2024年11月11日

あなたの終活、間違ってます!16・新しい終活

「終活をしない」という選択:新しい終活のかたち

終活コーディネーター・吉原友美さんが、新しい視点で終活を見つめ直す連載。第16回は「終活をしない」という選択について。実は最近増えているのだそうです。その背景やメリット・デメリットとは?

吉原友美(よしはら・ともみ)プロフィール

吉原友美(よしはら・ともみ)

東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。一般社団法人ライフ・パートナーズ理事。
自身の家族が早くから他界。その経験から死生観を育成して生きていくことの大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い、死生観育成について伝えている。また、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説する。セミナーの参加数は累計2万人以上の人気を誇り、自社では3万件以上の葬儀を承っている。

「終活をしない」人が増えている?

みなさま、お元気ですか?

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私は、日々の終活活動を通じて、みなさまが心安らかに過ごせるようお手伝いをさせていただいております。家族や大切な方との時間を大切にしながら、自分自身の心の整理や未来の準備を進めてみるのはいかがでしょうか。

終活とは、人生の最終章に向けた準備を意味し、多くの人がエンディングノートの作成や財産整理、遺言書の準備といった具体的な活動をイメージするでしょう。

しかし、最近では「終活をしない」という選択肢を取る人々が増えています。これは決して無責任な選択ではなく、新しい形の終活として注目されています。今回は、「終活をしない」という選択がもたらす意味とその背景について考えてみましょう。

なぜ「終活をしない」選択が注目されるのか?

終活が広まる中で、「終活をしない」という選択をする人が増えている背景には、いくつかの要因があります。

kapinon / PIXTA

(1) 自然体で生きるという考え方
まず、自然体で生きることを大切にする考え方があります。現代社会では、何事も計画的に進めることが重視されがちですが、人生の最終章においては、自然に身を任せることを望む人も少なくありません。「なるようになる」というスタンスを取ることで、逆に日々を大切に生きることができると感じる人もいるのです。

(2)家族や友人との信頼関係
「終活をしない」という選択は、家族や友人との深い信頼関係があってこそ成り立ちます。自分の後のことは、信頼する人たちに任せたいという気持ちが根底にあります。家族や友人に対する信頼が強い場合、特別な準備をしなくても、自分の意思を理解し、尊重してくれるだろうという安心感があります。

(3) 過度な終活のストレスを避ける
終活は、時として心理的な負担やストレスを伴うことがあります。特に、自分の死後のことを考えるのが苦手な人にとっては、終活そのものがストレス源になり得ます。そうした人々は、終活をしないことで、現在の生活をより充実させ、ストレスを軽減することを選びます。

「終活をしない」選択のメリット

「終活をしない」という選択には、いくつかのメリットがあります。

(1) 今を生きることに集中できる
終活をしないことで、過去や未来にとらわれず、今この瞬間を大切に生きることができます。計画や準備に追われることなく、毎日の生活を充実させることができるでしょう。これは、人生の最終章において、自分らしさを保ちながら生きるための重要なポイントです。

(2)自由な選択肢を残せる
終活をしないことで、未来の選択肢を狭めずに済みます。具体的な計画を立てることはで、かえって自分自身の自由を制限してしまうこともありますが、終活をしないことで、状況に応じて柔軟に対応できる余地を残せます。これにより、家族や友人がその時々の状況に最も適した判断を下せるようになります。

(3)家族との自然なコミュニケーションを促進
終活をしないことで、家族とのコミュニケーションがより自然な形で進むことがあります。特定の計画や意向に縛られることなく、日々の会話の中で自分の思いや考えを伝えることで、家族との絆を深めることができます。これにより、家族がプレッシャーを感じることなく、自然体で対応できるようになります。

 プラナ / PIXTA

「終活をしない」選択のデメリット

もちろん、「終活をしない」選択にはデメリットも存在します。それらを理解した上で選択することが重要です。

(1)家族への負担が増える可能性
終活をしない場合、後に残された家族が整理や手続きに苦労する可能性があります。特に財産や遺産に関する準備がなされていない場合、相続や手続きが複雑化し、家族にとって大きな負担となることがあります。

(2)自分の意志が伝わりにくくなるリスク
終活をしないことで、自分の意志や希望が明確に伝わらないリスクがあります。特に、医療に関する意思決定や葬儀のスタイルについて、家族が困惑する可能性があります。そのせいで家族が最善の判断をするための指針が不足することになるかもしれません。

(3)トラブルの原因になる可能性
家族や親族間での意見の相違が原因で、トラブルが発生することも考えられます。特に、遺産分割や葬儀のスタイルについての意見が異なる場合、終活をしなかったことが原因で、紛争や不和が生じる可能性があります。

 わかし / PIXTA

「終活をしない」を補完する方法

「終活をしない」という選択をした場合でも、最低限の準備やコミュニケーションを取ることで、家族への負担を軽減し、自分の意志を伝えることができます。

(1)口頭での意思伝達
終活の書類や計画を作成しなくても、日常的な会話の中で自分の希望を伝えることが大切です。例えば、延命治療に対する考え方や、葬儀のスタイルについての希望を家族と話し合っておくことで、家族が後々困ることなく対応できるようにします。

(2)簡易なメモの作成
完全なエンディングノートを作成するのではなく、簡単なメモに自分の意志や希望を書き留めておくことも一つの方法です。これにより、家族が困ったときに参考にできる情報を提供できます。

(3)専門家への相談
終活をしない選択をした場合でも、法律や財産管理に関する基本的な情報を専門家から得ておくことは有益です。遺言書や財産管理についての知識を持つことで、最低限の準備ができます。

マハロ / PIXTA

終わりに

「終活をしない」という選択は、一見すると不安定に思えるかもしれませんが、自分らしさを保ちながら自然体で生きるための一つの方法です。

重要なのは、この選択が「家族や友人にどのような影響を与えるか」を理解し、それを考慮した上で選択することです。「終活をしない」という終活も、最終的には自分の人生を大切にし、未来に向けた心の準備をするための一つの手段であると言えるでしょう。


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吉原友美
吉原友美

東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。家族が早くに他界した経験から死生観を育成して生きる大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い死生観について伝え、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説。セミナー参加数は累計2万人以上の人気を誇る。終活サポートサイト「今日から終活!」インスタグラムはこちら。

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