特別待遇かしら、レストランで奥の部屋に通されました

ドイツのホテルで受けた接遇からあれこれ思いを巡らす

公開日:2022.03.06

コロナ禍直前に独りでドイツツアーに参加したときの話です。ある朝、レストランに行くとそこに日本人の姿はなく、目に入るのは欧米系の方ばかりでした。私に気づいたツアー参加者が「我々の席はあっちよ」と教えてくれたので、その場所に行ってみたところ…。

新しい食器で召し上がれ?

メインフロアの裏側にあるその部屋は、長テーブルが隙間なくぎっちり並べられた、オシャレ感まるでナシの空間でした。椅子も、一度座ってしまうとビュッフェコーナーへ移動するのが大変なほど両隣と密接しています。

これまでのホテルは、席に座るとサーブ担当者が「Good Morning♪」と笑顔でやってきて、その場でシルバーポットからコーヒーを注いでくれました。が、ここは、コーヒーもカップも、カトラリーもナプキンも壁面の長テーブルの上に置いてあります。どうやら自分で取りに行くようです。

しかもスタッフはなぜか皆さん揃いも揃って不愛想なうえ、頻繁にやってきては、まだ食べ物が少し載っている皿であっても本人の了承を得ずどんどん下げていきます。「新しい食器で作りたてを食べてね」ということでしょうか。でも席周りがキツキツなので「おかわり」するのも苦労しそう……。

新しい食器で召し上がれ?

特別扱いされちゃった?

格安ツアーではないので、このホテルは三つ星以上のはずです。事実「メインフロア」はゆったりした間隔で席が配置され、卓上には花も飾られ、サーブするスタッフもにこやか。

早めに来ていたツアー参加者いわく、入口に着いたら「アジア人はあっち」と奥に行くよう促されたとのこと。たしかにその部屋にいたのは、私たちと、アジアのA国とB国のツアー利用者だけでした。

「同じ人種同士で、同じツアー利用者同士で、落ち着いた奥の部屋で食事を楽しんでほしいとの配慮かも」「欧米人の団体の時もきっと同様の対応なのかも」と前向きに捉えようとしました……。

特別扱いされちゃった?
※画像はあくまでもイメージです

危険な発言と同調

食後、たまりかねたように同ツアー参加者たちが「きっとA国の人たちのせいでアジア人はうるさいと思われて、こんな差別を受けるのよね」「私たちはマナーを守って食事しているのに、A国の人と同じと思われてイヤだわ」と発言し、その場にいた数人が同調しました。

実はA国の方々、ビュッフェで取ってきたばかりの食事を食べながら歩いていたり、お仲間同士での会話が室内に響き渡ったりしていて、かなり存在感があったのです。

あまりの騒々しさに私も「これじゃ落ち着いて食事を楽しめない。もしかして過去にそういう苦情が欧米人から出て、このホテルは“アジア人別室方式”を採った?」と心中で思ったほどでした。だから彼女たちの発言の背景を理解できなくはありませんでした。

危険な発言と同調
清々しい気分で旅したいものです

誰の心にも潜んでいるのかも……

でもこのような部屋割りになった本当の理由は不明ですし、何よりも人として、「A国人のせい」や「一緒にされたらイヤ」という発言は許されないこと……。自分たちはホテルから差別されたと嘆くけれど、先の発言や同調もまた、A国人に対する差別にほかならないと思うのです。

それに、大声でしゃべったりビュッフェで割込んだりのマナー違反は、日本人にも見られます。そう、いろいろな人がいるのです。非難されたA国にもマナーを守る人はたくさんいます。守らない人が目立ってしまうだけのことなのですよね。

この一連の出来事で、自分も含めて誰の心にも差別の芽が潜んでいて、何かをきっかけにそれが表面に出てくるのかもしれない、と気づかされました。怖いですね。自省するとともに、改めて「偏見を持たない」「無自覚に差別的行為を行わない」ということを肝に銘じたのでした。

 

■もっと知りたい■

伊東

子育て終了後の40代後半から会社勤めを再開。趣味は海外旅行、クラシック音楽。50代でクイズ番組に出たことでクイズにも目覚め、最近はオンラインにて仲間とクイズを堪能しています。ハルトモ倶楽部を通じて、クイズなどの楽しさを広めていけたらと思います。

マイページに保存

\ この記事をみんなに伝えよう /

注目企画