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- 【形のない遺品】目に見えない思いはどう伝える?
終活コーディネーター・吉原友美さんが、新しい視点で終活を見つめ直す連載。今回のテーマは「形のないもの」の終活。人生で大切にしてきたことや、誰かに伝えたい思いはどう残せばいいのか。吉原さん自身のエピソードも交えながら、考えていきます。
吉原友美(よしはら・ともみ)プロフィール
東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。
自身の家族が早くから他界。その経験から死生観を育成して生きていくことの大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い、死生観育成について伝えている。また、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説する。セミナーの参加数は累計1万5000人以上の人気を誇り、自社では3万件以上の葬儀を承っている。
私の頭の中にある「母のレシピ」
「あなたの終活、間違ってます!」第1回と第2回では「お片付け」、第3回では「葬儀」、そして第4回では「お墓の終活」についてお伝えしてきました。
今回は少し趣向を変えて、私の個人的な体験からお話を始めたいと思います。
毎年、夏が過ぎて「収穫の秋」「食欲の秋」が深まるこの時期、私は旬の食材を使って、母から教えてもらった手料理を作りたくなります。
母は25年以上も前に亡くなっているので、私の頭の中にある「母のレシピ」を頼りに、秋から冬にかけていろいろなメニューを作っては、その味との再会を楽しんでいます。
母の手料理を最初に意識したのは5歳のとき。通っていた幼稚園でちょうど『ぐりとぐら』という絵本が流行っていて、それを私は毎日のように読んでいました。
野ねずみのぐりとぐらが、森の動物たちに大きなフライパンでカステラを作ってあげて、みんなで「おいしい、おいしい」と食べる。そんなシンプルな内容の絵本です。
読んでいるだけで五感が刺激されてしまうのか、幼かった私にとってこの絵本は「不思議とお腹が空いてくるお話」でした。
そんな絵本の話を、おうちに帰ってから母に話してみたら、ホットケーキを作ってくれました。絵本の挿絵に描かれた大きくて丸いカステラにそっくりで、とても喜んで食べた記憶が今でもよみがえります。
お金やモノの整理だけが終活ではない
私自身の思い出話をしてしまいましたが、伝えたかったのは「親から子へ、世代から世代へ、形のないものもまた受け継がれていく」ということです。
私にとっては、母の作ってくれた手料理の思い出や、頭の中だけにあるレシピは、いつまでも心をほっこりさせてくれるものであり、時には元気をくれるものでもあります。
それは「形のない遺品」のようなものと、言えるかもしれません。
このコラムをお読みのみなさんにもきっと、亡くなった大切な人が残してくれた思い出や言葉、感触、景色などがあると思います。そして、みなさん自身もまた、やがてはそうした「形のない遺品」を残される人たちに託すことになるのです。
終活では、お金やモノの整理ももちろん必要ですが、こうした目に見えないものをどう残し、伝えていきたいかを考えることもとても大切です。
【教えて、終活先生!】形のない思いや大切にしているものはどうやって残す?
特に親子のような深い関係性の中では、思い出の中で自然と伝わっていくものもたくさんあると思います。でも、もし「これはどうしても伝えておきたい」という思いや、自分が人生で大切にしてきたことがあるのなら、その残し方を少し工夫してみてはいかがでしょうか。
形のないものを上手に残すいくつかのポイントをまとめてみましょう。
- まずは過去を振り返り、じっくり思い出に浸る(これはコラムの第1回・第2回でも触れた重要なステップです)
- 自分が大切にしてきた思いや事柄を見つめ直し、家族や残される人たちに何をしてあげられるか、元気なうちに考えること
- 自分の大切なものを託せる、シンボルのようなものを見つけてみる(母と私にとっての『ぐりとぐら』の絵本のような存在)
- ちょうど良いシンボルがないなら、そうした存在を自分でつくってしまう(例えば、自分の趣味や何気ない日常の記録など)
- そうしたシンボルとなるものを囲んで“家族と語らう”機会をつくり、少しずつ自分が残したい思いや事柄のことを伝えていく
「4」は少し難しいかもしれませんが、例えば自分が「きれいだな」と感じたものを毎日スマホで撮影して、それを専用のフォルダに保存していくなどでもいいんです。
ずっと続けている趣味があるなら、その成果をまとめるでもいいですし、好きな洋服・好きな風景・好きな音楽……そういったものを心の底から楽しんだシーンを写真や文章で記録するだけでも構いません。
それを、残し、伝えたい人と、共有しましょう。
人が気持ちを傾けたり、心を動かされたりする場面には、その人となりがあふれ出るものです。そうした記録を通して、残される人たちは、その人の思いにもう一度触れることができます。
母から受け継いだ吉原家の味「ハム寿司」
私が家族に何か記録として残すなら、やっぱり手料理のレシピです。母から受け継いだ私の手料理もまた、きっと家族をとっても元気にしてくれると思うからです。
今回はそんなレシピの中から、我が家に伝わる「お母さんの手料理」をご紹介したいと思います。
その名も「ハム寿司」。バターライスを俵型にしてハムで巻き、からし醤油でいただくお寿司です。簡単ですのでみなさんもぜひ、作ってみてください。
「ハム寿司」レシピ
<材料>(2人前)
- ハム…8枚
- 米…2合
- パセリ…2房
- バター…15g
- すし酢…60cc
<作り方>
1.米をといで、ざるで5分ほど乾かす。
2.フライパンにバターを入れ、米を3分ほど炒めてから、炊飯器で炊く。
3.パセリをみじん切りにして、キッチンペーパーで包み、水で洗って絞る(緑色の水が出なくなるまで)。
4.米が炊けたら、すし酢とパセリを加え、まんべんなく混ぜる。
5.100円ショップなどで売っている俵型の押し型に入れ、成形する。
6.その上に、半分に切ったハムを乗せて完成。
できあがったハム寿司は、からし醤油につけてお召し上がりくださいね。
連載コラム「あなたの終活、間違ってます!」。第6回目となる次回は、私が終活に向き合うことになったきっかけや、死生観を育んだ原体験についてお話しします。みなさんが終活を進める上でも、参考になるポイントがきっとあると思います。どうぞお楽しみに!
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■もっと知りたい■
吉原友美
東上セレモサービス常務取締役、終活コーディネーター。家族が早くに他界した経験から死生観を育成して生きる大切さを知る。終活セミナーでは絵本を使い死生観について伝え、最新の終活事情・葬儀・お墓・相続についてもわかりやすく解説。セミナー参加数は累計2万人以上の人気を誇る。終活サポートサイト「今日から終活!」。インスタグラムはこちら。
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