よくおならが出る原因とは?症状・治療法・よくある質問【医師監修】
よくおならが出る原因とは?症状・治療法・よくある質問【医師監修】
公開日:2025年10月15日
この記事3行まとめ
✓おならがよく出る主な原因は、空気の飲み込みすぎ、食生活の乱れ、ストレス、便秘、そして加齢に伴う変化です。
✓50代・60代は女性ホルモンの減少が腸の動きに影響しやすく、意識的な腸活やストレスケアが特に重要になります。
✓つらい症状や腹痛などを伴う場合は、ためらわずに消化器内科へ。適切な治療で改善が期待できます。
おならが出るのはなぜ?
おならは、口から飲み込んだ空気や、腸内細菌が食べ物を分解する際に発生するガスが混ざり合ったもの。健康な人でも1日に10〜20回程度は排出される、ごく自然な生理現象です。
しかし、回数が異常に増えたり、お腹の張りを強く感じたり、臭いが気になって社会生活に支障をきたしたりする状態は、単なる生理現象ではなく、体からのサインかもしれません。
50代・60代の女性がおならの悩みを抱えやすくなる背景には、「加齢による消化機能の低下」と「女性ホルモンのゆらぎ」という、二つの大きな変化が関係しています。
- 消化機能の低下:年齢とともに、胃酸や消化酵素の分泌は自然と減少します。これにより、食べ物が十分に消化・吸収されにくくなり、腸内でガスが発生しやすくなります。
- 女性ホルモン(エストロゲン)の減少:エストロゲンには、自律神経のバランスを整え、腸の蠕動(ぜんどう)運動をサポートする働きがあります。閉経期を迎えエストロゲンが急激に減少すると、自律神経が乱れやすくなり、腸の動きが不安定に。便秘や下痢を起こしやすくなるだけでなく、腸にガスが溜まりやすくなるのです。
よく見られる身体的症状
- 1日に20回以上、頻繁におならが出る
- お腹がゴロゴロと鳴り、ガスが溜まってパンパンに張る感じがする(腹部膨満感)
- 自分の意思とは関係なく、おならが漏れてしまうことがある
- 長引く便秘や、逆に下痢を繰り返す
- おならの臭いが以前よりも格段にきつくなったと感じる
心理的な変化
- 「またおならが出たらどうしよう」という予期不安に常にかられる
- 会議中や電車の中など、静かな場所や人が密集する空間が苦痛になる
- おならを気にするあまり、友人との旅行や食事会を心から楽しめない
- 不安やストレスを感じると、さらにお腹の張りが強くなるという悪循環に陥る
統計データ(厚生労働省調査より)
おならの回数に関する直接的な大規模調査は多くありませんが、関連症状である「腹部膨満感」や「便秘」は、国民生活基礎調査などで非常に多くの人が抱える症状として報告されています。特に便秘は女性に多く、年齢とともにその割合は増加傾向に。これが、おならの悩みに繋がる大きな要因の一つと考えられています。
よくおならが出る原因とメカニズム
主な原因
おならがよく出る主な原因は、複合的であることがほとんどです。ご自身の生活習慣と照らし合わせてみましょう。
1. 生理学的要因
- 空気の飲み込みすぎ(呑気症・どんきしょう):食事を急いで食べたり、よくしゃべりながら食べたり、ストレスで無意識に唾を飲み込む癖があると、大量の空気を一緒に飲み込んでしまいます。これがげっぷやおならの主な原因となります。
- 腸内環境の乱れ:腸内には多種多様な細菌がいますが、加齢や食生活の乱れ、ストレスなどで悪玉菌が優位になると、腸内で異常発酵が起こり、臭いの強いガスが大量に発生します。
- 便秘:便が腸内に長く滞留すると、それをエサに悪玉菌が増殖。悪玉菌が動物性たんぱく質を分解する際にアンモニアや硫化水素といった臭いの強いガスが発生しやすくなります。
2. 環境的要因(食生活・生活習慣)
- ガスを発生させやすい食事:食物繊維が豊富なイモ類、豆類、ごぼう、玉ねぎなどは、腸内で発酵しやすくガスを発生させます。これらは不溶性食物繊維であり、便のカサとなるため便秘の方の食事療法としても用いられますが、過剰に摂取するとガス発生の原因となります。またこれらの食事は高FODMAP(フォドマップ)食にも該当します。高FODMAP食とは小腸内で消化・吸収されにくい糖質であり、この糖質を多く含む食品を食べ過ぎると、大腸内で過剰な発酵を起こして、ガス発生の原因となります。そのほか、ビールなどの炭酸飲料、人工甘味料などもガスの原因になります。
- 臭いを強くする食事:肉類や卵、ニンニク、ニラなどに多く含まれるタンパク質や硫黄分は、分解されると臭いの強いガスの元になります。
