50代からの女性のための人生相談・83

人生相談:仏壇のお世話、先祖供養を今後どうすべき?

名取芳彦
回答者
元結不動・密蔵院住職
名取芳彦

公開日:2022.07.16

更新日:2023.01.17

「女性のための人生相談」は読者のお悩みに専門家が回答するQ&A連載。今回は59歳女性の「ご主人の実家の仏壇の継承」についてのお悩みに、仏教の教えをわかりやすく説いて「穏やかな心」へ導く、住職・名取芳彦さんが回答します。

59歳女性の「仏壇の継承」についてのお悩み

主人の実家の仏壇をどうするべきか悩んでいます。

長野県にある主人の実家は、両親ともに亡くなっていて、主人の弟が家業を継ぎました。でも、その弟が体調を崩していて、現在、仏壇のお世話ができていません。

主人が長男ということもあり、先祖供養をどうしていけばいいか、悩んでいます。

(59歳女性・緑の風さん)

仏壇の位牌やお墓は亡き人との面会用の窓

仏壇の位牌やお墓は亡き人との面会用の窓

日本では仏教が入る以前から、先祖をおもてなしするという意味の「先祖供養」が行われてきました。

日本の仏教は、各家に仏壇(小型の本堂)を設置し、位牌を安置することをすすめました。先祖や亡き人から受けた“おかげ”を、家々の仏壇の前で感じることで「いつでも、どんなことがあっても、心穏やかでいる」一助にしてきたのです。

仏壇の主役は、中央奥の仏さまです。その手前に位牌が置かれ、亡き人が奥の仏さまに世話をしてもらっている図式です。

拝む人は亡き人のことを奥の仏さま向かって「よろしくお願いします」と手を合わせたり、亡き人に「仏さまについて行って、心穏やかになってね」と合掌したりします。ですので、奥に仏さまがいなければ仏壇ではなく、位牌壇です。

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位牌やお墓は、亡き人との面会用の窓。窓ですから、同じ位牌を複数作っても問題はありません。

“家制度”が残っている地域や家庭では、お墓を守り、お寺と付き合いをする家(檀家)が仏壇を継承するのが一般的です。継承は長男に限ったものではありません。血のつながりがなくても、縁のある家(人)が引き継ぐことはよくあります。

後継者が絶えてしまう“家”では、「墓じまい」とともに仏壇を処分する家も少なくありません。この場合、仏壇は仏壇屋さんに引き取ってもらい、本尊と位牌はお寺に納めます。

こうしたことをふまえ、緑の風さんのご相談にお答えします。

名取さんの回答:仏壇に加え、お墓やお寺との付き合いも引き継ぐということ

仏壇だけではなく、お墓やお寺も引き継ぐということ

とりあえず、ご主人が弟さんに「先祖の世話ができそうもないなら、私がやろうか」と聞いてみるといいでしょう。他に「仏壇を継承してもいい」と立候補する兄弟姉妹がいれば、その人に聞いてもらってもいいでしょう。

ご相談の文面を読むと、弟さんが「いや、どうしても自分がやる」と答えられる状況にはないようです。

その場合は、ご主人(あるいは他の兄弟姉妹)が引き継ぐことになりますが、引き継いだ人は初めての経験に戸惑われることでしょう。

仏壇を引き継ぐことはそれなりの覚悟が必要

仏壇を引き継ぐことはそれなりの覚悟が必要

仏壇の中の仏さまや、位牌ごしのご両親への果物やお菓子などのお供えや、供え花の交換もあります。朝夕に手向けるお線香の香りが家の中に漂うことにもなります。仏壇を持つということはそのような覚悟が必要です。

その他、お墓掃除やお墓参り、お寺との法事の打ち合わせなど、弟さんがこれまでやってくれていたことも継承することになります。それが、代々受け継がれてきた先祖供養のやり方です。

ご主人が仏壇を継承して起こることは、緑の風さんのご両親(ご両親が亡くなっていればその位牌のお世話をしている人)がやっていることですから、先祖供養をしている経験者に聞いてみるといいと思います。「面倒だけど、仕方がないからやっている」「当たり前だからやっている」など、さまざまな意見が出るでしょう。

ご主人が仏壇を継承する場合も、しない場合も、緑の風さんとご主人が、お互いの立場を思いやる心の余裕を持って、相談され、対処されるといいと思います。

菩提寺の住職に相談

もし、菩提寺の住職が信頼できる人なら、義理の弟さんと一緒に、いろいろなことを具体的に聞いてみるのが一番いい方法です。

回答者プロフィール:名取芳彦さん

回答者:名取芳彦さん

なとり・ほうげん 1958(昭和33)年、東京都生まれ。元結不動・密蔵院住職。真言宗豊山派布教研究所研究員。豊山流大師講(ご詠歌)詠匠。写仏、ご詠歌、法話・読経、講演などを通し幅広い布教活動を行う。日常を仏教で“加減乗除”する切り口は好評。『感性をみがく練習』(幻冬舎刊)『心が晴れる智恵』(清流出版)など、著書多数。

構成=石丸繭子(ハルメク365)

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