「足の先生」長﨑和仁の足のトラブルQ&A・5

75歳以上の4人に3人が発症!下肢静脈瘤の予防法

公開日:2021/08/07

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足の専門医・長﨑和仁さんの著書『足の先生!足のむくみ、だるさ、冷え、下肢静脈瘤どうすればラクになるか教えてください。(アスコム刊)』から、足のトラブルの予防・対処法を紹介します。今回のテーマは、下肢静脈瘤の予防です。

下肢静脈瘤の予防法

下肢静脈瘤とは、どんな病気?

下肢静脈瘤とはどんな病気?

下肢静脈瘤とは、足にある静脈が血液の逆流を起こすようになり、それによって生活に不具合が出る病気です。

足がむくんだり、痛くなったり、だるくなったり、コブのような凸凹ができたり、足の表面に見苦しい模様が浮かんだり、さまざまな症状があります。テレビの健康番組などでよく耳にするようになった病名ですが、そのわりには実態がよく知られていなかったりします。

人間の体にある血管には、動脈と静脈があります。動脈は心臓から血液を送り出すための血管で、静脈は体の各部から心臓に血液を戻すための血管です。

動脈は心臓の力強いポンプとしての圧力を受けていますが、静脈にはそれがありません。そのため、血液が逆流しないで心臓まで戻せるように、静脈の中には逆流防止の弁があります。この弁は両足で100個くらいあります。

動脈と静脈の違い

動脈と静脈は同じような管だと思っている人が多いのですが、いろいろな違いがあります。最も大きな違いは、動脈には弁がなく、静脈には弁があるということです。動脈(左)は心臓からの強い血圧を受けるので、弾力性に富み、丈夫。静脈(右)は内部に弁があって、血液の逆流を防いでいます。

動脈と静脈の違い
動脈(左)と、静脈(右)

年をとったり、いろいろな条件が重なったりすると、その弁が壊れて静脈内の血液が逆流することがあります。これが足の静脈で起こるのが「下肢静脈瘤」です。足は心臓から遠く、立ったとき心臓より下にあるため、特に逆流が起きやすいのです。

静脈の弁は膜のような組織なので、大きな力を受けると簡単に壊れてしまいます。しかも、爪や皮膚とは違い、いったん壊れてしまうと再生することがありません。弁が壊れた静脈は、もう血液を心臓に戻す役割が果たせなくなり、重力に引かれた血液が溜まって膨らみます。それが足の凸凹になって目に見えるわけです。

心臓に送られない血液は足に溜まって、いろいろな不具合を起こします。我慢できないくらいの痛みが発生すると歩けなくなることもあるので、何らかの対応が必要になります。

どうやって発見する? チェック方法は?

下肢静脈瘤はどうやって発見する

足の静脈に逆流があり、足にさまざまな不具合などの症状があれば、下肢静脈瘤と診断できます。それには医師の診察が必要で、一般の方が「私は下肢静脈瘤だ」と断定するのは、なかなかむずかしいのですが、疑いを持つことはできます。

次のチェック項目のうち、半分以上が該当したら、下肢静脈瘤である可能性が高いかもしれません。

下肢静脈瘤の症状チェックリスト

  • 親や親族に下肢静脈瘤の人がいる
  • 妊娠または出産したことがある
  • 仕事が基本的に立ち仕事である
  • 仕事はデスクワークで座っていることが多い
  • 日常的に運動不足を感じている
  • 毎日の歩数が4000歩以下
  • 足がむくみやすい
  • よく足が痛くなる
  • 足がすぐだるくなる
  • 足の血管が浮いて見える
  • 足の表面が凸凹している
  • 寝ていて足がつることがよくある
  • 足に湿疹やかゆみがある

下肢静脈瘤はどんな症状? 医師の診断は必要なの?

下肢静脈瘤の症状は?

典型的な症状は足の痛みです。足がよくつる、足がむくんで重だるいという人も少なくありません。足がむくんで皮膚がパンパンに張ることにより、皮膚がかゆくなったり、黒ずみができたり、潰瘍(かいよう)になるといった皮膚の症状を訴える人もいます。皮膚に潰瘍ができると、そこから感染して別の病気になる可能性が出てきます。

軽度な下肢静脈瘤までであれば、症状が我慢できる限り、様子を見ているだけでもかまいません。痛いとか足がつるなどの症状が出たり、皮膚症状が出始めたりしたら、医師の診断を受けて治療したほうがいいでしょう。

脅かすわけではありませんが、そのまま放置すると、場合によっては傷ができてもなかなか治らなくなったり、痛みが耐えられなくなったりすることがあります。

これは違う病態なのですが、血栓症を招くことにより、深部静脈血栓症になるリスクが高くなります。そうなると、血栓が肺に飛んで致命的になることも可能性としては出てきます。

症状がひどくなければ、放っておいても大丈夫?

