生きるのが少し楽になる「逃げヨガ」(6)

「人生、どうする?」迷ったときの足腰を鍛えるポーズ

公開日:2021.03.24

ヨガインストラクターのタダヒコさんが、生きるのが少し楽になる”心”をほどく「逃げヨガ」を伝えます。最終回は「これからの人生、どうすればいいのか」と悩んでいる人のための考え方と、一歩を踏み出す力をつけるための足腰を鍛えるポーズを紹介します。

ヨガインストラクターのタダヒコさん

こんにちは、ヨガインストラクターのタダヒコです。押さえつけられて小さくなっていた心身を、深い呼吸とシンプルなポーズで取り戻し、生きる力と自由を手に入れる「逃げヨガ」をお伝えしています。

仕事や子育て、親のことなどで大忙しの50代。人によっては、子育てが始まってから自分の時間をまったく持たないまま、今日に至っているという方も多いかもしれません。自分の時間を持てるようになると、「あれ、何をすればいいんだっけ?」とわからなくなってしまうことってありますよね。

私たちは幼い頃から、「××であるべき」と「正解」を出し続けることを繰り返し教えられてきました。学校で勉強して、就職して、結婚して、子どもを産んで育てて……。さも当然のように誰かが敷いたレールを走ってきて、その続きが見えなくなってしまった状態なのだと思います。

そんな今こそ自分が進みたい方向を、自分で決断する人生が始まったと思ってください。「どうすべきか」という抑圧的な考え方ではなく、いっそ「どう生きても大丈夫」と自由に考えた方が楽になるはず。自由になると、世界が変わって見えてきますよ。

幸せは目指すものでなく、湧いてくるもの

幸せは目指すものでなく、湧いてくるもの

こういうとき、一般的には「好きなことをやればいい」「自分が夢中になれる趣味を作る」というアドバイスがあると思います。でも選んでこなかった人にとって、自分の好きなことがわからないから困ってしまうんですよね。

好きなこと、大切にしたいものがパッと思いつかない方は、子どもの頃に好きだったこと、熱中したことを思い出してみるのもいいかもしれません。

そして、「××しなきゃ」「××すべき」という思考を、少しずつ「~したい」に置き換えていきましょう。

「~したい」と思う練習は、小さなことから始めてみるといいでしょう。例えば、今夜のおかず。「夫、子どもが好きなメニューにすべき」と考えている方も多いと思います。そのこと自体は素敵なことです。

でも、もし「これからの人生、どうしていけばいいのか」と悩むのであれば、そろそろご自身の意見を聞いてあげるレッスンを始める頃かもしれません。まずは今夜のおかずから、ご自分の好きなものにしてみましょう。

これからは、まっさらなキャンバスに新しい絵を描くのと同じ。今まで他者の指示を受けてきた一幕は終わって、新しいステージに入ったと思って、小さなことから自分の声に気付いていきましょう。「何が飲みたいか」「何が食べたい」か、小さな決断を繰り返すことで、選んでいる自分に意識的になれます。

もう、他人が決めた道を歩かなくてもいいんです。人生に正解の道があるわけではありません。ヨガでは、幸せは「目指すもの」ではなく「湧いてくるもの」として捉えます。あなたが小さな決断を繰り返すとともに、”今”ある小さな幸せを感じ取ったとき、人生を振り返ると幸せな道ができていると感じられるはずです。

自分の心を知るためには、感覚を取り戻すことも大切

自分の心を知るためには、感覚を取り戻すことも大切

私も生きていくのがつらいとき、常に考え事を繰り返していました。

「このままの自分ではダメだ」「もっとこうならなければ」「こうあるべきだ」だと、自己否定を繰り返す思考をしていました。

また仕事や家庭に追われたり、心身の不調を抱えたりする日々を送っていると、つい「昔は良かった」とか「あの時、こうすればよかった」といった過去のことや、「コロナはいつ収束するのだろう」とか「老後のお金はどうなるんだろう」といった未来のことに意識が定まってしまいがちです。

でも私たちが唯一時間を過ごせるのは、「今」しかありません。つい、おざなりにしてしまいがちな「今」を堪能することこそ、幸せを感じるためには必要です。そのためには、一度思考をお休みして感覚を取り戻すことをおすすめします。

深呼吸をして心を落ち着かせたら、優しいそよ風、葉の擦れる音、鳥の歌声、自分の呼吸の音、心臓の動きを五感で感じてみましょう。感覚を取り戻すと同時に、心の平穏が生まれ、静かな幸福感に満たされます。

