2020年、増税になる?減税になる?

これから税負担は増える?2020年税金ニュース

2020/01/14

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毎年、税制度改正のために発表される「税制改正大綱」。改正の内容を知ることで、私たちの家計と生活にどう影響するのかが、あらかじめわかるんです。2019年12月に発表された内容を見てみましょう。

2020年、増税になる?減税になる?

2020年度 税制改正大綱では何が変わる?

2020年はどのように税金が変わる?

2020年はどのように税金が変わるのか、2019年12月12日に与党が発表した「2020年度税制改正大綱(税金の見直し案)」を中心に、お話ししていきたいと思います。

税制改正大綱は、税金の制度を変えるためにまとめた文書のこと。これを踏まえて、法律が整備されていきます。大綱が国会に提出され法案が成立したら、2020年の4月から徐々に新しい制度が実施されます。

ところで、なぜ毎年、税制が変わるのでしょうか?

理由の1つは、経済や社会情勢など時代に合う税制にするため。もう一つは、国の予算の調整のためです。

例えば、2020年はオリンピック・パラリンピックが開催されます。国や地方自治体は、その準備・運営のため巨額の支出(歳出)が必要です。そのためには、「いくら国債を発行すればいいのか」「いくら税収を確保するか」など考えて、それに対応して税制を改正します。

毎年、国の予算案を決める時期に合わせて、税制も変えていくのです。

その改正の内容を知ることで、私たちの生活(特に家計)にどう影響するのかが、あらかじめわかります。お金を増やすために、お得な情報が得られるかもしれませんし、増税になったときは、将来の資金不足に備えて今から貯蓄をするなどの対策が取れるでしょう。

さて、2020年度の改正の狙いは、経済成長の促進や超高齢化社会への対応、格差是正などが中心でした。いっそう時代に沿ったものとなりました。

身近な税制改正

では、実際に私たちに影響がある改正には、どのようなものがあるのでしょうか。 

(1)少額投資非課税制度(NISA)の拡充等

NISA

NISAは、資金運用の促進を目的に2014年に始まりました。通常、株式等へ投資した場合、その配当金や売却益には税金がかかります。しかし、NISA口座を利用すると投資する際の限度額さえ守れば、いくら利益が出ても非課税になります。

現在のNISAでは、毎年120万円の投資枠があります。今回の改正では、現行NISAは投資可能期間を2023年終了予定だったものを5年間延長し2028年までにするとともに、それ以降は新NISAが創設されます。

新NISAは2段階方式とし、まず投資信託に限定した「特定累積投資勘定(仮称)」(年20万円)へ投資し、それから上場株式などへ投資できる「特定非課税管理勘定(仮称)」(年102万円)を利用できる制度となります。

株式への投資は株価の暴落など不安要素が多いため、主婦層や若者など株の知識がない人は進んで投資しなかったと思います。

しかし、新NISAでは、最初に投資信託という低リスク商品に投資することになりますから、従前より安心して投資できる仕組みになりそうです。これにより、投資になじみのなかった人の利用が増えるかもしれません。

また、「つみたてNISA」は、投資期間が2042年まで5年間延長されました。なお、「つみたてNISA」は一定基準の投資信託を対象としたもので、投資初心者の方でも始めやすいような安心感がある制度内容のため、内容は変更されず期間だけの延長となりました。
 

(2)確定拠出年金制度(DC)の見直し

確定拠出年金制度

私的年金ともいわれ、老後の資金形成を目的としている確定拠出型年金(DC)。人生100年時代に、公的年金だけでなく自分で老後の資金をつくるようにと整えられてきた制度です。掛け金は全額、所得から差し引ける(控除)と同時に、その運用益も非課税となります。

DCには個人型(iDeCo)と企業型があり、どちらも自分で運用先を決めます。つまり、自己責任となります。その運用方法によっては将来貰える年金が変わりますので、注意が必要です。

原則、加入期間はiDeCo、企業型DCともに60歳まで。引き出せるの(受給)は60歳から70歳までの間で選択できました。それが、改正により加入期間はiDeCoは65歳、企業型DCは70歳まで延長され、受給期間は70歳以降も選択できるようになりました。

