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- エストニア共和国の首都タリンにて
海外旅行でバルト三国の1つであるエストニア共和国を訪れた翠さん。ヨーロッパの街並みの息吹がかおる、旅のレポートをお届けします。
セーターの壁
城門を入り2本目の道を右に曲がる。
少し進むと煉瓦づくりの城壁にうがたれたドームのような部分に毛糸製品を並べた店が並ぶ。
ハンドメイドの高級品から、たぶん機械づくりの中国製品も一緒に並んでいるのでしょうか。手袋、マフラー、ネックウォーマー、リストウォーマー、セーターなどきれいに並べられて民族特有の柄や模様が魅力的です。
それぞれのブースに、スカーフをかぶったふくよかな体形の女性が立っています。
道を通る観光客すべてに声をかける売り子の女性もいれば、買うも買わぬもどうでもいいですけど……という表情のけだるそうな女性もいるのが印象的です。
夕方まで店を開いて、どのくらいの売り上げがあるのか……、婦人たちの呼び声にかかっているのでしょう。働き者の女性たちなのだろう、家族の一員として収入をしっかり支えているのだろう、と想像しながらゆっくり歩いてみます。
この国は、失業率も4%、大学就学率は95%と、意識の高い経済発展を見事に実現している国なのです。
セーターの壁でたくましい国の一部を垣間見た気がします。
ここはエストニアのタリンの街。
カタリーナの小道
この近くには「カタリーナの小道」という、趣のある細い路地があります。
まだ肌寒い四月の初め、20時過ぎても真っ暗にならない薄明りの夕方のような中を歩いてみます。21時を過ぎてやっと夜らしくなってきます。
そのころには街の広場あたりに差し掛かり、いかにもヨーロッパの街らしくカフェやレストランの前でテーブルや椅子が並べられて屋外用のストーブもたかれています。ひざ掛けをして暖を取りながらの賑やかな食事風景が夜の広場を彩ります。
この夜は、勇気を出して地下にあるバーに入ってみました。
狭い階段を下りていくと小さな店内が見渡せます。その時、急に男性に声をかけられてびっくり! 彼は、フィンランドから来ているミスターアルトと名乗り、日本人が珍しいからといろいろ話をし、握手を交わし、ハグをして、「私たちはもう友人だ」と言われ……エストニアで友人ができちゃいました。
カウンターの中では、パツンパツンに体の線があらわなワンピースを着た女性が、ニヤニヤしながら低音で流れる音楽に体を揺らし私たちを見ています。何を注文してよいかわからないので地元のビールを味わうことにしました。
少し緊張が取れてくると、やっと店内を見渡すことができ、ビールの味も楽しめました。
イタリアのバールや、ロンドンのパブ経験はあるものの海外で地下にあるバーに入ったのは初体験。私にとっては初めてのおつかい状態でドキドキ体験でした。
中世風の食事
広場には市庁舎があり、現在は中世風のレストランになっています。店員は中世風の衣装を着ていて、メニューもいかにも中世の雰囲気が楽しめます。
店内の明りはテーブルに置かれたロウソクの光だけ。目が慣れてくるまで不思議な空間です。
唯一の明り取りの窓辺にはこの時期、イースターの芽吹きを喜ぶ猫柳の枝が飾ってあります。
メニューは何種類かのパイ、スープの中から選びます。私はミートパイと鹿のスープをチョイス。ピクルスは一本サービスというので取りに行くと大きな甕に入っていて、太いこん棒が添えて置かれ、その先には釘が付いています。その釘で甕のピクルスを刺して一本取出して、手に持ってかぶりつくという……何ともワイルドな中世風食事光景です。
大きなボールに入った鹿のスープにはスプーンが付かず、やはり中世の庶民風に両手に皿を持ってスープをいただきます。お値段は、このセットで5ユーロ。軽いお昼の食事にはお国柄を楽しめてよかったです。
トラムでお出かけ
お昼の後は、ヴィル門近くから出ているトラムに乗車。乗り方を聞いたところ、キオスクでカードを買うのが割安だがデポジットで3ユーロかかりカードを返すと返金してくれるシステム。1乗車ごとにに2ユーロ支払う方法もあるということで、後からカードを返しに行く手間も省けるので都度支払いを選んでトラムに乗車します。
ガドリオル宮殿方面の1番か3番のトラムに乗ります。トラムに乗ると運転席の横に小さいポケットがあり、2ユーロを投入し運転手がお金を受けとる、とチケットを発券して戻してくれます。
カドリオル宮殿はロシア時代にピョートル大帝がエカテリーナのために作った離宮ということで、サンクトペテルブルグにある宮殿と比べたら小さいものです。現在は美術館として活用・維持されています。
入館券を買う際に言ってみました「シニアチケット、プリーズ」……大成功、割引料金で入館できます。コート、バッグ類は1ユーロを入れてロッカーに預けますが、後からコインは戻ります。
宮殿内部は美しいですよ、さらに美術品も見ごたえがあります。
2階に上がってみると、なんと私の大好きな雰囲気の絵を見つけました。きっとそうだろうなぁ、と思いながらカードを読むと、やはりレーピンの絵でした。ロシアのレーピンは庶民の生活やコサックなど人々に密着した絵画の名手で『ボルガの船曳』などの名画があり大好きな作者です。
ここエストニアでレーピンの絵に出会えるとは至福の時間を過ごせました。係の方に尋ねると、ここには一作品しか無いとのことでした。
美術館を出ると右手奥に青く光る景色が見え、きっとバルト海だろうと見当をつけて歩いてみます。
近くまで行ってみると、海岸が工事中のため波打ち際には出られなかったものの、バルト海を間近に見ることができます。バルト海よ、こんにちは。
パイプオルガンコンサート
夕方、大聖堂でパイプオルガンコンサートがあるということで出かけてみます。
ここでも恐れずにとりあえず一言、「シニアチケット、プリーズ」です。やはり割引料金6ユーロで入場できます。お決まりの、コート、バッグをロッカーに預けて会堂内に座ります。
素敵なパイプオルガンの音色、繊細なメロディーに楽曲を知らないながらも堪能しました。
コンサートの後はまだ明るい夜の街をそぞろ歩き。かわいいお店やレトロなお店、道端で売っているイラストなどを見て歩き回ります。
知らない街の中で夜の風を感じながらエストニア・タリンを楽しみます。
こちらは、中世風の雑貨店内部。
4月、まだ寒いタリンの街、何となくという興味本位で出かけてきましたが、何かとても大切なものを得た気がします。
タリンの街、ありがとう。
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