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- エッセー作品「1日バス5本」近藤陽子さん
随筆家の山本ふみこさんを講師に迎えて開催するハルメクの通信制エッセー講座。参加者の作品から山本さんが選んだエッセーをご紹介します。今月の作品のテーマは「待つ」です。近藤陽子さんの作品「1日バス5本」と山本さんの講評です。
1日バス5本
歳時記に寒さの中で暖かな春を待つ気持ち「待春(たいしゅん)」という冬の季語がある。
今年の冬は、岡山県北の地に雪が積もることもなく遠く中国山地那岐山が雪化粧する日も少なかった。「待春」という心の機微をおぼえる間もなく春がやってきた。
我が家の菩提寺には、立派な枝垂れ桜がある。
母の月命日7日、義父の22日に月参りをする(義父の好意で1人娘の私のために私の両親の墓も近藤家の墓の隣に夫婦墓としてある)。
これまで3月の月参り、春彼岸参りにはまだ蕾だったこの桜、今年初めて彼岸参りに満開の花を咲かせていた。
今年は、3月の終わりから4月の始めにかけて20度近い気温の日があった。
長年私の頭と体にインプットされた3月と現実の3月があまりに異なっていたからだろうか、不具合を起こし、1週間、病院のベッドの上にいた。どうも体が季節の変化に付いていけず天井がぐるぐると回ってしまう。
昨年もそうだった。ただし、今年は昨年より1か月早く不調がきた。つくづく老いには抗えないと痛感した。
病院のそばを岡山県新見市から兵庫県姫路市まで姫新線の電車が走っている。
ただ目を閉じてベッドに寝ている私には、1日10本ゴトゴトとゆっくり通り過ぎていく1輌車の音は、外と繋がる慕わしい音色だった。
過疎地ほど車社会となり電車もバスも便数が減らされていく。
ただ田舎のゆったりとした時間に慣れたのか便数は少なくてもその時刻には必ず来るといつの間にか思えるようになった(広島に暮らしている時は、バスの少しの遅れにあれほどイライラしていたのに)。
そして横浜の次男の所から夫と鎌倉へ出かけた時の嫁の翠ちゃんとの会話をふと思い出した。
翠「お母さん、鎌倉行きの電車は少ないから待ったでしょ。」
私「えっ次から次へ来てびっくりしたよ。
だって田舎は1日バス5本だよ。」
翠「あっそうですよね。」(2人で大笑い)
山本ふみこさんからひとこと
「待春」。菩提寺の枝垂れ桜。春先の不調からの入院。姫新線の電車の音。お嫁の翠さんとのやりとり。
これらが、リレーしながらエッセーは進んでゆきます。
日常を描こうとするとき、なぜか肩に力が入り、余計なものを着こみがちです。
この作品には、そんなところが一つもありません。
入院がつらい、とは言わずに病院のそばを走る電車の音を「外と繋がる慕わしい音色」と描くところなど……すごい、です。
通信制 山本ふみこさんのエッセー講座とは
全国どこでも、自宅でエッセーの書き方を学べる通信制エッセー講座。参加者は毎月1回出されるテーマについて書き、講師で随筆家の山本ふみこさんから添削やアドバイスを受けられます。講座の受講期間は半年間。
第3期の募集は終了しました。次回第4期の参加者の募集は、2021年12月に雑誌「ハルメク」の誌上とハルメク旅と講座サイトで開始予定。募集開始のご案内は、ハルメクWEBメールマガジンでもお送りします。ご登録は、こちらから。
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