- 運動不足:デスクワーク中心の生活や、運動習慣がないと、腸の動き(蠕動運動)が鈍くなります。すると、発生したガスが腸内に溜まりやすくなり、お腹の張りに繋がります。
- 過敏性腸症候群(IBS):がんや炎症などの腸の病気がなく、ストレスなどの心理的な異常により腹痛や腹部不快感、下痢・便秘などの症状を起こす病気です。この病気を有する方のなかには、腹部腹満感やおならが多いタイプの方もいて、高FODMAP食やストレスが原因で増悪しやすくなります。
- 乳糖不耐症:乳製品に含まれる乳糖をうまく分解できない体質(乳糖不耐症)の方は、腸内で乳糖が発酵しガスが発生します。これにより、おならが多くなるだけでなく、下痢や腹痛を引き起こすこともあります。年齢とともにラクターゼ(乳糖分解酵素)の生成が減少するため、症状を起こすことがあります。
- グルテン不耐症:小麦や大麦などに含まれるたんぱく質の一種であるグルテンに対して過敏に反応するグルテン不耐症の人がいます。グルテン不耐症の人が、グルテンを摂取すると腸内環境が乱れ、腹痛や便通異常、ガスだまりなどの症状の原因となります。
- SIBO(小腸内細菌異常増殖症): 小腸内の細菌が過剰に増殖することによって、食べ物が発酵してガスが発生します。その結果、腹部膨満、げっぷ、おならなどの症状を起こすことがあります。原因としては、小腸の動きが悪くなるような腸管運動障害(糖尿病性神経障害、膠原病など)、 胃酸が少ない方などが挙げられます。
- リーキーガット症候群(腸漏れ症候群):腸のバリア機能が破綻することで腸内の物質が漏れ出て、血中に入ってしまう状態です。その結果、腹痛や腹部膨満以外にも皮膚トラブルやメンタルヘルス、アレルギーにも影響します。原因としては、高脂肪食、アルコール、感染症などが挙げられます。
3. 心理社会的要因
- ストレス:50代・60代は、親の介護、自身の健康問題、仕事上の立場など、さまざまなライフステージの変化に伴うストレスに直面しやすい年代です。ストレスは自律神経の司令塔である脳に直接影響し、腸の正常な機能を乱します。腸は「第二の脳」と呼ばれるほど脳と密接に関係しており、ストレスが腸の不調を引き起こし、おならの症状を悪化させることがあります。
- おならへの過剰な意識:「おならは恥ずかしいもの」という強い思い込みが、かえって症状を悪化させることも。一度気になり始めると、「また出たらどうしよう」という不安が新たなストレスとなり、さらにお腹の張りが強くなるという悪循環に陥りがちです。
発症メカニズム
おならの成分の約7割は、食事などと一緒に口から飲み込んだ窒素や酸素といった無臭の空気です。残りの約3割が、腸内細菌が食べ物のカスを分解する過程で作られるガス。
この中には、水素やメタンのほか、ごく微量ながら、硫化水素、インドール、スカトールといった強烈な臭いを持つガスが含まれます。腸内環境が悪化すると、この臭いガスの産生が増加。
さらに、便秘や運動不足で腸の動きが悪いと、これらのガスがうまく排出されずに腸内に溜まり、量が増え、お腹の張りや頻繁なおならといった症状を引き起こすのです。
リスク要因
- 早食いや「ながら食べ」の習慣がある
- 仕事や家庭で強いストレスを感じている
- 普段あまり運動をする習慣がない
- 慢性的な便秘に悩んでいる
- 食事は肉類や揚げ物など、脂っこいものが中心だ
- 過去に過敏性腸症候群(IBS)と診断されたことがある
- 閉経を迎えてから、体の不調を感じることが増えた
診断方法と受診について
つらい症状は我慢せず、専門医に相談することが解決への第一歩です。
いつ受診すべきか
セルフケアを試しても改善しない場合や、以下のような症状が見られる場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
- おならの回数が急に増え、市販薬や生活改善でも一向に良くならない
- 強い腹痛、吐き気、持続する便秘や下痢、血便、急激な体重減少などを伴う
- おならの悩みが原因で、仕事や社会生活に支障が出ている
診断の流れ
多くの場合、特別な検査の前に、丁寧な問診と診察で原因を探っていきます。
1. 問診で確認すること
医師は、診断の手がかりを得るために、生活背景を含めて以下のような質問をします。些細なことでも、思い当たることは遠慮なく伝えましょう。
- いつから症状が気になり始めましたか?
