相続でもめないための対策と相続税対策

相続対策で悩まないための重要なポイントとは?

公開日:2020/10/05

更新日:2020/10/06

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相続について、考えたことはありますか? 「相続なんて資産家だけの話」と思っていたら大間違い。親が亡くなった時点で、どんな家にも相続は発生します。まずは相続のために必要な基礎知識と対策について、知っておきましょう。

相続

もめないために相続対策が必要な場合とは?

もめないための相続対策

相続対策は大きく2つに分けて考える必要があります。相続が発生したときに相続人同士でもめないための“争続”対策と、相続税を支払う必要がある資産額を持っている場合の相続税対策です。まずは、もめないための相続対策についてお伝えします。

相続する資産額が少ない場合ほどもめやすい

資産家が相続でもめる、というイメージを持っている人は多いかもしれませんが、相続税が発生するぐらいの資産家はあらかじめ相続税対策をしていることが多く、相続の手続きもスムーズに行われることが多いものです。

実は相続のトラブルは、資産5000万円以下の相続税が発生しない場合に起きやすく、金額が少ないほどもめる傾向があります。特に現金・証券といった資産がなくて、財産が「住まない実家」の不動産のみ、相続資産が家一軒しかないという場合は特に注意が必要です。実家を売るのか売らないのか、誰かが使い続けるのかなど、遺産分割がしにくくなるのです。

一次相続よりも二次相続に注意
 

相続手続きでもめる例

一般的に相続でもめがちなのは、一次相続よりも二次相続のときです。一次相続とは片方の親(多くは父親)が亡くなるとき、二次相続は遺された親(多くは母親)が亡くなるときのことをいいます。一次相続はまだ配偶者がいるためその発言権が強く、相続人全員で話し合いをする遺産分割協議がまとまりやすいのですが、二次相続では遺された子どものみで話し合うことになります。

親が亡くなる時点で子どもたちはそれぞれ独立して持ち家がある場合がほとんどなので、誰も住まない実家をめぐっても、話がまとまりにくくなるのです。また一次相続では、配偶者控除という相続税の軽減措置で相続税が発生しなかった場合も、二次相続では相続税の対策が必要になることがあります。

子どもいない夫婦の場合、義兄弟・義姉妹と協議する必要あり

子どもがいない家庭の場合、亡くなった被相続人の兄弟・姉妹が相続人となってもめるケースも。例えば夫の実家が名家で、代々受け継いできた資産がある場合、その4分の3が(夫の兄弟・姉妹から見れば)赤の他人の配偶者に渡ることを嫌がる場合があります。ケースバイケースですが、最終的にはお金で解決し、兄弟・姉妹が折れて、法定相続分どおりに相続されることが多いようです。いずれにしても、事前に話し合い・相続対策をして備えておくことをおすすめします。

先妻との間に生まれた子や別家庭に認知している子どもがいる場合

被相続人に、離婚歴があったりなどして前の配偶者との間に生まれた子がいる場合、あるいは婚姻関係にない者との間に生まれた認知している子どもがいる場合には、それらの子どもも相続人となります。「嫡出子」と「非嫡出子」の法定相続分に差はなく、同等の法定相続分を相続する権利があります。連絡先も知らない、ましてや存在も知らなかったとなると、いざというときに遺産分割協議を行うのが難しくなってしまい、もめる相続につながるでしょう。

日頃、コミュニケーションがない親族がいる場合
 

日頃、コミュニケーションがない親族がいる場合

相続人同士でもめないためのコツは、財産のあるなしにかかわらず、普段からコミュニケーションを取っているかどうか。大人になって、仕事やそれぞれの家庭環境、価値観も違うきょうだいの間でのコミュニケーション不足が問題を引き起こしやすくさせます。

また親が認知症になった場合、きょうだいのうち、親のお金を管理する人が事実上、親のお金を自由に使えることになります。親のために本当に使っているなら問題ありませんが、他の介護している兄弟・姉妹が「個人的なことに使っているのではないか」と疑い始めると、トラブルの元になります。介護時に親のお金を何に使っているかは、なるべく明瞭にしておく方がいいでしょう。

またコミュニケーションができない者同士だと、宝石など細かい金品の行方でももめることが。宝石や時計などの貴金属や骨董品は、物にもよりますが資産価値は高くなく課税対象にはならないことがほとんど。「形見」としての意味合いのほうが強く、「私にくれると言っていたはずの指輪がない」「同居していた長男の嫁が持って行ったに違いない」などといったトラブルに発展することがあります。証拠がないので窃盗事件に発展するものではありませんが、人間関係に禍根を残すことがあります。

 

相続税の支払いが必要な場合は、節税対策および納税資金の準備を

相続対策

もめる相続にしないための対策を理解した次は、相続税対策が必要な場合について考えていきましょう。相続税の申告期限と納付期限は、被相続の開始の翌日から10か月後になります。相続する遺産が家1軒しかなく現金が足りなければ、家の売却の必要な場合も。そもそも、相続する予定の遺産に相続税がかかるのか把握しておきましょう。

相続税の支払いと節税対策が必要な人とは?

