乳房の張り・痛みは乳がん?更年期に多い乳腺症も解説

更年期症状?生理がないのに胸が張る原因・病気・対策

清水拓哉
監修者
Ladies clinic LOG原宿
清水拓哉

公開日:2024.03.06

更年期は心身にさまざまな不調が起こることがあり「生理がないのに胸が張る・痛む」「乳首が痛い、ピリピリ感がある」といった症状もその一つです。しかし、中には病気が隠れているケースも。胸の張りの原因、考えられる病気などについて解説します。

更年期で生理がないのに胸が張るのは病気?

「更年期で生理がないのに胸(乳房)の張りを感じる」「更年期になってからおっぱいの違和感が気になる」といった症状は、「治療の必要ない生理現象」の場合と、「病気が原因」で起きている場合があります。

生理(月経)前に、胸の張りを感じるという女性は多いです。

生理前には一時的に女性ホルモンの一つである「プロゲステロン(黄体ホルモン)」の量が増加します。プロゲステロンによって体が水分をため込みやすくなると、乳腺と乳腺のあいだでむくみのような状態になって、胸の張りにつながるのです。

胸の張りは、このような正常な現象であることが多く、この場合は治療の必要はありません。

しかし、生理前や生理中でもないのに胸の張りが続く場合、なんらかの病気が原因となっている可能性が考えられます。

胸の張りが起こる原因

胸の張りが起こる原因

ここからは、胸の張りが起こる原因について解説します。

更年期症状(更年期障害)

生理前でもないのに胸が張る場合、更年期症状(更年期障害)の影響が考えられます。

更年期とは閉経の前後5年間の期間を指し、年齢にすると40代半ば~50代半ば頃です。(日本人女性の閉経年齢は50歳前後)

更年期に差し掛かると、「エストロゲン(卵胞ホルモン)」という女性ホルモンの分泌量が大きく減少。エストロゲン分泌量の急激な変化に体が追いつかないことで、心身にさまざまな不調が起こります。

更年期の症状は個人差が大きいことが特徴で、不定愁訴の一つとして、胸に以下のような症状を感じる人もいます。

  • 胸の張りや痛み
  • 乳首(乳頭)の痛み
  • 乳首(乳頭)のピリピリ感

生理(月経)の影響

排卵や生理前の1週間ほどは、女性ホルモンの量が増加します。

 

排卵後に増えるプロゲステロンには水分をため込んだり、基礎体温を上昇させるといった作用があり、個人差もありますが、生理の3〜4日前くらいから胸の張りを感じる人が多いといわれています。

プロゲステロンの分泌が落ち着くと生理が来て、胸の張りも治まっていきます。

ホルモンバランスの乱れ

ストレスや慢性的な疲労・睡眠不足、不規則な生活は、自律神経のバランスを乱す原因になります。

自律神経が乱れると女性ホルモンのバランスにも悪影響が及び、生理前ではないのに胸が張ることも。

この他にも、イライラ、疲れやすい、眠気、頭痛、ほてりなどの体調不良を感じることもあります。

妊娠

妊娠すると、プロゲステロンの分泌が活発になるため、胸の張りや痛みが起こりやすくなります。

年齢を重ねると、卵子の質の低下が主な原因となって、妊娠する力が低下します。しかし、排卵があるうちは妊娠の可能性はゼロではありません。

厚生労働省が公表する「平成30年(2018)人口動態統計(確定数)の概況」によれば、2018年に50歳以上で出産した人は68人と報告されています。

妊娠を望まないのであれば、閉経までは避妊が必要です。

更年期で生理がないのに胸が張るときに考えられる病気

更年期で生理がないのに胸が張るときに考えられる病気

胸の張りの原因が、更年期・生理・ホルモンバランスの乱れといったものであれば、正常な現象であり治療の必要はありません。しかし、中には病気が原因となって胸の張りが起こっているケースもあります。

ここからは、胸が張るときに考えられる病気について解説します。

乳腺症

乳腺症とは、胸の張りや痛み、乳房のしこりや乳頭からの分泌物などの症状が起こる状態のことをいいます。

生理や妊娠・出産、閉経によるエストロゲン変動が主な原因です。乳腺症については、後でさらに詳しく解説します。

乳腺線維腫

乳腺線維腫とは、乳頭に生じる良性腫瘍です。乳腺に発生する良性腫瘍の中でも多く見られ、15〜35歳の女性に生じやすいとされています。

主な症状はしこり(1個〜複数個)ですが、胸の張りを感じることも。50歳代以降になると自然と消滅することが多く、女性ホルモンが影響していると考えられています。

乳腺炎

乳腺炎とは、乳腺に炎症が起こった状態です。炎症によって乳房の腫れ・赤み・痛み・熱感、しこりといった症状が起こります。

乳腺炎は大きく「急性乳腺炎」と「慢性乳腺炎」に分けられ、慢性乳腺炎は授乳経験の有無に関係なく起こるため、気になる症状がある場合は病院を受診しましょう。

高プロラクチン血症

高プロラクチン血症とは、血液中のプロラクチンというホルモンの値が高い状態です。妊娠や授乳の他、運動やストレス、薬剤、甲状腺・卵巣の機能異常、脳腫瘍の影響でも高くなることがあります。

高プロラクチン血症では、生理周期と関係なく胸の張りが起こり、乳首から乳汁が出る、月経異常、頭痛といった症状が起こります。

乳がん

乳がんは、女性にとって一番身近ながんといわれています。最も多くなるのが40代後半〜60代で、70代以降での発症も少なくありません。

代表的な症状は胸のしこり、乳腺の引き連れ、乳頭の腫れやただれ、乳頭からの血の混じった分泌物、乳房の変形などです。

胸の張りが起こることは少ないといわれていますが、しこりによって胸が張ったように感じているケースもあります。

更年期に起こりやすい「乳腺症」とは

更年期に起こりやすい「乳腺症」とは

乳腺症とは、胸に張りや痛みが起こる状態のことです。

女性ホルモンが主な原因と考えられており、40代後半以降に女性ホルモンのバランスが乱れると、乳腺症の症状が強く起こることも。乳腺症は30~50歳くらいの女性に多く、閉経後から少なくなっていきます。

