得意なものもやりたいことも
特にない…から進めた道
私は小さい頃から、「これがすごく得意よね」と言われるものもないし、「誰が反対しても、これをやりたい!」という欲望もありませんでした。成績も、ごく普通。
母を見送ったとき、一人でなくてよかった。
一緒にいてくれる伴侶がいて、
どれだけありがたかったか
連載対談や小説をはじめテレビなどでも活躍する阿川佐和子さんですが「思ったのとは違う方向に進んだ方がうまくいくことがある」と言います。第3回は、人並みの結婚を手放し、仕事と介護に大忙しだった阿川さんの、60代、思いがけない人生の選択について。
私は小さい頃から、「これがすごく得意よね」と言われるものもないし、「誰が反対しても、これをやりたい!」という欲望もありませんでした。成績も、ごく普通。
父が男尊女卑で亭主関白だったからか、素敵な王子様が現れるのを待って、大恋愛をして、結婚をして、子どもを産んで、その王子様を支えるアシストの立場で生きていくのが、自分にとっては一番幸せなんじゃないか、と思っていました。
実際、お見合いも30回以上経験しましたが、ご縁はなく……。あ、もちろん、断ったり、断られたりです。
ところがいつの間にか、テレビや雑誌でインタビューの仕事を始めて、30年経っちゃった。本当はインタビューが好きなわけでも、自信があるわけでもないのですが、それでも「続けなさい」と言ってくれる方がいて。そう言ってくれる方たちに「お前は本当にダメだな」と言われたくなくて、必死になって食らいついて、そして「よかったよ」と言われると、調子に乗って次に次にと続けていった。そうしたら30年が過ぎちゃった、という感じなんです。
人生、自分の思い通りにはならないものです。自分が本当にやりたいことをやったから必ず幸せになれるものでもないし、反対に誰かが「こうやってみたら」ということにいやいやでも従ってみたら、道が開けることもある。私も自分が思っていた方向とは違ったけれど、人がすすめてくれた方向に進んでみたら、それが自分の道になっていった。今振り返ると、そんな気がしています。