閉経後は「糖尿病」に要注意!リスクチェック&ゆる血糖コントロール
閉経後は「糖尿病」に要注意!リスクチェック&ゆる血糖コントロール
更新日:2025年09月17日
公開日:2025年07月10日
教えてくれた人:綿田裕孝(わただ・ひろたか)さん

順天堂大学医学部附属順天堂医院糖尿病・内分泌内科教授。1990年、大阪大学医学部卒業。米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校研究員などを経て、2010年から現職。専門は糖尿病、内分泌学など。糖尿病専門医・指導医。
閉経後は要注意!50代から糖尿病リスクが増える理由
最近、血糖値が上がりだした、健康診断で“要注意”と指摘された……。心当たりのある人が多いのではないでしょうか。
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖の濃度のこと。これが高い状態で持続する病気が「糖尿病」です。日本では糖尿病とその予備軍の人が推計で約2000万人。まさに国民病といえます。女性の場合、この糖尿病がぐっと身近になるのが更年期以降です。
「閉経後は、糖尿病などの病気から体を守る女性ホルモンが減るため、血糖値が上がりやすくなります。肉親に糖尿病になった人がいる、肥満、食べ過ぎ、運動不足という方も糖尿病のリスクが上がるので、注意が必要です」。こう話すのは順天堂大学医学部附属順天堂医院糖尿病・内分泌内科教授の綿田裕孝さんです。
【糖尿病のリスクは、50代以降上がります】
糖尿病が強く疑われる女性(20歳以上)は、50代から右肩上がりに増加。60代では約10人に1人、70歳以上は約5人に1人が該当する。更年期以降は血糖値が上がりやすくなり、糖尿病のリスクが高くなる。
インスリンの低下が糖尿病を引き起こします
では、糖尿病はどのようにして発症するのでしょうか。鍵を握るのが、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンというホルモンです。食事から摂取したブドウ糖は、このインスリンによって血液中から筋肉や肝臓に取り込まれ、エネルギーとして使われます。
「ところが女性ホルモンの低下や肥満などがあると、インスリンが効きにくくなってしまうのです。すると膵臓はインスリンをもっと作ろうとがんばり続け、やがて疲弊して分泌量自体が低下してしまう。こうしてインスリンが血液中のブドウ糖を処理しきれなくなり、血糖値が上がります。これが糖尿病へと進む典型的なプロセスです」と綿田さん。

「膵臓」
- インスリンの働きが悪い
- インスリンの分泌が少ない
↓
「筋肉・肝臓」
- 筋肉からの糖の取り込みが減り、肝臓からの糖の放出が止まらない
↓ - 血液中の糖が増える
↓
高血糖・糖尿病
血糖値を下げるインスリンの働きが低下したり、分泌量が減ったりすると、筋肉の糖の取り込みが減り、肝臓に貯蔵された糖が血中に放出され続ける。その結果、血糖値が上昇する。
こんな人は特に注意!糖尿病予備軍チェックリスト
□閉経している
□血縁者に糖尿病の人がいる
□太っている
□食べる量が多い、甘いものをよく食べる
□あまり運動をしない
糖尿病は肥満の人がなりやすいですが、日本ではあまり太っていなくても発症する女性がいるそう。「日本人女性は欧米人に比べ、体質的に悪い脂肪が蓄積しやすく、膵臓もあまり強くない傾向があるため、肥満や生活習慣の問題がなくても糖尿病になる人が少なくないのです」(綿田さん)
怖いのは合併症!早めの血糖値ケアを
血糖値が高くても初期には何の症状もありませんが、やがて深刻な合併症が現れます。3大合併症と呼ばれるのが、足先の感覚が鈍くなる「神経障害」、目が見えにくくなる「網膜症」、腎臓が悪くなる「腎症」。神経、目、腎臓の頭文字から“シメジ”と呼ばれることも。
さらに足が腐る「壊疽(えそ)」、脳の血管が詰まる「脳梗塞」、狭心症や心筋梗塞などの「虚血性心疾患」を招くこともあり、こちらは“エノキ”と呼ばれます。これらは糖尿病によって全身の血管が障害されることで起こります。
「このような事態を招かないためにも、血糖値が少し高めの段階から糖尿病予防を心掛けることがとても重要です。生活習慣に気を付けるだけで、血糖値を正常に戻すことも可能です」と綿田さん。早めの血糖値ケアを始めましょう。
糖尿病は「シメジ」「エノキ」を招きます

「シ」……神経障害
「メ」……網膜症(目の障害)
「ジ」……腎症
「エ」……壊疽
「ノ」……脳血管障害(脳梗塞)
「キ」……虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)
糖尿病の合併症は深刻。全身の細い血管が障害されると“シメジ”が、大きな血管が障害されると動脈硬化が進み“エノキ”が起こりやすくなる。失明や人工透析、足の切断、命に関わることも。
次回は習慣化すれば10年後がきっと変わる「ゆる血糖コントロール」実践のコツをお伝えします。
取材・文=佐田節子、イラストレーション=古谷充子、構成=大矢詠美(ハルメク編集部)
※この記事は、雑誌「ハルメク」2024年12月号を再編集しています




