黒木瞳「美しさとは“朗らか”であること。何事にも愛のある人は美しい」
2025.01.21
公開日:2025年01月21日
私らしく、美しく。
常盤貴子「自分を信じる強さがある=美しい。『若く見える』は悪口になればいいのに」
「愛していると言ってくれ」、「Beautiful Life」……。テレビドラマ史に名を残す数々の作品でヒロインを演じたのは、20代の常盤貴子さんだ。52歳になった今も、その姿は変わらない――というこの表現、常盤さんにはちょっと違うのかも。と思ったのには、訳がある。常盤さんには、独自でカッコいい年齢観があるのだ。まずはその話から。
取材・文=矢部万紀子 写真=岡本隆史 ヘアメイク=板倉タクマ(nude.) スタイリスト=石井あすか 企画・構成=橘美波(HALMEK up編集部)
「若く見えるね」が悪口になればいい
――ドラマや映画、CMと30年にわたって活躍し続ける常盤さん。最近はファッション誌などに登場するたび、「変わらなさ」が強調される。実際に会えば、すぐに実感できる表現だったりする。が、常盤さん、年齢については“過激”な思考の持ち主だ。
私は20代の頃から、「若く見えるね」みたいな言葉が、いっそ悪口になればいいのに、と思いながら生きてきたんです。若い方がいいっていうのは日本独自の文化だと思っていて。
若さには、特有のかわいさがあります。それを愛する心は尊くもあります。舞妓さんが好きとかアイドルが好きとか、それはもう脈々と続いている日本文化の一つでもあると思うんです。ですが、そのことと、年齢を重ねても美しいとか美しくないとかということは、何か次元が違う気がするんです。(若い人と)同じ土俵に立っていませんから!という(笑)。若い頃と今を比べるのも好きではないです。比べてもなぁ・・・と思ってしまうので。
かつて、年上の先輩方が年齢を聞かれている場面を目にすることが多くありました。答えを言わせた後のリアクションが、必ず「(その年齢には)見えないですね」でした。定型文なんです。何、この茶番? 何を求めての質問? そう思っていました。
大林宣彦監督の「野のなななのか」という作品で、16歳の高校生を演じました。2014年公開だから、40代になっていましたね。そのとき監督が「貴子ちゃんは16歳の経験があるよね。だからできるよね」と言ったんです。すごく衝撃でした。
海外のオーディションだと「何歳ですか?」でなく、「何歳を演じられますか?」と聞かれるんだそうです。そういうことだと思うんです。そもそもお芝居なんて嘘だし、その中でどこまで嘘がつき切れるかというのが役者という仕事だと思います。自分の演じられる年齢を表明することは、自分の可能性を確認することでもある。すごくいいなと思いました。
個人・常盤貴子として出会った場所と人を大事にしている
――常盤さんのオフィシャルインスタグラムは、能登に関する投稿でいっぱいだ。ボランティアに行ったり、能登から劇団を招いてのイベントを開いたり。ヒロインの母親役で出演した朝ドラ「まれ」(2015年放映)の舞台として訪れて以来の縁だ。

女優・常盤貴子として演じた役は、次の役のために忘れなくてはなりません。だけど、演じることで出会った人や場所は、個人・常盤貴子の人生の一場面だと捉えていて。この人たち好きだな、ここにまた行きたいな。そういう思いは大事にしています。
能登のことを「自分を取り戻せる場所」と言う人が多いのは、「人間力」を尊ぶ土地柄だからだと思います。ものを持っているかどうかでなく、今をどう生きるかを大事にしている。そのことが伝わってきて心が震える瞬間が多いから、また行きたくなる。「能登はやさしや土までも」という言葉がありますが、その通りの場所です。
園井恵子さんという人のことも、とても大切に思っています。広島への原爆で亡くなった元タカラジェンヌで、戦時中は「桜隊」という劇団の看板俳優でした。大林監督の遺作「海辺の映画館―キネマの玉手箱」で園井さんを演じて、ステキだな、もっと知りたいなと思いました。その縁で毎年8月6日には、桜隊の「原爆殉難碑」がある目黒の五百羅漢寺での追悼会に参加しています。
資料を読んだり縁の人と会ったりするうち、園井さんが私の中で立体になってきました。知ることはとても大事。戦争も、知り合いを相手にはしないのではないかと思う。アメリカにとって日本は遠い、知らない土地だった。2023年に参加した追悼会の朗読劇では冒頭で「今も戦争が続いています。ロシアの、ウクライナの演劇陣たちは、今どうしているのでしょうか」というセリフがありました。思いを馳せる、想像する。とても大事なことだと思います。
――日本特有の「若さ」「年齢」に対する価値観へ一石を投じる常盤さん。記事後半では常盤さんの美への価値観や、これからの常盤貴子についてを深掘りしていく。
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私ももういい加減、若く見えるねが、褒め言葉な文化からは日本も脱して欲しいと思っていたので、この常盤さんの考えには大賛成です。フランス、イタリアなどではマドモアゼルと呼ばれるよりマダムと呼ばれる方が嬉しいといいますよね。勿論、過度にシワやシミを作る行動は避けますが、何十年もかかってできたシワやシミは自分の勲章です。着るものも黒やベージュなどのベーシックカラーだけだった若い時と違い、アクセントカラーとしてスカーフやセーターなどに明るい色を使う様に心がけています。若く見えるねと言われるより素敵なシニアねと言われるのが何より嬉しいです。