足がつって安眠できない

現在どんな症状があるか、日ごろどのような生活をしているかによって答えが違います。今の症状が「痛みが我慢できない」「痛くて歩けない」「夜中に足がつって安眠できない」といったような、生活の質を下げてしまうほどであるなら、病院に行ったほうがいいでしょう。

また、症状がそれほどひどくなくても、立ち仕事や座り仕事で1日に歩く歩数が2000歩程度であるなら、放っておくことで症状がどんどん悪化することが予測されます。

基本的に、下肢静脈瘤は自然に治ることのない病気です。放っておいても大丈夫といえるのは、現在の症状がごく軽く、その進行がゆっくりで、しかも日常的に1日8000歩程度歩いている人の場合だけです。

もし足の皮膚に治りにくい傷ができたり、足の皮膚がとてもかゆくなったり、発疹ができたりといった皮膚の症状が出た場合は、すぐに病院に行きましょう。皮膚だからと皮膚科にかかると下肢静脈瘤が見逃されてしまうことがあるので、下肢静脈瘤専門クリニックや血管外科など、下肢静脈瘤の治療ができる医療機関にかかることをおすすめします。

下肢静脈瘤は、年齢と関係ある?

下肢静脈瘤は年齢と関係ある?

大いにあります。下肢静脈瘤の原因で最大のものは、加齢です。若い人にはほとんど見られず、75歳以上の4人に3人が発症するということでも明らかでしょう。

加齢が発症の原因になるのは、次のような理由からです。

静脈の中にある血液の逆流を防止するための弁が壊れることでこの病気が起こりますが、この弁は一度壊れると再生されません。したがって年齢とともにこの病気のリスクが高くなっていきます。

一般に年をとると運動量が減っていきます。特に体のどこかが痛いなどで歩くのが億劫になると、たちまち家から出ない生活になりかねません。

下肢静脈瘤を防ぐ一番の方法は、ふくらはぎの筋肉を動かして、ポンプ作用により足に溜まった血液を心臓に押し戻すことです。ところが運動不足でふくらはぎを動かさないと、それができなくなってしまいます。

年をとっても1日に8000歩を目安に歩くこと。それも歩幅を大きめにとって、早歩きをすることです。それが下肢静脈瘤の発症や進行を抑えます。

以上、【下肢静脈瘤】の予防法でした。次回は、家でできる【足のトラブル解消法】を紹介します。

ライタープロフィール:長﨑 和仁

ながさき・かずひと 下北沢病院副院長。心臓血管外科専門医。慶応義塾大学医学部卒業後、スタンフォード大学外科フェローとして渡米。帰国後、浜松日本赤十字病院、さいたま市立病院を経て現在に至る。足の総合病院・下北沢病院で、「切断やむなし」でも多くの温存例を出すなど、「足をトータルで診る」治療で話題になる。

※本記事は、『足の先生!足のむくみ、だるさ、冷え、下肢静脈瘤どうすればラクになるか教えてください。』(株式会社アスコム/1485円・税込)より一部抜粋して構成しています。

■もっと知りたい■


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この連載の引用元である『足の先生!足のむくみ、だるさ、冷え、下肢静脈瘤どうすればラクになるか教えてください。(アスコム刊)』では、足の専門病院の副院長・長﨑 和仁さんが、足のむくみ、だるさ、冷え、そして下肢静脈瘤といったツラい、なかなか治らない「足のトラブル」について、どうすればラクになるかをしっかり教えてくれます! 足のトラブルにお悩みの人は、あわせてチェックしてみてくださいね。

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長﨑和仁

下北沢病院副院長。心臓血管外科専門医。慶応義塾大学医学部卒業後、スタンフォード大学外科フェローとして渡米。帰国後、浜松日本赤十字病院、さいたま市立病院を経て現在に至る。足の総合病院・下北沢病院で、「切断やむなし」でも多くの温存例を出すなど、「足をトータルで診る」治療で話題になる。

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