もし、60歳を過ぎて十分な老後生活を蓄えていなかった場合には、DCに加入することにより老後資金を調達しやすくなります。また、企業型DC加入者でもiDeCoに加入しやすくなりました。
 

(3)未婚のひとり親に対する所得控除等

未婚のひとり親に対する所得控除等

現行の「寡婦(寡夫)控除」は、配偶者と死別・離婚した者のみ対象でしたが、婚姻歴の有無による不公平をなくすため、未婚のひとり親も適用できるようにしました。

年間所得が500万円以下の未婚のひとり親は、所得から35万円を控除できます(事実婚を除く)。また、男女格差も是正しました。現行は、寡夫控除(男性)は、年間所得500万円以下という所得制限がありましたが、改正により寡婦控除にも同様の制限を設けました。

そして、子どもがいる寡夫の控除額は27万円から、寡婦と同様に35万円となります。ただし、寡婦控除は子ども以外の扶養親族(配偶者のご両親など)がいる場合や扶養親族がいなくても死別の場合には、適用できるのに対し、寡夫控除は適用できないという不公平は改善されていません。

社会のことを知るために知っておきたい改正内容

第5世代移動通信システム

他にも、イノベーションを促進する観点から、会社が5G(第5世代移動通信システム)へ設備投資した場合には、法人税を軽減する制度などが創設されました。

また、地方創生のために、2016年4月にスタートした「企業版ふるさと納税」を5年間延長し、活用を促すため法人税の軽減幅を6割から9割に増やしました。

さらに、改正によって高所得者が利用する節税策となっていた「国外中古建物」による損益通算ができなくなることに。これらの改正は、みなさんに直接的には関係がないことが多いと思います。しかし、これらの改正は新聞・ニュースにも取り上げられていますので、社会情勢を知る上で知っていて損はないでしょう。

2020年から適用される税制改正

税制改正について

最後は、過去に決定された税制改正のうち、2020年から適用される制度を紹介します。

(1) 給与所得控除の見直し

給与所得控除とは、会社員の経費にあたり、年収から控除できます。年収によって、一定の算式で求めますが、この控除額が一律10万円引き下げられます。また、上限も年収1000万円超の人が220万円だったものが、「年収850万円以上の人が195万円」に引き下がります。
 
給与所得控除の引下げにより、年収850万円超の会社員などの高所得者は、増税となります。しかし、さすがに年収850万円超も介護・子育て世帯にまで、増税を求めるのは酷なため、負担が増えないように一定の調整が加えられます。


(2)公的年金等控除の見直し

年金から差し引かれる公的年金等控除額も一律10万円が引き下げられました。また、上限も設けられ、収入金額が1000万円を超える場合には、控除額が195.5万円となりました。

つまり、収入が1000万円を超える年金受給者は、控除額の引下げにより課税の対象金額が増えるため、増税となり年金の手取り金額は減ってしまいます。


(3)基礎控除の見直し
給与所得控除や公的年金等控除の一律10万円引き下げを受けて、これらを調整するために、基礎控除額は10万円引き上げています。ただし、2400万円超の高所得者は、年収が上がるに従って基礎控除額が徐々に減少します(48万円→32万円→16万円)。

また、給与所得と公的年金等の両方がある場合には、一定の調整がされます。

つまり、増税になるのは、

  • 年収850万円を超える会社員や公務員(ただし、介護・子育て世帯を除く)
  • 1000万円超の収入がある年金受給者

といった方たちです。

年収850万円以下の会社員の場合は、給与所得控除が10万円引き下げられますが、基礎控除額が10万円引き上がるため、結果、改正前と変わりません。年金受給者も、収入が1000万円以下の場合は、税負担は変わりません。そしてそれ以外の、例えばフリーランスなどの自営業者で所得金額が2400万円以下の場合には、基礎控除の引き上げによって減税となります。

今回は、税制改正大綱の一部しか掲載できませんでしたが、みなさんの生活に役立てば幸いです。


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坊山 由美

ぼうやま・ゆみ 税理士。税理士法人大和パートナーズ(〒102-0073 東京都千代田区九段北1-3-1 日宝九段下ビル9階)所属。日頃は、相続、遺言など(資産税)に関する業務を中心に行っています。コラムでは、生活に関係する税金をご紹介していきたいと思います。趣味は、カフェ巡りやホットヨガ。

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