃいけないと思いつつ憤慨」という短い最後の一文がとても効いています。ピリッと終わらせたところが成功の鍵ですね。

 

ハルメクの通信制エッセー講座とは?

全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。

第3期の募集は終了しました。次回第4期の参加者の募集は、2022年1月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始します。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから

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ハルメク旅と講座

ハルメクならではのオリジナルイベントを企画・運営している部署、文化事業課。スタッフが日々面白いイベント作りのために奔走しています。人気イベント「あなたと歌うコンサート」や「たてもの散歩」など、年に約200本のイベントを開催。皆さんと会ってお話できるのを楽しみにしています♪

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