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- 群言堂・松場登美さんが考えたおしゃれと暮らしの力
島根県の石見銀山を拠点に、豊かなライフスタイルを提案する「群言堂」。新型コロナの影響で出掛けることが減った昨今、改めて感じたことや、今の想いをデザイナーの松場登美さんに伺いました。※この記事は2021年5月に公開された記事を再編集しています
自分が本当に心地よいと感じるかがこれからの暮らしの軸に
「石見銀山は山や森のイメージが強いですが、少し行けばこんなきれいな海が見られるんですよ」
そう話す、松場登美さんの背後に広がる青く美しい日本海。麻のブラウスが風になびいて色鮮やかに映えます。登美さんは、昔から伝わる知恵や職人技を守り、現代の暮らしに生かす「復古創新」の精神で、新しいアイデアを生み出し続けるブランド「群言堂」のデザイナーです。
松場登美さんのプロフィール
まつば・とみ 1949年、三重県生まれ。81年に夫の実家がある島根県大田市大森町(石見銀山)に帰郷。88年、有限会社「松田屋」を設立。98年、株式会社「石見銀山生活文化研究所」を設立し、アパレル事業とともに、古民家再生に取り組む。98年に築200年以上の武家屋敷を買い取り、改修に着手。2008年から「暮らす宿 他郷阿部家」として宿泊を受け入れている。
皮膚は内臓の一部。身にまとうもので気分が変わり、心が整う
コロナ禍で遠くへ行くことが難しかったこの一年は、いつもの暮らし方や身近なものを見直す機会になりました、と登美さんは言います。
「人に会う機会も少なくなり、外からの見た目よりも、自分がいかに心地よく過ごせるかが大事な時代に。群言堂は当初からそうした考えを大切にしてきましたが、改めてそれが世間に広がってきたように感じます」
「気分、という言葉はあいまいで軽く見られがちですが、私はすごく重要だと思っています。コロナ禍により心配や恐怖といった『気分』が世の中に蔓延しました。そんな中、普段身にまとう服の力を改めて感じます。
以前、気功の先生が『群言堂の服は体に無理がかからない理想の服だ』とほめてくださいましたが、群言堂では、着ることで体や心が元気になる「服薬」という考えを服作りの基本としています。治療よりも、日々の食事や衣服がなによりの薬になるということ。皮膚は内臓の一部と言いますが、肌に触れる面積の大きい洋服や下着は、心や体に確実に影響を及ぼします」
また群言堂の服は「フリーサイズ」のものが多くありますが、スタートした当初、その考え方は世間に浸透していませんでした。「でも私は日本の着物のように『融通がきく』服を作りたかった。体型や年齢にかかわらず、その人がその人らしく、気持ちよく着られるものを」と松場さん。
自宅と外出の境目が曖昧になった昨今、そうした服がより一層求められるようになっています。
10年後も着られる群言堂の服。「長く着て育てる」が理想
「このあいだ『登美さんその服いいね。今お店で売ってる?』と声を掛けられて『もう10年以上前のものよ』って答えました。長く愛せる服作りができているのかな、とうれしく思います」
そしてそのために欠かせないのが、日本の職人の技術です、と登美さん。この国ならではの風土や気候に合わせて丁寧に仕上げられた服は、新品の美しさもさることながら、年々味わいが増し体になじむように成長するのだそう。
「そうやって育った服を着ることで、また心が豊かになる。そんな良い循環を、これからも生み出し続けたいですね」
この春、群言堂で飼っているヤギが子どもを産みました。小さな命を撫でながら「かわいいでしょう」と登美さんもにっこり。
このとき着ていた群言堂の藍染めのワンピースは、備後絣の伝統を守る工房で染められたもの。
「何度も藍の甕の中にくぐらせて染めた濃紺の藍は、水を通すたびに風合いが良くなり、何年も先まで美しい経年変化を楽しめます」
年を重ねるにつれ「心を豊かにする暮らし」への憧れは強くなるもの。まずは、登美さんのこだわりがたっぷり詰まった群言堂の服を、生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
取材・文=峯積抄公子 撮影=井上彬
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