このとき、心の状態を内観してみると、晴れやかな青空の状態ではないかもしれません。もくもくと雲のように、感情や思考が湧き上がってくるかもしれません。でもそれは、青空に浮かぶ雲。風とともに流れていく様子をただ眺めましょう。

もちろん、頭で考えて生きていくことは必要なことです。でも忘れてしまいがちな、自分の心も大切にしたいものです。頭で考えたときに「こうあるべきだから、問題ない」と思っていても、実は心は悲鳴を上げているかもしれません。そんな心の声に気付いたら、逃げてもいいんですよ。

いろいろな人に「××した方がいい」「普通は、××だ」「××だとおかしい」「もっと××すべき」といろいろ言われてきた人生。今日までそんな人たちの声を聞いて、一生懸命やってきた自分を労わって「よくやったね」と褒めてあげてください。

理想とはかけ離れている自分かもしれないけれど、心が満ち足りたときに人生が始まります。自分を認めることがエネルギーのチャージにもなって、新たな一歩が踏み出しやすくなりますよ。

足腰を鍛える3つのポーズ

今回は、足腰の筋肉を鍛える動きです。足は寿命と直結しています。まだまだ先は長いですから、自由を満喫するためにも、足腰を楽しみながら鍛えましょう。たとえ嫌なことがあっても、足腰さえ丈夫なら、心身ともに「逃げ切れ」ます。

ヨガの基本の呼吸方法

ポーズを行う際には、ヨガの基本の呼吸を繰り返し行いましょう。鼻から吸って、鼻から吐きます。苦しいときは口から吐いてもいいです。お腹の底を満たすように吸い、息を吐くときはおへその辺りから押し出すように、細く長く息を吐き出しましょう。

動画で見る

 

空気椅子のポーズ

空気椅子のポーズ

壁から少し離れたところに立ち、両足をそろえます。両手を後ろの壁についてから、上半身を壁につけます。徐々にひざを曲げて(90度くらいをイメージして)ください。両手を合掌。太もも同士をキューッと集めます。5秒から始めてみて、徐々に時間を延ばしていくといいでしょう。つらいときほど、口角を上げて余裕のある表情で取り組んでみてくださいね。
ほどよく刺激が加わったと思ったら、ひざをそのまま伸ばし、壁に手をついてからゆっくり壁から離れましょう。

ひざ裏を伸ばすポーズ

ひざ裏を伸ばすポーズ

左足を前に踏み出して、右足を後ろの遠くに伸ばします。両手を壁につけましょう。右足をさらに遠くに伸ばし、息を吐きながら上がったかかとをじわじわと床に近付けていきます。両手で壁を押しながら、頭と右足の角度が斜め一直線になるようにイメージします。お腹から力が抜けてしまわないように、お腹を薄くして40秒ほどキープします。
ふくらはぎの筋肉がストレッチされます。終わったら手で壁を押して上体を起こします。反対側も行いましょう。

足首をほぐす


足首をほぐす

床に座り、片ひざを立てます。足首には細い筋肉の線維が通って束のようになっており、ここが固いとつまづきやすく、転びやすくなるそうです。

軽く握りこぶしを作り、骨のごつごつしたところで足首をほぐす

軽く握りこぶしを作り、骨のごつごつしたところで足首をほぐしていきます。線維を切るようにイメージして、横にこぶしをごしごし動かします。
今度は縦に動かします。線維に添わせて、こぶしを使ってほぐしていきます。体にも意識があると言われていますから、今日もありがとうねと感謝を込めてほぐすといいでしょう。適度に刺激したら、反対側も行ってください。

 

ヨガインストラクター・タダヒコさんのプロフィール

ヨガインストラクター・タダヒコさん

学童期から、人間の心理に興味があり、多数の書物に触れる。ある時期に自分自身の基本的な考え方、捉え方と共通するものをヨガの中に見出す。スタジオヨギーのトレーニングコースやクラスを担当、他スタジオのプログラム監修やオーディション審査、指導者の研修指導などを行う。瞑想、禅、ヨガ、タオ、タントラ、スーフィーなど日々学びを深めている。自身の稽古スペースでは、オンラインでもレッスンを行っている。http://tadahikoyoga.wp-x.jp/

著書に、『たった10秒で心をほどく 逃げヨガ』(双葉社刊)1540円。

たった10秒で心をほどく 逃げヨガ

たった10秒で心をほどく 逃げヨガ

動画撮影=中村彰男

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