- 1日に何回くらいおならが出ますか?臭いは気になりますか?
- げっぷや上腹部の膨満感はありますか?
- 腹痛や便秘、下痢など、他に気になる症状はありますか?
- どのような状況で症状が悪化しますか?(食後、緊張時など)
- 食生活や生活習慣で、最近変わったことはありますか?
- ストレスに感じていることはありますか?
- これまでにかかった病気や、現在服用中の薬、サプリメントはありますか?
2. 身体検査
お腹の音を聴診器で聞いたり(聴診)、お腹を優しく触って張りや痛みの場所、しこりの有無などを確認したりします(触診)。これは、腸の動きやガスの状態を把握するための基本的な診察です。
3. 代表的な検査例
他の病気が疑われる場合など、必要に応じて以下のような検査を行うことがあります。
- 血液検査:体内に炎症がないか、貧血や栄養状態に問題がないかなど、全身の状態をスクリーニングします。
- 便検査:腸内に炎症の原因となる細菌が生息していないか調べる便培養検査、腸内に出血をきたす異常がないか調べる便潜血検査、腸内環境を調べる腸内フローラ検査など。
- 腹部X線検査:腸内に溜まったガスの量や分布、便の状態を画像で確認し、腸閉塞などがないかを調べます。
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ):血便や体重減少など、大腸がんや炎症性腸疾患を疑う症状がある場合に行われます。肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内部を直接観察して、ポリープや炎症、がんなどの器質的な病気がないかを確認する重要な検査です。
受診時の準備
受診の際は、「いつから、どのような症状が、どんな時に、どの程度あるか」を時系列でメモしておくと、医師に状況を正確に伝えやすくなります。
また、ここ1〜2週間の食事内容や排便の状況(回数、便の硬さなど)を記録して診察前の問診に記載することも、診断の大きな助けになります。お薬手帳も忘れずに持参しましょう。
受診すべき診療科
おならの悩みは、まず「消化器内科」や「胃腸内科」への受診が適切です。
デリケートな悩みだからこそ、女性医師のいるクリニックを探したり、まずは信頼できるかかりつけ医に相談して専門医を紹介してもらうのも良いでしょう。
受診をためらう必要は全くありません。医師は多くの同じ悩みを持つ患者さんを診ていますから、安心して相談してください。
よくおならが出る場合の治療法
治療方針の決定
問診や検査の結果に基づき、原因に応じた治療法を医師と相談しながら決定します。中心となるのは生活習慣の改善ですが、症状が強い場合は薬物療法を組み合わせることもあります。
大切なのは、ご自身の症状やライフスタイルに合った治療を、焦らずに続けることです。
薬物療法
- 整腸剤:乳酸菌やビフィズス菌、酪酸菌などの善玉菌を補い、乱れた腸内細菌のバランスを整えます。臭いの改善にも繋がります。
- 消化管機能改善薬:腸の動きを穏やかに調整し、ガスの排出をスムーズにしたり、異常な運動を抑制したりします。
- 漢方薬:個々の体質(証)に合わせて処方されます。例えば、冷えや腹部膨満感には大建中湯(だいけんちゅうとう)、ストレスによる腹痛や下痢・便秘の繰り返しには桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)などが用いられることがあります。
- ガス駆除薬:腸管内で発生した細かいガスの泡を合体させて体積を減らし、排出されやすくする薬(ジメチコンなど)です。お腹の張りが強い場合に有効です。
- その他:不安やストレスが非常に強い場合は、短期間、抗不安薬などが処方されることもあります。
(いずれの薬も、ご自身の判断で服用せず、必ず医師の診断と処方を受けてください)
非薬物療法