ここからは、乳腺症について解説します。

乳腺症の症状

乳腺症の症状は、主に以下の3つです。

  • 胸の張りや痛み
  • デコボコしたしこり(片側もしくは両側の乳房)
  • 乳首からの分泌液(乳頭異常分泌)

乳房全体に張りや痛みが起こることがあり、しこりが痛むこともあります。乳首からの分泌液(透明なもの・濁ったもの・血液が混ざったものなど)も乳腺症の症状です。

乳腺症が進行して乳がんになるといったことはないものの、乳がんと似た症状が見られるため「乳腺症だから大丈夫」と放置せず、早めに検査を受けることが大切です。

乳腺症の原因

乳腺症の明確な原因はわかっていませんが、生理・妊娠・閉経など女性ホルモンバランスが症状に影響することから、女性ホルモンの変動が原因と考えられています。

そのため、乳腺症は誰にでも起こる可能性がある症状です。

乳腺症の治療法

乳腺症は良性の病気のため、症状が軽い場合は経過観察になることが多いです。

しかし、人によっては我慢できないほどの痛みが起こることもあり、その場合はホルモン分泌を抑制する薬で治療します。

ホルモンバランスの影響で胸が張るときの4つの対処法

ホルモンバランスの影響で胸が張るときの4つの対処法

ここからは、ホルモンバランスの影響で胸が張るときの4つの対処法を紹介します。

下着を見直す(サイズ・形・生地など)

胸を圧迫するようなきつい下着を付けていると、締めつけ感を胸の張りと感じることがあります。

また、胸への圧迫は痛みにつながることもあるため、サイズ・形状・生地など自分に合った下着を選ぶようにしましょう。

ノンワイヤータイプのブラジャーやカップ付きキャミソールでは、胸の張りを感じにくくなる傾向にあります。

一切ブラジャーを付けないで過ごすことも胸の痛みにつながる可能性があるため、自分の乳房や体のサイズに合った下着を付けて、胸をしっかりとホールドすることが大切です。

体を冷やさないようにする

体が冷えると、内臓の働きが低下してしまいます。

子宮や卵巣の動きが低下すると、女性ホルモンバランスにも悪影響を及ぼすため、衣服やエアコンの調整によって体を冷やさないようにしましょう。

運動や入浴も冷えの改善に効果的です。筋肉量が減少すると冷えやすくなるため、習慣的な運動で筋肉量アップにつなげましょう。

栄養バランスの良い食事を心掛ける

女性ホルモンバランスを整えるためには、栄養バランスの良い食事を心掛けることが大切。どうしても栄養バランスが偏りがちという人は、不足分をサプリメントで補うのも一つの方法です。

また、カフェイン・脂肪・ニコチンは乳房の痛みと関連があると考えられており、過剰摂取すると痛みの悪化につながることも。

カフェインと脂肪の取り過ぎに注意したり、禁煙したりすると症状緩和が期待できます。

うまくストレス発散をする

慢性的なストレスは、自律神経に悪影響を与え、ホルモンバランスを乱す原因になります。

完全にストレスを取り除くことは難しいかもしれませんが、趣味やスポーツ、十分な睡眠、リラックスできる休息を取るなど、適度にストレス発散しましょう。

更年期で生理がないのに胸が張る│受診の目安は?何科?

生理前の他にも、更年期症状やホルモンバランスの乱れによって胸の張りが起こることがあります。

しかし、なんらかの病気が胸の張りにつながっている可能性もゼロではありません。以下のような症状が見られる場合は、一度病院を受診しましょう。

  • 症状が2週間以上続く
  • 胸の張りが強い
  • 痛み・赤みがある
  • 血液や膿のような乳汁や分泌物が排出される
  • 明らかなしこりがある
  • 乳房がひきつるような感じがある
  • 陥没や変形がある

受診する先は「乳腺外科」がいいでしょう。近くにない場合は、外科もしくは婦人科でも対応できる場合があるため、一度電話などで確認してみましょう。

気になる胸の張りは早めに詳しく調べることが大切

生理前後ではなくでも更年期症状やホルモンバランスの乱れによって胸の張りが起こることがあり、このようなケースでは治療の必要はありません。

しかし、中には病気が隠れているケースも。胸に張りや痛みが起こる乳腺症は、更年期に起こりやすいともいわれています。

また、乳がんは女性に身近ながんといわれ、40代後半〜60代が発症のピークです。「生理現象だから、乳腺症だから」と自己診断せず、気になる症状があれば早めに病院を受診しましょう。

監修者プロフィール:清水拓哉さん

清水拓哉さん

明治神宮前駅から徒歩3分、JR原宿駅より徒歩7分とアクセスの良い都心部でLadies clinic LOG原宿を昨年開業しました。生理不順や生理痛、更年期症状など女性特有のお悩みを患者様と一緒に考え、診療を行っています。また、プラセンタ注射や、日本で導入しているクリニックが少ない内膜ポリープなどの日帰り手術も行っています。 

■もっと知りたい■

ハルメク365編集部

女性誌No.1「ハルメク」の公式サイト。50代からの女性の毎日を応援する「観る・聴く・学ぶ・つながる」体験型コンテンツをお届けします。
会員登録をすれば、会員限定動画を始めさまざまな特典が楽しめます!

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

いまあなたにおすすめ

注目の記事 注目の記事