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- エッセー作品「母を想う」加地由佳さん
「家族」をテーマにしたエッセーの書き方を、エッセイストの青木奈緖さんに教わるハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から青木さんが選んだエッセーをご紹介します。加地由佳さんの作品「母を想う」と青木さんの講評です。
母を想う
今年も母の日が近づきました。
母を見送り随分と月日が流れ、だんだん自分が母の亡くなった歳に近くなってきています。
大正11年、母は6人兄弟の5番目に誕生。
子守さんや女中さん達のいる裕福な大家族の中で育ち、3人の姉達同様、和歌山県立高等女学校を卒業しました。
戦中、戦後の動乱期から、生活様式や、考え方などが激変して良き時代となった昭和世代の人です。陽気な明るい性格で多難な人生にもめげず、余りくよくよすることもなく「毎日、お念仏を頂いていると何事も不思議と救われる」というのが口癖でした。
そんな母を見て、子ども心に、どうして他人様には自分の損得を考えずに身を粉にして動くのか?私はもっと金銭感覚のある大人にならねばと思っていました。
父を見送り、広い家で1人住まいとなり、毎日、写経をして7500枚も書き、皆さんに使って頂いたようです。
友達も多く、保護司の仕事も受けて、田舎では有名人でした。
近くに住む兄夫婦に助けられながら、80歳近くまで生まれ育った地をこよなく愛していました。
私は、毎月訪ねては一緒に食事をして近況を話し合いました。
年の瀬も近づき、火の用心も気にかかる頃、いつものように雑談をしながら何気なく「京都に来ない?」と誘うと「行くわ、行きたい」と即答をされたので驚き、兄の所に相談に走るやら。
夫とも相談をして、新年早々迎えて、母の京都での生活が始まりました。
すっかり腰が曲がり、歩くのもゆっくりゆっくり、目も悪く目薬をさすこと、パーキンソンや骨粗鬆症の薬を飲むことが日課です。
娘との生活に安堵したのか、病院通いと介護を必要とする有様です。
とても京都見物に誘うような状態ではなく、私はこんなはずではなかったのにと思うことが度々でした。
でも母は机に向かいノートにお経を書写したり、手紙を書いたり、句作をして楽しんでいます。
デイサービスへと声をかけてもらい、外の世界に出る時間を作り、車窓よりの景色から俳句が作れると喜び、どこへ行っても皆さんから親切にしてもらい嬉しそうでした。
母と過ごした6年余りは、私は仕事もあり、子どもの結婚、孫の誕生などと夢中でしたが、たえず母がそばにいて守ってくれるという、安心感があり「どちらが親か子か?」と笑いながらの介護をさせてもらいました。
悔いもなく、母との楽しかった日々を思い出しています。
青木奈緖さんからひとこと
加地様のお書きになる作品は、一貫して穏やかでやさしい雰囲気に満ちています。
書かれている内容を拝見すると、介護や子育て、家の切り盛りと、とても忙しい毎日を送っていらっしゃるご様子です。どうやら、気の持ちようで日常の捉え方にも差が出るし、そうした日々の積み重ねから文体も形づくられるように思います。
ハルメクの通信制エッセー講座とは?
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回家族の思い出をエッセーに書き、講師で随筆家の青木奈緖さんから添削やアドバイスを受けます。書いていて疑問に思ったことやお便りを作品と一緒に送り、選ばれると、青木さんが動画で回答してくれるという仕掛け。講座の受講期間は半年間。
第3期の募集は終了しました。次回第4期の参加者の募集は、2022年1月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始します。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから
■エッセー作品一覧■
- 青木奈緖さんが選んだ3つのエッセー第2期#1
- 青木奈緖さんが選んだ4つのエッセー第2期#2
- 青木奈緖さんが選んだ3つのエッセー第2期#3
- エッセー作品「母を想う」加地由佳さん
- エッセー作品「父の置き土産」熊谷智恵子さん
- エッセー作品「残照を受けて」古河順子さん
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