- 食事療法(栄養指導):特に過敏性腸症候群(IBS)が疑われる場合、管理栄養士の指導のもと、ガスが発生しにくい食事(低FODMAP食)を試みることがあります。これは、発酵しやすい特定の糖質(オリゴ糖、二糖類、単糖類、ポリオール)を一時的に制限し、症状の改善を見る食事法です。原因となる食品群を特定し、その後、食べられるものを見つけていくという段階的なアプローチが取られます。
- 運動療法:専門家の指導のもと、ウォーキングやヨガなど、腸の動きを活発にし、自律神経を整えるための運動プログラムを実践します。
- 認知行動療法:おならへの強い不安や恐怖心(広場恐怖など)が生活に支障をきたしている場合、その考え方の癖を客観的に見つめ直し、行動パターンを修正していく心理療法が有効なこともあります。
(ご自身の判断で行わず、必ず医師や専門家の指導を受けてください)
生活習慣による管理
治療の基本であり、最も重要なのが、日々の生活習慣の見直しです。
- 食事:バランスの取れた食事を、1日3食、決まった時間に、ゆっくりよく噛んで食べる。
- 運動:毎日30分程度のウォーキングなど、軽めの有酸素運動を習慣にする。
- 睡眠:質の良い睡眠を十分にとり、自律神経のバランスを整える。
- ストレス管理:趣味に没頭する時間や、心からリラックスできる時間を持つ。
治療期間と予後
原因や症状の程度によって治療期間は人それぞれです。特に生活習慣の改善は、効果を実感するまでに数週間から数か月かかることも珍しくありません。焦りは禁物です。根気強く、できることから一つずつ生活に取り入れていく姿勢が大切です。
多くの場合、適切な治療とセルフケアによって症状は着実に改善し、おならに悩まされない快適な日常生活を取り戻すことができます。
予防法と日常生活での注意点
一次予防(発症予防)
- 腸内環境を育む食生活:食物繊維(特に水溶性食物繊維)を豊富に含む海藻、きのこ、大麦などを積極的に摂りましょう。また、味噌、納豆、ぬか漬けなどの日本の伝統的な発酵食品は、良質な乳酸菌を手軽に補給できる優れた食品です。
- 適度な運動の習慣化:ウォーキングは、腸に心地よい刺激を与え、蠕動運動を促します。エレベーターを階段にする、一駅手前で降りて歩くなど、日常生活の中で体を動かす工夫をしてみましょう。
- 上手なストレスマネジメント:ヨガや瞑想、アロマテラピーなど、自分に合ったリラックス法を見つけましょう。友人との会話や趣味の時間も、心を解放する大切なひとときです。
二次予防(早期発見・早期治療)
- 「便」は健康のバロメーター:毎日のお通じの状態(色、形、量、臭い)を観察する習慣をつけましょう。スマートフォンアプリなどを活用して「排便日誌」をつけるのもおすすめです。
- 定期的な健康診断:40歳を過ぎたら、定期的に胃や大腸の検診を受けることが、病気の早期発見・早期治療に繋がります。
日常生活の工夫
- 食事は「ゆっくり、よく噛んで」を徹底:一口30回を目安に。これにより空気の飲み込みを防ぎ、消化酵素の分泌を促して消化を助けます。
- お腹を冷やさない:腹巻やカイロ、温かい飲み物などで、常にお腹まわりを温かく保ちましょう。血行が良くなり、腸の働きが活発になります。
- ガス抜きのポーズを習慣に:就寝前や朝起きた時に、布団の上でできる簡単なストレッチを取り入れましょう。仰向けに寝て両膝を抱え、胸にゆっくり引き寄せる「ガス抜きのポーズ」は、腸に溜まったガスを排出しやすくするのに効果的です。
- 服装の工夫:お腹を締め付けるようなきつい服装は避け、ゆったりとしたリラックスできる服装を心がけましょう。
家族・周囲のサポート
おならの悩みは非常にデリケートで、家族にも打ち明けられずに一人で抱え込みがちです。もし、ご家族が悩んでいる様子であれば、「何か困っていることはない?」と優しく声をかけ、話を聞く姿勢を見せることが大切です。
本人の悩みを真摯に受け止め、食事のメニューを一緒に考えたり、ウォーキングに誘ったりするなど、具体的な行動で寄り添うことが、何よりのサポートになります。
よくある質問(FAQ)
Q1: おならが臭いのはなぜですか?何か対策はありますか?