相続税の支払いが必要な人の資産の目安はどれくらいなのでしょうか。相続税は、相続財産全体から、葬儀費用や借金などの債務額と、小規模宅地等の特例などによる課税対象額の軽減措置を加味し、さらに暦年課税の対象となる相続開始前3年以内に生前贈与された財産の額、相続時精算課税の適用を受けて生前贈与された財産の額を加算して「課税価格」を算出し、そこから「基礎控除額」を差し引いた金額に対して課税されます。基礎控除額の算出方法は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」になります。
 

相続税控除の計算の仕方


例えば、法定相続人が2人の場合、「3000万円+600万円×2=4200万円」が基礎控除額になります。つまりこの場合、相続財産が4200万円を超えると相続税がかかります。

なお、ここで使う「法定相続人」という言葉は民法上の相続人とは異なり、相続税法独自の考え方が採用されます。具体的には、相続放棄があった場合においても、その放棄がなかったとした場合の相続人となり、さらに、被相続人に養子がいる場合には、上記の基礎控除額や後述する生命保険金に非課税枠などの計算上、カウントできる養子の数に一定の制限がかかります。

「うちはそんなに財産がない」という人でも、首都圏の土地付きの一軒家があれば、それだけでかなりの評価額になります。これに預貯金が加われば、相続税の対象になるケースも多くなります。

相続税がかかるほどの資産がある場合、節税対策をすることで相続税の支払いを減らすことができます。

相続税対策・節税対策としてできること

相続税対策として行えること

節税対策の代表的なものをご紹介します。

生前贈与で相続財産を減らす

生前贈与は、年間110万円以内であれば贈与税がかからない基礎控除枠があるため、子や孫に年間110万円以内の金額の生前贈与を実行することで、毎年贈与した分が課税の対象から除外されることとなります。また他にも、教育資金贈与など贈与税が無税になる制度もあります。

生命保険金等の非課税枠を利用する

生命保険の契約にもとづいて、相続発生後に支払われる死亡保険金は、相続人一人につき500万円まで非課税となります。ただし、ここでも先程紹介した相続税法独自の「法定相続人」の考え方を採りますので、カウントできる相続人の数は民法上の相続人の数と異なる場合があります。また、非課税枠の計算上は、放棄した相続人も入れるのに対して、非課税規定の適用そのものは、相続人のみしか受けられないため、相続を放棄した者が受け取った保険金は全額、みなし遺贈財産として(被相続人から遺言により保険金を受け取ったものと考えて)相続税の課税対象となります。

小規模宅地等の特例を利用する

相続する住居に誰が住んでいるか、あるいは空き家となっているかといった利用状況次第で、その土地の評価額を330㎡まで8割減らすことができます。自宅の敷地を相続した者が配偶者の場合、被相続人と相続人が同居している親族の場合、被相続人に配偶者や同居親族がおらず、相続人の子どもが別居していて、3年以上自分や配偶者の持ち家に住んでいない場合(賃貸住宅等に居住している)などです。また、相続する土地が事業用の場合(同様に400㎡まで8割減)、貸付用の場合(200㎡まで5割減)にもこの特例が利用できますが、複数の利用状況が併存している場合には、適用できる限度面積について、一定の調整計算が行われる場合があります。

配偶者控除

配偶者が亡くなる一次相続の場合は、通常は「小規模宅地等の特例による評価減」を適用できることに加え、さらに「配偶者の税額軽減」という、課税価格が1億6000万円までと課税価格に法定相続分を乗じた額とのいずれか大きい金額までの取得であれば、相続税がかからない制度を利用することができます。従って、一次相続の場合は、よほどの資産家でなければ相続税の心配をする必要はありません。

 

相続でトラブルを起こさないためにしておくべき対策とは?

相続対策としてやっておくべきこと

親の財産の把握をしておく

まず、相続税対策が必要かどうかを把握するためにも、実家(土地、家屋)、預貯金、株券など親御さんの財産の把握をしておく必要があります。親御さんが亡くなる前に把握しておくことがベストですが、親が相続のことを考えるということは、死と向き合うことにつながり、なかなかやりたがらない方が多いのです。親に相続対策の催促をすることは、親子関係にヒビが入ることもあるため、注意が必要です。

例えば「お母さん(父さん)、預金の管理で何か困っていることない?」など思いやりのあるコミュニケーションができると、スムーズに進みやすいようです。

 

相続人について把握しておく
 

相続人

遺産を相続できる相続人の範囲や優先順位は民法で定められています。もしものときに、誰が被相続人にあたるのか把握をしておきましょう。

  1. 配偶者
    配偶者は常に相続の権利があります。ただし、同居していても婚姻関係にない人には相続の権利はありません。離婚した相手も同様です。
  2. 子ども
    子どもは常に相続の権利があります。実子であっても養子であっても、婚姻関係にない相手の子どもも(故人が男性の場合は認知している必要があります)、全員に権利があります。

