和ろうそく店と「八ツ三館」、諏訪湖畔を訪ねる

『あゝ野麦峠』の真相を追って、飛騨古川から岡谷へ

公開日:2024.02.04

テレビ番組で見た「和ろうそく」が欲しくて、飛騨古川へ。1泊の予定が、旅館の女将の一言で、「あゝ野麦峠~あるある製糸工女哀史」の真相が気になって、製糸工場があった諏訪湖畔の岡谷へ足を延ばすことになりました。

「あゝ野麦峠」の真相を追って、飛騨古川から岡谷へ
飛騨古川「瀬戸川と白壁土蔵街」

『よみがえる新日本紀行 飛騨古川・一之町』(NHK)

高山も白川郷もインバウンドを中心にものすごい人、人、人!

うってかわって飛騨古川はひっそり静か。戦国時代は城下町、後に飛騨の小京都として栄えた町は、穏やかに寂れて旅情を誘います。

「よみがえる新日本紀行~飛騨古川 一之町~」(NHK)

「よみがえる新日本紀行~飛騨古川 一之町~」(NHK)

「三嶋和ろうそく店」は創業240年超。『よみがえる新日本紀行』(NHK)で紹介されています。

昭和55年の放送時に33歳だった7代目は、今も現役。真顔すら笑顔に見えるほど柔和なお顔になられていました。

テレビを見て来たと伝えると、作業の手を止めて、収録の思い出を語り、今も再放送を見るたび先代を思い出して涙が出るとポツリ(もちろんその表情も笑顔に見えてしまうんです)。

番組は、伝統行事「三寺まいり」に奉納する巨大ろうそくを先代と当主が作る工程を丁寧に追っています。

「よみがえる新日本紀行~飛騨古川 一之町~」(NHK)

三寺まいりは、縁結びを願って町内の3つのお寺を巡ります。そのひとつが「本光寺」。境内には野麦峠文学碑が立っていました。

「よみがえる新日本紀行~飛騨古川 一之町~」(NHK)

野麦峠といえば、『あゝ野麦峠』!

野麦峠といえば、「あゝ野麦峠」!
『あゝ野麦峠』 山本茂実

『あゝ野麦峠』は、雪深い野麦峠を越えて、飛騨から信濃の製糸工場に働きに行った工女さんの聞き取りを中心にしたノンフィクション。

映画では大竹しのぶさんが「あぁ飛騨が見える」と漏らして息絶えるシーンで終わります(多分^^;)。映画を見たせいなのか、製糸工場は長時間労働やイジメ、セクハラが横行するひどいところだったと、これまで疑うことはありませんでした。

ところが、旅館「八ツ三館」の女将によると、そうでもなかったようなんです……。

『あゝ野麦峠』に登場する「八ツ三館」

「あゝ野麦峠」に登場する「八ツ三館」

「八ツ三館」は、安政年間の創業。日本は開国し、外貨を稼ぐために生糸生産が盛んになっていく頃に重なります。「八ツ三館」は、工女募集の拠点で、飛騨各地や富山から集まった工女さんを長野の松本や岡谷の製糸工場に送り出しました。

女将によると、「若い女の子は賑やかで(山越えの)3泊4日は遠足みたいに楽しかったとか。向こうでお裁縫や国語も教わったみたいですよ」。

製糸会社はブラックじゃなかった? 工女さんは楽しかった?

「あゝ野麦峠」に登場する「八ツ三館」

「八ツ三館」は、地元にも愛される料理旅館。冬の名物は、大根をぶりで巻いた独特のフォルムの「ぶり大根」。露天風呂には、かなりおいしい地酒がサーバーに(=飲み放題)。

ちょっと寄り道、新穂高ロープウェイ

工女さんのホントのとこが気になり、予定を変更して岡谷に向かうことに。

途中、「新穂高ロープウェイ」で標高2100mの白銀の世界に寄り道。

ちょっと寄り道、新穂高ロープウェイ

ロープウェイは往復3300円もするので、近くを通ることがあっても「もっと天気のいい日にしよう」と先延ばしにしていました。

今日がまさに「もっと天気のいい日」!

ちょっと寄り道、新穂高ロープウェイ

西穂高山頂がすぐそこに迫り、穂高連峰の稜線を辿れば槍ヶ岳、堂々とした笠ヶ岳、遠くに白山が見えて、焼岳はすぐ近くに!

飛騨から信濃へ、岡谷蚕糸博物館へ

飛騨から信濃へ、岡谷蚕糸博物館へ

岡谷蚕糸博物館では、製糸業の発展の歴史とともに、工女さんの仕事や生活について紹介されています。

それによると、裁縫や国語の勉強だけでなく、文化祭や体育祭もあり、休日は町に繰り出して映画や芝居を楽しんだとのこと。さらに一日三食白米がおかわり自由、工女さんのための病院も作られた等々。ブラックとちゃうやん!

『あゝ野麦峠』は、明治40年頃の工女さんの話。その頃は14、15時間の長時間労働があったのは事実で、大正時代になって労働環境が改善したそうで、どうやら「楽しかった」のはそれ以降のことみたい。

納得! これにて一件落着!

博物館に併設の製糸工場は、ムッとした湿度と生臭い匂いが充満していました。繭から引き出される生糸一本は細すぎて老眼には見えず、見えないから撚り合わせて均等な1本にするのも当然無理。というわけで、糸ひきは10代の若い女子に向いていたそうです。

帰宅して、和ろうそくに火を灯してみました。炎はタテに伸び縮みします。ろうは垂れることなく、煤も出ません。番組の中で「風のない場所でも焚火のようにゆらぎ、心を癒やす」と当主。1本180円~。

飛騨から信濃へ、岡谷蚕糸博物館へ

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みろく

信州との2拠点居住を始めて5年。住み慣れ(すぎた?)大阪を離れることで、関西の魅力を再発見!京都や奈良、神戸への遠足を楽しみつつ、全国を旅しています。元旅行会社勤務の経験を活かして、お得な切符やおもてなしのよい宿泊施設などを紹介していきたいと思います。

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