A: おならの臭いの主成分は、腸内の悪玉菌がタンパク質や脂質を分解する際に発生する「硫化水素」や「インドール」といったガスです。肉類中心の食生活、便秘、ストレスなどで腸内環境が悪化し、悪玉菌が増えると、これらの腐敗ガスが増えて臭いが強くなります。
対策としては、善玉菌のエサとなる水溶性食物繊維(海藻、大麦など)や発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)を積極的に摂り、腸内の善玉菌を増やすことが最も効果的です。
Q2: 昔よりおならの回数が増えた気がします。病気でしょうか?
A: おならの回数には個人差があり、1日の平均は10〜20回と幅があります。回数だけで一概に病気とはいえません。加齢による消化機能の低下、食生活の変化、ストレスなどが原因で回数が増えることは、誰にでも起こり得ます。
ただし、急激に回数が増えた、市販薬を飲んでも全く改善しない、強い腹痛や血便、体重減少など他の症状を伴う場合は、過敏性腸症候群や、まれに大腸の病気が隠れている可能性も否定できません。
心配な症状が続く場合は、一度消化器内科で相談してみることをおすすめします。
Q3: 緊張するとおならが出やすくなります。ストレスと関係ありますか?
A: はい、ストレスと腸は自律神経を介して密接に繋がっており、緊張するとおならが出やすくなるのは典型的な症状の一つです。強いストレスを感じると、交感神経が優位になり、腸の動きが過敏になります。
また、無意識のうちにゴクリと唾を飲み込む回数が増え、大量の空気を一緒に飲み込んでしまう「呑気症(どんきしょう)」を引き起こしやすくなります。これが、腸にガスが溜まり、おならが増える原因です。
腹式呼吸や瞑想など、自分なりのリラックス法を見つけることが大切です。
Q4: 「過敏性腸症候群(IBS)のガス型」とは何ですか?
A: 過敏性腸症候群(IBS)は、大腸カメラなどの検査では腸に明らかな異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や便通異常(下痢、便秘)が慢性的に続く病気です。その中でも、下痢や便秘よりも、お腹の張り(腹部膨満感)やおならが頻繁に出る症状が特に目立つタイプを「ガス型」と呼びます。
ストレスが大きな引き金になると考えられており、日常生活に大きな支障をきたすことも少なくありません。
治療には、生活習慣の改善、食事療法(低FODMAP食など)、薬物療法などを組み合わせて行いますので、専門医への相談が不可欠です。
Q5: おならを減らすには、どんな食生活を心がければ良いですか?
A: まず、大前提として「早食いをやめ、ゆっくりよく噛んで食べる」ことを徹底しましょう。これだけで、飲み込む空気の量が減り、症状が和らぐ方もいます。
食事内容としては、ガスを発生させやすいイモ類、豆類、ごぼう、玉ねぎ、炭酸飲料、そして消化に時間のかかる脂っこい食事を少し控えてみましょう。
代わりに、消化の良い鶏むね肉や白身魚、豆腐、そして「低FODMAP」と呼ばれる発酵しにくい糖質を含む食品(にんじん、ほうれん草、トマト、バナナ、お米など)を中心に食事を組み立ててみるのがおすすめです。
Q6: 腸内環境を整えるとおならは減りますか?具体的な方法を教えてください。
A: はい、腸内環境を整えることは、おならの量と臭いの両方を改善する上で非常に効果的です。具体的な方法としては、腸内の善玉菌を増やす「プロバイオティクス」と、その善玉菌のエサとなる「プレバイオティクス」を両方摂る「シンバイオティクス」という考え方が重要です。
- プロバイオティクス:ヨーグルト、納豆、味噌、キムチ、ぬか漬けなどの発酵食品
- プレバイオティクス:水溶性食物繊維(海藻、大麦、きのこ類)やオリゴ糖(玉ねぎ、ごぼう、バナナ、大豆製品) これらをバランス良く食事に取り入れ、適度な運動で腸の動きを促すことが、腸活の基本となります。
Q7: おならのことで病院に行くのは恥ずかしいです。何科を受診すれば良いですか?
