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家族の手伝いをするために52歳から英語学習を始めたharumatiさん。年齢を重ねても、その学習意欲は衰えていません。何かを学び続けるためのヒントがつづられています。
退職後の暮らしへの切り替え
2011年3月31日、39年間続けてきた仕事を定年退職しました。天職とも思えるほどに、やりがいと楽しさを感じながらの39年間でした。もちろん、反省点や失敗談にはこと欠かないけれど、誰にも媚びず、誰に忖度することもなく、自分らしくやりきれたという満足感いっぱいの退職でした。
それほどに充実した現役時代でしたが、退職したらしたで、やるべきことや、やりたいことは山積しており、退職してから約10年たった今日まで、退屈した日は1日もありません。
在職中は事務の人に任せっきりだったお金のこと……。これからは、自分で確定申告をしなければなりません。退職金や職場を通して入っていた保険や積み立て年金、今後の年金収入を把握し、整理するのにたっぷり1年はかかりました。随分お金のことに詳しくなりました。
働いている間は、行き届かなかった部屋の整理整頓、掃除。とにかく時短でとしか考えていなかった食事の支度。丁寧な生活に切り替えることで、家事の楽しさに目覚めました。
こんな風に、私のリタイア生活は始まったのですが、ただ一つ想定外だったのは、毎月の給料や年2回のボーナスが入ってこない生活に、大きく不安感をあおられたことでした。
入ってくるお金がない以上、出ていくお金を減らすしかありません。NOVAをやめるのに併せて、NOVA帰りの整体院通いもやめました。長年苦しんできた頑固な肩こりを自力で治そうと、毎日ラジオ体操をすることにしました。
英会話は、続けなければすぐに後退してしまうので、隣の市の公的な施設で、自主開催されていた英会話クラブに入れてもらうことにしました。週に1回、1時間半、10分毎にローテーションして、違う相手と自由に会話をするという形式です。かかる費用は、1回あたりの会場費200円のみです。
英会話クラブで受けた刺激と、英検への初チャレンジ
仲間に入れてもらった英会話クラブは、メンバー制ではなく、行けるときにその日の会場費だけを払って参加するというものでした。長い海外赴任で、高い語学力を身につけている人、海外旅行を自分で計画し、メールや電話で海外の交通機関や宿泊施設の予約を取り、どこへでも出掛けていく行動的な人、ご主人様と共に、毎年お気に入りの国で温かいお正月を迎えている人、どの方の経験も、私にとっては初めて触れるものばかりでした。そして、英会話教室とは違って、英語での会話を楽しむことそのものが目的といった感じで、和気あいあいとした雰囲気です。
さらにそのクラブの何人かのメンバーが、新しく隔週1回のリーディングクラブを立ち上げてくれたので、私は、それにも参加するようになりました。
退職後1年ほどたった62歳の頃のことでした。ここでは、参加者が順番に、TED (さまざまな分野のエキスパートによるプレゼンテーション)や、政治的な演説(例えば、オバマ大統領、マララ・ユスフザイさん)、オーヘンリーの小説などから題材を選び、1週間前までにメンバーにメール添付で送ります。それを基に各自予習をしてから当日に臨み、意見交流をしながら、正しい読みに近づけていきます。
長い文章なので、どこで区切って読めばいいのかさえもわからないレベルの私でしたが、参加しているうちに、主語と述語の関係、関係代名詞や挿入句がどこに係っているのかなどがどんどん見えるようになってきました。ここでの経験では、どんな文法書を読むよりも文法がよくわかり、英語の勉強の仕方もよくわかりました。
最初に参加させてもらった、フリーカンバセーションのクラブでふれあった人たちから学んだ、英語会話を楽しみ、活かす姿勢と、このリーディングクラブで学んだ文法の力を活かして、いつの間にか、ボランティアで、海外から夫の田舎へ訪れた人たちの通訳をしたり、英訳のリーフレットを作ったりも出来るようになっていました。
メンバーのほとんどが、若い頃に英検を受けた経験があるとのこと。ならば私もと、運転免許以外、資格試験とは無縁の暮らしをしてきた私でしたが、2週間で1冊の問題集をやりきり、若い人ばかりの大学の教室で、63歳にして英検に初チャレンジ、2級に合格したのでした。
掛け替えのない人たちとの出会い
私にとって、これらの英語クラブへの参加は、あくまでも英語力を高めるのが目的でした。古くからの友達との交流を何よりも大切にしている私に、60歳を過ぎてから、新しい友達ができるとは期待さえしていなかったのです。
けれども、これらの活動を続けるうちに、何人かの人とクラブ後のランチを共にするようになり、やがては、互いの家を行き来して、英語を離れて、長時間のおしゃべりを楽しむ関係になっていきました。彼女たちは、2016年11月3日、私が、脳出血に倒れ、英語はおろか、日本語さえも一度は失っていたにもかかわらず、それまでと変わらない付き合いを続け、不自由な私に寄り添いながら、少人数での英会話クラブを続けてもくれたのでした。
脳出血発症から4年が過ぎました。ようやく、みんなと同じように英語を話せるようになりたいという気持ちが戻ってきました。
そして、「レベルが違うんじゃないの」といわれながらも、月に1時間、ネイティブスピーカーの先生から初級レベルのレッスンを受けながら、掛け替えのない人たちと、ゆっくり、マイペースで、英会話学習を、今も続けている私です。
Dreaming that one day I will be able to speak English more fluently than before I got sick.
(いつの日か、病前よりもっと流暢に英語を話せるようになることを夢見ながら)
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