  3. 本来の相続人である子どもが先に亡くなって、しかもその人に子ども(故人から見れば孫)がいる場合は、孫が相続人になります。

  4. 故人に、子も孫(ひ孫以下も)もいない場合、故人の親が相続人になります。
  5. きょうだい
    故人に、子ども、孫(ひ孫以下)、親もいない場合、故人のきょうだいが相続人になります。

財産の分け方、数え方について把握しておく

民法には、どの相続人にどういう比率で財産を分ければいいかという「法定相続分」が示されています。配偶者と子どもで相続するときは、配偶者が2分の1、残りの2分の1を子どもが均等に分けます。配偶者が亡くなり、子どものみで相続するときは、全体を子どもの数で均等に分けます。

「法定相続分」はあくまでも「こうして分けるといいですよ」という基準です。ですから、相続人の間で話し合いがつけば、一次相続で配偶者が100%相続することもできます。

兄弟・姉妹で密にコミュニケーションをとっておく

また日頃から相続のことに限らず、きょうだい間でコミュニケーションをとっておくことはトラブル回避につながります。誕生日にプレゼントやメールを送る、お互いの子どもの入学祝いや進級祝いを送る、旅行に行ったらお土産を渡すなど、日頃の小さな気遣いが円滑な関係を築くります。

遺言書の作成をしておく
 

遺言書の必要性

遺言書は亡くなった人の意思を示したもの。もし遺言書があれば、遺産分割協議はこれをもとに進められてトラブルも起こりにくくなるので、最大の相続対策といえるでしょう。

ただ、実際に書いている人はごく少数です。法的に効力のある遺言書を書くことは、手続きが面倒ということもありますが、実はもっとも大きな理由は、単に「気が進まないから」という場合が多いようです。

ただし、自力で遺言書を作成すると書き方が法的に無効になることも。また法定相続人の遺留分よりも少ない相続配分をして「遺留分侵害額の請求」として相続人が権利を主張する場合もあります。遺言書を作るときは、専門家とともに作成することをおすすめします。

現金化するなど、財産を分けやすくしておく

例えば不動産が実家だけなど1つしかないと、それを兄弟・姉妹間で分けるのは大変です。それに対して、預貯金など現金化できるものは公平に分けやすいものです。親亡き後の実家をどうするのか、親御さん自身があらかじめ考えておき対処しておくのも、相続対策といえるでしょう。

 

相続対策は、第三者の専門家に相談するのがベスト

相続対策の相談先


相続対策のための相談先は、目的によって分けるといいでしょう。また窓口は一つで、さまざまな専門家にまとめて相談できる業者もあります。

遺言書を作るとき

行政書士・司法書士・弁護士などに相談するといいでしょう。推定相続人を確定させるための戸籍謄本の取り寄せや、遺言執行(相続による名義変更手続きの代行)人になってもらうことも可能です。また、相続税がかかる財産規模であった場合には、遺産分配後の相続税の納税が可能か否かも考慮した上で、遺言の作成を行う必要があるため、税理士と連携することが不可欠となります。

相続税対策をするとき

遺産相続の業務を得意としている税理士に相談するのがいいでしょう。最終的な相続税の申告・納付も税理士の専門分野です。土地の評価額は、国税庁が定めたルールに従ってなされますが、実はそうしたルールに書かれていない経験豊富な税理士にしか知り得ないノウハウもあるため、評価する人によって大きく減らせる場合があります。また相続発生前に、事前に財産の組み替えや生前贈与、生命保険を使った節税対策の立案などの相談を行うこともできます。

兄弟・姉妹間でもめたとき

兄弟・姉妹間で意見が合わず、話し合いがつかない場合は、まずは第三者に相談するのも一つの方法です。最初は自治体などにある無料の法律相談(法テラス)を利用してみるのもいいでしょう。話し合いの場には、全員と面識のある信頼がおけて話をまとめるのが得意な第三者に立ち会ってもらうのもいいかもしれません。

話がつかない場合、最終的には弁護士に相談することになります。ただし、弁護士を通して法廷で話し合いをするとなると、兄弟と直接話し合いをして解決することはできなくなり、その後の縁も切れると考えたほうがいいでしょう。
 

■教えてくれた人■

天野 隆(あまの・たかし)さん


天野 隆(あまの・たかし)さん
税理士法人レガシィ代表社員税理士。株式会社レガシィ代表取締役。公認会計士、税理士、宅地建物取引士、CFP。累計相続案件実績日本一。専門ノウハウと対応の良さで紹介者から絶大な信用を得ている。『この1冊で安心! おひとりさまの終活まるわかり読本 身の回りの整理から葬儀・相続の準備まで』(PHP研究所刊)など著書多数。また、2020年8月より、リモート・非接触で相続の悩みを相談できる業界初のWEBサービス「相続のせんせい」を開始。サイト上で、相続税額を計算できたり、相続でモメる可能性を診断できるチェックを受けられます。https://souzoku-no-sensei.legacy.ne.jp/portal 

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樋口由夏

出版社勤務などを経て2008年よりフリーランスライター、エディターとして独立。単行本の編集・構成・執筆などを中心に、雑誌、Webにて主に健康・暮らし・子育て・教育・スピリチュアル関連の編集・ライターとして活動中。3児の母。

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