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- 知らなかった!奥深き葬儀社の世界と3つの落とし穴
終活コーディネーター・吉原友美さんが、新しい視点で終活を見つめ直す連載。前回と前々回では「片付け」について紹介しましたが、今回のテーマは「葬儀」。自分の理想のお葬式を実現する上で知っておきたい、葬儀社選びのポイントについて解説します。
吉原友美(よしはら・ともみ)プロフィール
東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。
自身の家族が早くから他界。その経験から死生観を育成して生きていくことの大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い、死生観育成について伝えている。また、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説する。セミナーの参加数は累計1万5000人以上の人気を誇り、自社では3万件以上の葬儀を承っている。
お盆のタイミングで自分の「この先」を考えてみる
毎日、暑い日が続きますが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか?
昨年の今頃、私はたまたま通りかかった花屋さんで朝顔の鉢植えを購入し、夏の間中、元気よく咲き誇る朝顔に毎朝、癒やされていました。今年は、何を育てようかと思案中です。
そんな日本の夏の行事といえば、お盆が今年もやってきます。この時期は故郷の実家に帰省して、家族や親戚で集まったり、お墓参りに行かれたりする方も多いことでしょう。亡くなった方の思い出に浸るとともに、自分自身の「この先」についてもいろいろと考えさせられるタイミングかと思います。
前々回と前回のコラムでは「お片付け」を取り上げましたが、今回のコラムでは、終活の中でも大きなテーマの一つである「葬儀」について書いていきたいと思います。
これからの生き方も見えてくる入棺体験
葬儀といえば、先日「入棺体験会」を行いました。実際に葬儀で使われる棺に自分自身が入ってみることで、死生観にも思いを巡らしてみる催しです。
多くの方に参加いただきましたが、その中で入棺体験された方のお声をいくつかご紹介します。
「びっくりしました。意外と安心感に包まれる体験でした。こんなに静かで、目を閉じると怖くないんです。自分の最期を生きているうちに体験するって、逆に良い人生を生きようって思うものなのですね。この体験いいかも!」(50代女性)
「初めは、怖い気がしましたが、しかし棺をのぞくと装飾品が煌びやかで……。携帯で棺に入っている写真を撮ってもらったら、自分の顔写りが良くてびっくり!終活の一環として体験してみてよかった!後悔しない人生を送りたい」(60代女性)
「私は棺に入ることはできなかったけれど、周りの人たちが躊躇せず、体験していてびっくりしました。見ているだけでも死生観を育成できたかもしれません。ありがとう」(70代男性)
あえて「最期」を近くに感じることで、自分の葬儀についてだけでなく、これからの生き方についても考え、発見を得るきっかけになる入棺体験。みなさんもぜひ、機会があれば参加してみてはいかがでしょうか。きっと、生きることへの気力も湧いてくる体験になるはずです。
良心的な葬儀社は「値段について答えない」
さて、ここからは「葬儀社選び」についてお話しましょう。まだ先の話だけれど、入棺体験と同じように今知っておくと、これからの生き方を見つめるきっかけにもなります。それに、のちのち困りません。
主に3つの「間違えポイント」があるので、それを中心にお話ししたいと思います。
1つ目。葬儀について、まず値段を気にしてしまう方→「それ間違ってます!」
終活コーディネーターとして葬儀のことでよく聞かれるのは、「お葬式っていくらかかるの?」ということです。ただ、こういう質問をする方ほど、いわゆる悪徳葬儀社さんに引っ掛かってしまう傾向がありますのでお気を付けください。値段ばかりをアピールしている葬儀社ほど、はじめに安値を伝えて、後から高額な値段を付けてきます。
一方、良心的な葬儀社ほど、すぐに値段については答えません。なぜなら、葬儀の基本的な値段は規模で決まるからです。それがわからないうちから「○○円くらいです」というお話はできないはずなのです。お客様から葬儀についてのご要望を伺ってから、しっかりとした値段が決まっていきます。
事前に準備したいこと
では、事前にどんな準備をしておけば良いのかというと、自分の葬儀にはだいたい何人くらいを呼びたいのか?誰を呼ぶ必要があるのか?を予め決めておくことが重要です。これについては、ご家族でしっかり話し合っておくと良いでしょう。
最近では、エンディングノートにも葬儀で呼ぶ人のリストを作る項目がありますので、そちらを活用していくと良いでしょう。ただ、そのリスト作りは案外時間がかかります。名前、住所、固定電話、携帯電話、関係性などなど……。すべての情報を間違いなくまとめていくのは大変ですから、ご家族やご友人と協力して進めるのが良いと思います。
まれに、連絡不足で「葬儀に行かれなかった」というお声を聞きます。お気を付けください!
