君島十和子「美しさとは『清潔感・潔さ・生きる力』。私の老いる姿を見てください」
2025.02.11
公開日:2025年01月21日
私らしく、美しく。
フィギュアスケーター伊藤みどり「美しさは内面から滲み出るもの」
女子選手として世界で初めてトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を成功させ、日本の女子フィギュア界を牽引してきた伊藤みどりさん。大好きなスケートが教えてくれたコンプレックスの乗り越え方、そして私らしい美しさとは――。
取材・文=佐田節子 写真=岡本隆史 ヘアメイク=榊美奈子 企画・構成=橘美波(HALMEK up編集部)
55歳、国際大会で2度目の現役生活続行中
――伊藤みどりさんは現在55歳。福岡県北九州市で家族と暮らし、冬場は地元のリンクで子どもたちにスケートを教えている。またご自身も40代以降、国際スケート連盟公認の「国際アダルト競技会」に出場。マスターエリート・アーティスティック部門での優勝を重ねている。

現役引退後しばらくは競技から離れていましたが、41歳のとき、ドイツで開催される「国際アダルト競技会」に初めて出場したんです。コロナ禍などで中断はありましたが、これまでに7回出場しました。
大人のスケーターが集う競技会で、年齢も20代から90代くらいまでと様々。オリンピックに出たことのある元アスリートも、大人になってから趣味で始めた方も、誰でもフィギュアスケートを楽しめる場です。

現役時代は「飛ばなきゃ」「勝たなきゃ」と日の丸を背負って頑張っていたから、つらいなと思うこともありましたが、今は仲間と一緒にライフワークとしてスケートを楽しんでいます。子どもの頃の「好きだから滑る」という原点に戻ったみたいですね。
と言っても、子どもの頃と明らかに違うのは年齢。今55歳になり、体形もふくよかになりました。更年期とコロナ禍での自粛生活が重なり、体重が戻りにくくなってしまい……。実は競技会に出るときも、見た目の変化を「恥ずかしい」と思う自分がいたんです。
でも、競技会には私よりもっとふくよかな方が出場していますし、70代以上の方だって滑っています。ショッキングピンクとか、カラフルな衣装を身にまとい堂々と氷上で自己表現しているんです。そういう世界を見たら、「50代なんてまだまだ若い!」「大丈夫!」って教えられ、すごく励まされました。
思えば、ずっとコンプレックスの塊だった
私は現役時代から容姿に対してコンプレックスを持っていました。外国の選手は背も高く脚も長くて、見た目も美しい。それに比べて私は背が低くて脚も短く、美人でもない。ヨーロッパの選手が主流だった当時は、リンクに出ただけでブーイングが起こったこともありました。
決して美しいスケーターではなかったけれど、私の持ち味はひたすらに一生懸命に滑ること、そして得意技のトリプルアクセルを跳んで成功させること。それが世界に自分を認めてもらう一番の武器でもあったのです。
フィギュアスケートって、日頃の努力や頑張りだけでなく、普段の行いや心の状態までもが演技に出てしまうものです。その選手のことを知らなくても、言葉が通じなくても、演技を見ればその人の性格とか、表現したいことはだいたいわかります。隠そうと思っても隠せないんですよね。
だから、私自身は常に心の中を清らかにして、明るく元気でいよう、一生懸命でいよう、と思っていました。できるかどうかは別ですが、そう心がけてきました。それはストイックに頑張っていた現役時代も、ライフワークとして楽しく滑っている現在も変わらないことです。
――とはいえ「今でもコンプレックスの塊ですよ」と伊藤みどりさんは笑う。それを受け入れながら自分らしい美しさを表現するにはみどり流の秘訣があった。
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