A: おならの悩みで受診される方は、年齢性別を問わず、決して少なくありませんので、どうぞご安心ください。
専門の診療科は「消化器内科」または「胃腸内科」です。医師は日々多くの患者さんのデリケートな悩みに向き合っていますから、気兼ねなく相談して大丈夫です。
最近は、プライバシーに配慮した診察室や、女性医師が在籍するクリニックも増えています。どうしても口頭で話しにくい場合は、症状や質問をメモに書いて渡すのも良い方法です。
Q8: 人前でおならを我慢すると、体に悪いと聞きましたが本当ですか?
A: はい、我慢しすぎるのは、おすすめできません。行き場を失ったおならのガスは、腸壁から血液中に再吸収されてしまいます。そして、血液に乗って全身を巡り、最終的には呼気や皮膚から「におい」として排出されるため、口臭や体臭の原因になることがあるのです。
また、日常的に我慢を続けると、腸に常にガスが溜まった状態になり、お腹の張りが慢性化したり、腸の動きが悪くなって便秘を悪化させたりする原因にもなります。できるだけ、お手洗いなどで自然に排出するようにしましょう。
Q9: げっぷもよく出ます。おならと関係がありますか?
A: げっぷとおならの両方が多い場合、無意識に大量の空気を飲み込んでしまっている「呑気症(どんきしょう)」の可能性が考えられます。
飲み込んだ空気の一部が胃から逆流して「げっぷ」として口から排出され、残りが腸に送られて「おなら」として排出されるため、両方の回数が増えるのです。
主な原因は、早食いや、ストレスによる無意識の唾の飲み込みです。食事をゆっくり味わって食べることや、ストレスケアを心がけることが改善に繋がります。
Q10: 50代になってから、おならの悩みが増えました。加齢も関係しますか?
A: はい、大いに関係します。50代以降は、(1)加齢に伴い消化液の分泌が減少して消化能力が落ちること、(2)腸の蠕動運動が鈍くなること、(3)腸内の善玉菌が減少し悪玉菌が優位になりがちになること、など複数の要因が重なります。
さらに、(4)更年期における女性ホルモンの急激な減少が自律神経のバランスを乱し、腸の不調に拍車をかけることもあります。これまでの生活習慣を見直し、変化したご自身の体をいたわるセルフケアを始める良い機会と捉え、前向きに取り組んでいきましょう。
まとめ
大切なポイント
- おならがよく出る原因は1つではなく、空気の飲み込み、食生活、ストレス、便秘、そして加齢に伴うホルモンバランスの変化など、さまざまな要因が複雑に絡み合っています。
- 治療や管理の基本は、何よりも生活習慣の見直しです。バランスの良い食事をゆっくりと味わい、適度な運動を楽しみ、心穏やかに過ごす時間を大切にすることが、健やかな腸への一番の近道です。
- 強い腹痛や血便、急な体重減少など、いつもと違う気になる症状があれば、それは体からの重要なサインかもしれません。決して自己判断せず、ためらわずに消化器内科を受診しましょう。
- 腸内環境を整える「腸活」は、おならの悩みを改善するだけでなく、免疫力の向上や美肌など、心と体の全体の健康に繋がります。
おならの悩みは、決して恥ずかしいことでも、特別なことでもありません。一人で抱え込まず、この記事をきっかけにご自身の体と心に優しく向き合い、健やかで晴れやかな毎日を送るための一歩を踏み出してみませんか。
健康に関するご相談は最寄りのかかりつけ医へ
この記事の健康情報は一般的な内容です。ご自身の症状や体調について心配なことがある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。
適切な診断・治療には専門医による個別の判断が不可欠です。自己判断せず、まずは信頼できる医師にお話しすることをおすすめします。
監修者プロフィール:柏木宏幸 先生

東京女子医科大学消化器内科入局後、複数の医療機関で研鑽を積み、同大学病院助教を経て2023年に池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院を開院。胃がん・大腸がんの早期発見と内視鏡検査の普及をミッションに掲げ、一般内科から消化器疾患まで幅広く診療。YouTube(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック)を通じた医療情報の発信にも注力。土日診療、胃・大腸カメラ同日検査、鎮静下内視鏡など、患者様に寄り添った質の高い医療を提供している。