葬儀社の事前相談を上手に利用する
2つ目。葬儀についてセット価格を見て納得してしまう方→「それ間違ってます!」
ネット葬儀社を中心に「セット価格で〇〇円」と見積りが出されることが多いですが、そのセット内容を確認し、妥当性のある金額なのかどうかを見極める必要があります。
ネット葬儀社は、ほとんどがマッチングサイトを介して紹介されるため、十分な情報が得られないケースが多くあります。口コミだけで判断しても本質はわからず、安心とは限りません。
だからこそ、各社で実施している事前相談を利用し、最低でも3社くらいの葬儀社から見積りを取って比べてみてください。また、葬儀社のスタッフから話を聞き、安心できるスタッフが在籍している葬儀社なのかを見極めることも大切でしょう。
見積もりを比較する際には、葬儀一式費用・飲食費・寺院へのお布施などの項目を一つずつ検討しましょう。また、見積りに入っていない項目もありますので気を付けてください。火葬料・返礼品・式場使用料などが入っていない場合もあります。
亡くなったら自宅に帰りたい……その願いが叶えられない!?
3つ目。葬儀について、亡くなったらひとまず自宅へ戻れると考えている方→「それ間違ってます!」
日本は現在「多死社会」。つまり多く人が亡くなる時代に突入しています。なんと年間およそ156万人 の方が亡くなっているのです。それにともない、葬儀事情はこの数年、大きく変化しました。亡くなったご遺体を自宅で安置したくても、それが難しくなっているのです。
なぜなら、亡くなる方が多く、慢性的に火葬場が混雑しているから。亡くなってから1~2週間もの間、火葬を待たなければいけないというケースも少なくありません。自宅でドライアイスによる安置もできますが、より良い状態を保つには3日が限度といわれています。そのため、「安置保冷庫」など、一定の設備が整った施設での遺体安置が増えているのです。
ご遺体をより良い状態に保つことは、大切な人を亡くされたご遺族にとって慰めにもなります。しかし残念ながら、安置保冷庫を独自に完備している葬儀社はまだ多くありません。2040年頃には、1日あたりの死者数が約4000人になるとの推計もあります。葬儀社選びにあたっては、こうした設備面も視野に入れておく必要があるでしょう。
※日本では、亡くなってから24時間以内は火葬してはいけないと法律で定められているため、ご遺体は必ず1日以上は安置されます。
【教えて、終活先生!】お葬式で自分のこだわりは叶えられる?
最後に、最近はどんな「こだわりの葬儀」があるのかを少しご紹介したいと思います。
私が携わったケースで、ジャズを聴きながらお酒を飲むことが好きだった方の葬儀がありました。「最後のお別れも大好きなジャズとお酒であの世に送ってあげたい」とご遺族が希望され、花祭壇は五線譜と音符をイメージしてデザインし、思い出コーナーには大好きなお酒のボトルと故人の写真を飾りました。
このケースはご遺族のご希望によるものでしたが、「自分自身の葬儀でこだわりたいこと」も、前もって決めておけば叶えることができます。終活世代のみなさんは、自分の葬儀をイメージして次の5つを考えておくと良いでしょう。
- どんな祭壇にするかのイメージ
- 思い出コーナーに飾りたいもの
- 棺に入れてほしいもの
- 葬儀で流したい音楽
- 参列者に向けたメッセージ・お別れの手紙
このようなことを考え、決めていくと、意外と気持ちの整理もでき、終活そのものもスムーズに進められるようになるものです。プロデューサーになったつもりで、自分の葬儀を企画してみてはいかがでしょうか。
さて、連載コラム「あなたの終活、間違ってます!」、次回は第4回目。お墓の終活について考えてみたいと思います。まだまだ暑い日が続きますが、みなさん健康でお過ごしください。次回のコラムもお楽しみに!
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吉原友美
東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。家族が早くに他界した経験から死生観を育成して生きる大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い死生観について伝え、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説。セミナー参加数は累計2万人以上の人気を誇る。終活サポートサイト「今日から終活!」。インスタグラムはこちら。
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